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【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第一章 the Only Easy Day Was Yesterday
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第5話

その功績で彼女は出世を早めた。


副ギルドマスターになった際に、「昇進できたのはあなたのおかげよ。」といわれてお礼に食事に招待され、今の関係になったのである。


いわゆる体だけの関係とは少し違う。


人の温もりというのは不安定な精神を癒す効果がある。俺も彼女もそれなりに大きなストレスを抱えていた。だからこの関係は互いの精神安定剤と同じ効果をもたらしている。彼女も俺も仕事が第一で、強い恋愛感情や結婚願望がないこともこの関係が続いている一因だろう。


いや、少なくとも俺は彼女に好意を持っている。しかし、強すぎる感情とならないだけの人生経験があるため、今のような関係が続いているだけかもしれない。


執務室のソファにテーブルを隔てて互いに腰をおろす。お互いにいい大人なので、先ほどの余韻は感じさせなかった。


「本格的な活動はいつから始めるの?」


「定宿先を探して落ち着いてからだな。」


「あてはあるの?」


「いや、ない。」


「そう。本当は私の部屋でって言いたいけれど、色々と問題があるから無理ね。」


「まあ、その方がいいだろう。」


問題というのはギルマスと冒険者の淫らな関係というわけではない。


俺の専門としているものはあまり目立たない方が動きやすいのだ。


「こちらでもソロでするつもり?」


「そうだな。パーティーを組むと裏切りにあう可能性もあるからな。」


「専従契約をすれば?」


専従契約というのは奴隷契約と少し似ている。


この国では早々に奴隷制度を廃止しているため、今ではそのメリットを生かした専従制度というものが一般的になっていた。


今ではそんなことをすれば罪に問われるが、奴隷は隷属紋を入れられて主人の命令を何でも受けいれなければならないという過酷なものだ。


近代に近づくことで応じなければならない命令の範囲が制限されるようになり、例えば異性に対する性行為などの強要は除外されたそうだ。ただ、実質的には待遇を巡って強要されることも多かったため問題視された。


誰も望まない妊娠で浮浪児が増えて街の一部がスラム化したり、それにより犯罪が増加したことに対処するためというのが真相のようだが、結果的に今の専従制度へと変遷したらしい。


専従制度は、定まった職務とそのための支持命令にのみ制限がかかる。専従者は契約にそってその職務を全うしなければならないわけだが、もちろん主人に対する反逆行為は許されていない。


実際には立場を利用して無理難題を押しつける主もいるため、それなりに問題は残っている。


専従者の職務は様々で冒険者に帯同する戦闘や支援専門職、それにハウスメイドや執事などの需要は高いそうだ。


それ以外の職務については費用対効果の面で微妙らしく、それなりに人気があるのは性的な欲望を満たすための風俗業や、特定の者と契約を結ぶ愛人契約くらいのものだと聞いている。


金を貯めればそれを実現できるということで、そういったハーレム願望を持つ男はやはり多いそうだ。


まあ、個人的にはそういったものに興味はない。


商売女に手を出して病気をうつされる気はないし、その気になれば女性冒険者を口説けばそういった一夜を過ごすことには事欠かないからだ。


それにこの都市に来たのだから、人肌恋しくなれば応じてくれる人がいる。


冒険者は享楽的だという奴がいた。短く太く生きたいならそれでもいいだろう。ただ、多くの者は短く細くしか生きられない。


俺たちはアスリートと同じだ。体調管理ができなければすぐに転落人生か死が待っている。





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