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【冒険者ギルドの特命執行官】  作者: 琥珀 大和
第一章 the Only Easy Day Was Yesterday
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第11話

何だこれは?


何の悪ふざけだ。


俺は再び文面に目を通す。


「うわっちぃっ!?」


いきなり紙が燃えだした。


すぐに放り出してその様子を見守るが、一瞬で燃え尽きたそれは跡形もなく消え去ってしまった。


最後に注意書きされていたが、本当に燃えるとは···スパイ映画の真似かよ!


しかも「焼死するかも」って書いていたよな!?


手間のかかった嫌がらせだなと思いながらも、現実を直視することにした。


あの男が言っていたことはすべて事実なのかもしれない。『理外の存在』がどうとかと、意味がわからないのは相変わらずだ。


ただ、最後の署名を思い出して怒りが込み上げてきた。


国税徴収部 特別整理部門異世界移送担当課

特別機動国税徴収官 田中 菅二郎


ふざけるなよ。


税金の支払いのために仕組みやがったな。


そもそも国税徴収部とか特別整理部門まではわかるが、『異世界移送担当課』というのは何なのか。


俺は税金の支払いのために異世界に身売りされたということなのだろうか。


確かに別の世界がどうのと言っていたが、訳がわからなかった。


何度も深呼吸を繰り返し、頭が冷静になるよう努める。


税金が払えず、家族の生活まで厳しい状況だったのは否めない。


そうだ、これは正当な取引だと思わなければならなかった。


相手や経緯がどうであろうと、これで妻子は救われるのだ。そう思うと冷静に物事を考えられるようになった。


とりあえず、近くの街を探さなければならない。身を落ち着けてからこの先のことを考えることにした。




結局、三日ほど歩き回って街を見つけた頃にはここが異世界であることを痛感していた。


外ではよくわからない生物が現れ、街に入ると文明の違いに唖然としたものだ。


しかも無一文で武器の類もなし。自前の能力で命からがら人のいる所にたどり着いたという超絶ブラックなものだった。


街では人以外の人種も見かけ、魔法などの見慣れない術が存在することを確認する。


現実なのか夢なのかわからない混乱状態に陥りそうになったが、それよりもさ迷った三日間の疲弊とこの先の生活への不安でどうにか体を動かした。


なぜだか言葉が通じるのが救いだったため、街の人々に声をかけて話を聞き冒険者ギルドの門戸を叩いたというわけだ。


いくら思い起こしても今更戻ることはできない。


あれから年数が経過し、俺は盗賊などの組織的な犯罪を専門に取り扱う冒険者となった。


魔法に関しては高い金を出して回復(ヒール)解毒(キュア)だけを修得した。しかし、それ以外の適性はなかったため、かつて身につけた技能のサビ落としに鍛錬を行い活用している。


そういった経緯でこの世界でも対人戦闘のスペシャリストになったわけだ。


魔物に関しては弱いものはその限りではないが、基本的に前衛が撹乱や防御に徹し、攻撃魔法で相手の体力を削るという戦術が基本である。


剣などの物理攻撃はあまり通用しない。


なるほど。俺が適任とされたのは海兵隊で培った対人戦闘技術、それに人殺しの経験か。


もちろん日本国内でそんなことをしたことはない。


すべて軍務による海外でのものだ。


退役後は帰国して軍役中に貯めた金で起業した。それから結婚して普通の家庭を築いたのである。


ここ数年ではあまり現場に携わったことはないが、フランチャイズ加盟による探偵事務所の経営もしていた。本部の教育担当者が元刑事で、彼から調査や尾行のノウハウも教わっている。


そういった経験や知識、それと金に困っていたことが適任者として選ばれた理由なのかもしれない。




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