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【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第一章 the Only Easy Day Was Yesterday
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第43話

アメリカに限らず、ヨーロッパのほとんどの国の人々は愛国心が強い。


祖国が好きというだけではなく、若い世代でも国の将来を本気で考えて政治に参加するという点で日本人とはまったく異なっている。


だからこそ、国に対する忠誠心や身の潔白という言葉には重みがあった。


「それでこちらの世界に召喚されることになったのか。しかし、なぜバルドル人なんだ?」


「召喚ではなく、私たちの場合は転生だそうよ。」


「転生?」


「ええ、私たちは前の世界で命を落とした。次に気がついたときにはこの体だったのよ。」


「それはいつの話だ?」


「三年ほど前よ。」


命を落とした理由を聞くべきかと思ったが、ふたりが自主的に話さないのであれば聞くべきことではないと考え直した。


「バルドル人になったのは、身体能力に優れた体が欲しいと願ったからだと思う。」


俺の一瞬の沈黙を勘違いしたのか、アドルがそう言った。


「願ったのは転生前か?」


「そうだ。オプションがどうとか言っていた。」


オプション···そういえば、俺も全盛期の力を持つべく若返らせるとか言っていたな。


「そんなオプションが可能だということは、こちらに送り込んだのは神か悪魔の類なのか?」


「盟約よ。」


「盟約?」


「極東ってところは本当に上辺だけしか見ない人が多いようね。ちょっと待ってくれる?」


ミューフはそう言って、丁寧に折りたたまれた紙を取り出して机の上に広げた。


「これって···」


「そう、こちらの世界の地図よ。と言っても一部だけどね。」


こちらの世界では地図はかなりの機密文書として取り扱われている。


封建制度のこちらでは、戦争···特に内紛が起こりやすい。「臣下の臣下は臣下でない」という言葉があるように、主君には忠誠を誓っても主君の主君とは主従関係を結んでいないという割り切った間柄である。


要するに、領主と主従関係にある騎士は例え相手が国王であろうと忠誠を誓う必要はなく、領主の命令があれば国を相手どって剣を突きつけることもあるということだ。


これは中世西欧社会の封建的無秩序に極めて近い状況だといえるが、契約を交わした相手を最も尊重するという観点から考えれば現代のビジネスに通じるものがあった。


「この地形···海岸線は少し異なるが、ヨーロッパの地図ではないのか?」


机に広げられた地図はA2サイズくらいの大きさだろうか。白地図部分も多いが、少なくとも俺の目にはヨーロッパの地図にしか見えなかった。





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