第10話
これは心理学による考察で、尋問や調査に関連する職務従事者はこういった知識を習得していることが多い。
特殊部隊員なら研修の一環で身につけていてもおかしくはないだろう。
特にやましいこともないため、俺は平然としていた。
微動だにしない俺の視線を見て、彼女がどう感じたかはわからない。
心理学を習得しているということは、その対処の仕方も身につけている場合があった。
例えば、諜報員などは敵対勢力に捕まり尋問されるケースがあるのだが、こういった対策ができていれば自白剤などの薬物が投与されるまでは時間稼ぎができる可能性がある。
「わかった。信じるわ。」
ソフィアはそう言って、ようやく俺の目から視線を逸らした。
「自分で言っておいてなんだが、よく信じてもらえたな。」
「あなたのこちらでの功績は知ってるわ。ギルド本部でもそれなりに有名だもの。」
「そうなのか?」
「ええ。この街に来る前のことしかわからないけれど、その実績は本部が把握している中でも目を見張るものがあったわ。」
これまでそういったフィードバックは特になかったため、あまり実感はわかなかった。
カレンからそれとなく聞いてはいたが、彼女は俺のモチベーションを上げるための気遣いとして話してくれているものだと思っていたのだ。
「それと···」
「それと?」
ソフィアが話すのを躊躇いながらも、何かを伝えようとしてきた。
「あなたのモチベーションは、娘さんが平和に暮らせることにあるのでしょう?」
「そうだ。」
「だったら、下手な愛国心を持ってる人よりも信頼できるわ。」
「日本人はそういった者が大半だからな。」
「私たちと違って愛国心がないってことよね?」
「そこまでは言わない。」
「日本人の大半に愛国心がないのは、かつての学生運動のような事件が起きないように政府がコントロールした結果なのでしょう?欧米ではそのあたりの感覚に違和感を持つ者が多いのよ。」
そこまでひどいものではないと思うが、国外から見た反応はそういったものもあるようだ。ただ、そういった暴論につきあう気はなかった。
「どうだろうな。他は知らないが、俺は国籍をふたつ持っていたから意識したことはない。」
「そう···そうね。ごめんなさい。」
「別にかまわない。政治や国の行く末に興味を持たない日本人は確かに少なくないからな。ただ、アメリカで暮らす選択肢があった俺が、どうこう言うべきじゃないと思うだけだ。」




