第21話
約束の日に早朝から出かけ、目的地までは徒歩で移動した。
もう少し出発時間をずらせば定期便で行き交う馬車に乗ることもできたかもしれない。しかし、今はふたりの冒険者としての適性をはかり、初級のノウハウを伝授するタイミングである。
彼らが冒険者として独り立ちすれば、金と労力のバランスや費用対効果を見極めるのは自分たちでやればいい。ただ、今回の依頼内容では、余計な経費をかけることはただ働きに近い結果を生むとわかってくれればよかった。
彼らの事情は複雑だが、もともと標準的な家庭よりもはるかに裕福な暮らしをしてきたからか、それとも別の事情によるものかはわからない。ディルクもミアも依頼報酬の額を見て目を丸くしていたのだが、そのあたりに世間とのズレを感じたのである。
ふたりとも貴族としても商会の後継ぎとしても候補からは外れていた。だからこそ冒険者を志したと聞いている。
しかし、俺が見る限り彼らには真剣味が足りないように思えた。
いや、表面上の事情で考えると、本気度というよりも世の中を甘く見ている傾向が強いと言えるだろう。
それが見たままの通りなのか、他に画策していることがあるからかはわからない。
今のところ、俺はそこまで踏み込むべきではないと考えている。
もちろん、このまま何も起こらなければの話だが。
「これで二つ目の依頼も達成ですね。」
ミアが両手に採取品を持ちながらそう言った。
一つ目は一般的な薬草で、ポーションの材料に使われる物である。つい今しがた採取した二つ目は毒消しの原料だった。
どちらも駆け出しの冒険者の定番といえる採取品で物珍しものではない。
ふたりは商会の手伝いもしていたらしく、薬草などの見極めに関してはそれなりの知識を持っているようだ。
これで最低限の依頼はこなせることを立証できた。
「おめでとう。あとは討伐依頼をこなせれば俺の研修は修了だ。」
「なんだか拍子抜けですね。」
「うん、もっと命がけの依頼をこなすものだと思ってた。」
ディルクもミアも不満というよりは脱力したような表情をしていた。
一見すると緊張の糸が切れたというような冒険初心者らしい様相である。
「次は弱いといっても魔物を相手にするからな。万一ということもあるから気を引き締めた方がいい。」
俺はふたりにそう言いながらも、油断するとヤバいのは俺の方かもしれないと思っていた。
彼らから何かの雰囲気が漂っている訳ではない。
しかし、久しぶりに首筋がヒリヒリする感覚に見舞われていたのである。




