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【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第二章 DE OPPRESSO LIBER

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第1話

「お待たせしました。鶏皮とモモ肉の串焼き、それと煮豆に魚のスープです。」


生温いエールを飲みながら、届けられた料理を口に運ぶ。


日本でよく飲まれているビールはラガーといわれ、エールとは異なる酵母から作られている。


スッキリさとのどごしが醍醐味のラガービールはキンキンに冷えていると美味い。しかし、エールビールは香りや味わいを楽しむもののため、冷やし過ぎると良さが半減する。簡単にいえば、ワインのようにゆったりと楽しむものだったりするのだ。


元の世界ではビールの種類をビアスタイルと呼んでいた。その数は実に150を超えるそうだが、日本にいた頃はほとんどがラガービールで、エールを飲むためには専門店や通販、クラフトビールの品揃えに強いバーなどを利用する必要があった。まあ、最近ではコンビニにも一部のクラフトビールが置いてあるため、好みが合えば手軽に楽しめたりもするのだが。


こちらの世界では酒税法や禁酒法などが絡んでいないため、地域によっては家庭ごとにビールを製造しているほどだ。そのため、ビール好きの俺にとっては店ごとに異なる風味を楽しめるので夕食時の一杯が楽しみだったりする。


強いていえば、もう少し料理にバリエーションがあればなとは思うが、砂糖やスパイス類などが高価なため贅沢な悩みかもしれなかった。


鶏や豚、羊に加えて猪や鹿などのいわゆるジビエも主流で、生野菜もほとんど食されていない。


個人的に食べ物に好き嫌いはないのだが、クセが消しきれていない獣肉は毎日食べたいとは思わなかった。


軍隊にいた頃は携行食やそこらに落ちている物を食べることもいとわないような時間を過ごしていたものだが、日本での生活が長くなると食生活に偏重を来たしてしまうものだ。


とはいえ、こちらでの生活もそれなりに長くなりつつある。


体は若く、エネルギーを確保するために肉々しい食事を欲する本能のようなものと、元の世界で中年にさしかかって量よりも質を好むようになった贅沢な志向がたまに衝突したりするのだ。


その度に注文するものは大抵決まっていた。


鶏肉と豆類でタンパク質と脂質を摂取し、魚料理で独特の風味を取り込むことで脳を誤魔化すのである。


そういえば、こちらの世界に来てからあまり食べ物で糖質は取らなくなったように思う。


以前はご飯大好き人間で、麺類はもちろんのことお好み焼きにも白米が欲しくなるような感じだった。


しかし、こちらの世界に米はほとんどなく、パンも一般的にはスープなどでふやかさないと噛みきれないような黒パンばかりなのである。


そのような状況だとメインディッシュに副菜、そして酒があればそれでいいという思考になってしまう。


酒がご飯やパン代わりの糖質を担うのは、水よりも安い単価も影響しているのかもしれない。


ただ、仕事柄あまり泥酔するわけにもいかないので、食事のとき以外にはあまり口にしないようにしていた。


アルコール中毒で緩やかな死を迎える可能性もあるのだが、酔った状態で命を狙われない保証がないからである。


遺恨が残らないように処理しているとはいえ、そのすべてが完璧だとは思っていない。


この都市ではまだそれほどの案件処理をしていないが、以前にいた辺境の地で処分した者たちの身内が俺の首を狙っている可能性はあるかもしれないのだ。




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