序章 封神システムと少年の死
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夜空には血で染まったような真紅の月が浮かび、牢獄の天井にある小窓からは赤い月光が差し込んでいる。仄暗い牢獄は一面真っ赤に照らされ、不気味でうらぶれた雰囲気に満ちていた。
牢獄には年の頃十五、六の少年が太い鉄鎖で十字架に縛られている。体は傷で覆われ、禍々しい傷口はただれ始めており、繭のように凝り固まった血痕は、体の表面に押された焼き印のようだった。彼はどれほどの責め苦を受け続けてきたのだろう。
長い鞭を手にした二人の黒衣の衛兵が、再び鞭を振った。鞭が振り下ろされる刹那、少年はにわかに顔を上げた。両目は真っ赤に血走り、口からは耳をつんざくような慟哭が響きわたる。涙と汗は渾然一体となって流れ、中途半端に延びた髪は汗で湿っている。両目は前髪に遮られ、痩せ衰えた体は痛みに震え続けていた。
パシッ!パシッ!パシッ!
鞭が何度も振り下ろされた。
少年は拳を握り締め、歯を食いしばり、もうこれ以上もがくまい、叫ぶまいと思った。彼は絶望の中に些かの疑問、あるいは諦めきれない悔しさを抱えていたのかもしれない。
長椅子に座っていた男が立ち上がると、鞭を持った二人の衛兵は手の動きを止めた。
黒いローブを纏い、長く伸ばした銀髪で顔の半分が覆われていたその男は、目の前で行われる一部始終を見ていた。三日三晩見続け、もうこれ以上は我慢できなかったのだ。
黒いローブの男は一歩ずつ少年に歩み寄った。少年の目の前に立つと、彼はわずかに口を開いた。
「伝説の創造神の封神システムを知っているな?」
少年はもう目を開くこともままならず、ひび割れた唇を舐めながら、弱々しくはあるが怯まずに言った。
「何を言ってるのかさっぱり分かりません…」
黒いローブの男は明らかに痺れを切らし、この頑固な少年にこれ以上時間を浪費する気にはなれなかった。ゆっくりと右手を挙げ、鷹の爪のように細く青白い五本の指を空中で止めたその時、男は首をもたげ、その顔を初めて露わにした。比類無き美しさを湛えた顔も、今は凶暴でしかなかった。
「答えはお前のこの虫けらみたいにボロボロな体にある…」
彼が腕を振り下ろすと、少年が声を上げる間もなく、全てが終わりを迎えた。
夜空に稲妻が走り、仄暗い牢獄を明るく照らすと、血に染まった十字架に縛り付けられた少年の頭は一方に傾いた。固く閉じられた両目が再び開くことはもうないだろう。




