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【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第二章 DE OPPRESSO LIBER
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第46話

鳩尾に入りかけたソフィアの膝を肘でそらし、腹筋を硬直させることで致命打を避けた。


ただの膝蹴りではない。ムエタイの膝蹴りは、立ち技格闘技の打撃では最強の破壊力といわれている。


こちらもそれなりに鍛えた体のため、一撃で内臓を損傷することはない。しかし、鳩尾やレバーなどの急所に入った場合、最悪の場合は死に直結する可能性があった。


それほどグリーンベレーの体術とは洗練されている。


試合などを行う格闘技とは異なり、いかに相手を迅速に無力化するかを追求しているだけに厄介なのだ。


ソフィアは想定通り俺の首を押さえにかかった。


ムエタイでティーカオと呼ばれる首膝である。


首相撲の体勢から鳩尾やレバー、もしくは顔面を膝蹴りする技だ。


地味だが破壊力は抜群で、顔面にまともにくらえば頬や鼻の骨折はまぬがれない。そこから柔術による絞め技や間接を狙うのが常套手段である。


俺は頭部をソフィアの脇腹横に突き出して下半身を落とし、その反動を利用して後方へと投げた。


ロシアが誇る格闘技、サンボの飛行機投げ(バドーク)に似た投げ技だ。


海兵隊のMCMAPは世界の様々な格闘技を取り入れている。ロシアの軍隊格闘技であるコマンドサンボに近い動きも修得しているのである。


それほど広くない箱馬車内で、ソフィアは足を内張りにぶつけながら倒れ込んだ。


一連の流れからソフィアの片腕をとり関節を決めようとしたが、片足を素早く上げて踵を顎に見舞ってこようとした。


肘でそれを弾くが体勢を崩されてしまい、その瞬間に腹部へとタックルされてしまう。


反対側の内張りに体をぶつけた俺はソフィアの首を腕でロックして体を捻り、そのまま脳天を床に打ちつけた。プロレス技でいうDDTのようなものだ。


床が固い石材などならこれで決着がついたのだろうが、箱馬車の床材は木板である。ダメージを負いながらも、ソフィアはすぐに上体をあげて頭突きを入れてきた。


片腕を使って防御し、もう片方の手で彼女の頭を引き寄せて逆に頭突きを片目に入れる。


至近距離からでブロックすらできなかったソフィアは、視界を半分塞がれて死角と隙を作ることとなった。


すかさず、がぶり状態からのヘッドロックで頸動脈を締めあげる。頭突きで無防備となった状態を狙ったため、きれいに決まった。


十秒程度が経過した頃にソフィアの体が弛緩する。


脳への血流が阻害され落ちたのである。


念の為に反撃を警戒しながらゆっくりと体を離し、再びソフィアの両腕両足を拘束した。


今度はしっかりと親指同士も縛ったのは言うまでもないだろう。






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