第2話
広場に近づくにつれ、人の気配が濃厚になっていく。
少し進んでから角を曲がると、正面にある二台の車と複数のスーツ姿の男たちが視界に入った。
車は高級セダンで、フルスモークのため車内の様子はわからない。
一見したところ、車外にいる男たちは四名で屈強な体つきをしている。それぞれに格闘技を身につけているのだろう。挑戦的な目をこちらに向けていた。
後方から靴の音が迫ってくる。
尾行者のふたりも合流し、挟み撃ちといったところかもしれない。
ただ、強襲されるような気配は感じなかった。
「何か?」
答える可能性は低いだろうが、とりあえず聞いてみる。
「ツゥーリ・タカーシだな?」
誰だ、そのロシア人みたいな名前の奴は。
俺の名は小鳥遊栗花落だ。
英語で発音しにくいのはわかるが、原型がなくなるほど潰すんじゃない。
「アポイントなしでの接触はやめてもらいたいものだ。おたくら、シークレットサービスだろう?」
推測でしかないが、どういった反応をするか試してみた。
無表情を装っているが、わずかに目が動いたのを見逃さない。後方にいるリーダー格にでも視線をやったのだろう。
「何を根拠に言っている?」
「暗いからわかりにくいが、おたくらが制服のように着ているのはCaballero製の防弾スーツじゃないのか?2009年に某大統領が就任式に用いて以来、シークレットサービスにも支給されるようになったんだろう。」
今度は明らかに目が泳いだ。
シークレットサービスは視線を感じ取らせないようにサングラスをしているのだが、さすがに今は目立つからしていなかった。
因みに、Caballeroはコロンビアの有名スーツメーカーで、芳香族ポリアミド系樹脂であるケブラーを特殊製法で織り込んだ防弾着を世に送り出している。
シークレットサービスはCIAやNSAといったスパイ組織ではない。
要人警護のエキスパートであり、その組織内には攻撃的な対襲撃部隊であるCATも抱える人員1万人規模の大組織だ。
とはいえ、諜報活動などは専門外であるため、ポーカーフェイスはできても化かしあいや腹の探り合いには長けていない。
少し後ろで仁王立ちしている男が一瞬首の角度を落とした。そのまま何かに集中するように動きが止まる。
片耳の後ろにアコースティックチューブがわずかに見えるため、無線で何か指示を受けていると推測できた。




