表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第二章 DE OPPRESSO LIBER
83/197

第33話

崖の下に落ちた男たちの生死を確認するか迷ったが、今は無駄な時間を割きたくなかった。


洞窟内の煙がある程度おさまったのを見て、元来た道を足早に戻ることにする。ここを出るまでに他の敵が潜んでいる可能性もあるため、警戒を怠らずに進む。


ディレクとミオは終始無言で後ろをついてきていた。


「ふたりとも衛生兵だったのか?」


「ええ、そうよ。」


「ということは、別の隊に属していた?」


グリーンベレーには優秀な衛生兵がいるが、小隊ごとの人員は特別多いわけではない。


戦闘や救出などの任務も多く、隊員たちの得意分野は各小隊ごとにバランスよく配置されていたはすだ。


「私たちは身内同士だから、衛生兵だとかに関わらずもともとが別の隊に配属されることになったのよ。」


「身内?」


「親が兄弟同士で、共に陸軍士官だった。」


警察や軍人などは家族が同じ職に就く場合が多い。


これは国家の防衛や守護に関わる職務のため、信頼できる者として採用される傾向が強いといわれている。逆にいえば縁故やツテ、コネによる入職ともいえ、古い悪しき慣習とも考えられるのだ。


また、近親者が同じ隊に配属された場合、共謀して不正などを働かないよう配属先を分けるといった配慮がされる。


「もとが従姉妹ということか。それで、こちらの世界に来たもうひとりはどういう奴なんだ?」


「トーマスね。彼はそれなりに優れた兵士だった。」


「兵士としては優秀でも、人としては最悪だったけどね。」


どうやら、こちらの世界でのソフィアがトーマスらしい。


「任地で現地の人を暴行するなど最低の奴よ。親が元老院の議員で問題になると揉み消していた。実力はあるから、生死を彷徨うような重傷を負った際にこちらに送り込まれることになったそうよ。親が上院仮議長に就任したから、存在そのものを消したかったのじゃないかしら。」


元老院とも呼ばれる上院の議長は、法で副大統領が兼任することが定められている。上院仮議長は副大統領の代理で議長を司る事実上の上院議長と考えればいい。


家族の醜聞による失脚などを恐れた父親が、権力にものをいわせて問題ばかり起こす息子を排除したということだろう。


「知略家だったりするのか?」


「親譲りで狡賢い奴よ。」


逃走したソフィアの次の行動が気になった。


このまま黙って行方を眩ませるような奴ではないだろう。


そう考えると、可能な限り足を早めることにした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ