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第4話 呼ばれた先は

 そこからの婚姻話はあっという間であった。


 カラムはリューフェを妻とする届け出を出し、修道院から連れ出した。


 オルフ達の思い通りになったようで癪に障るが、あの二人の思惑とは違った部分もあるために、全てが嫌というわけではない。


「君が良いというまで俺は手出しをしないからな」

 そう言って一つ屋根の下でも誠実に接してくれていた。


 カラムがつけていた装飾品についても本当の事を教えてくれる。


「どれが魔石か敵に知られてはいけないからな。一つだけだとわざわざ弱点を晒すようなものだから、こうしてカモフラージュにしている」

 と、どれが本物かを教えてもらえた。


「どれも価値があるものだから、俺がもしもの事があったら換金して生活費に充ててくれ。まっ、そうはならないように頑張るけどな」

 不謹慎な言動を覆すように明るい笑顔で言った。


 そしてカラムは修道院の皆と予想していた通り高給取りで、隠しもせずに全てをリューフェに渡す。


「好きに使ってくれていい。服でも装飾品でもなんでも買っていいから」

リューフェを信じ、ここまでしてくれてるのはわかるが、こうまで明け透けだと寧ろ恐縮してしまう。


「そこまで甘えるわけには行きません、今後の為にも大事に使わないと」

 そんな風にお互い色々な事を話し合って生活のすり合わせをしながら、楽しく穏やかに日々を過ごしていく。


 しかし日常が壊れるというのはあっという間だ。予期もせずに呆気なく終わってしまった。






「元クライム伯爵令嬢のリューフェ様ですね? 王太子殿下のご命令です、私達とご同行下さい」


「え?」

 突然の来客に驚きながら、リューフェは家の外にある馬車を見て驚いた。


 確かに王家の家紋が掲げられている。見覚えのあるそれを見て、嫌な予感しかしなかった。


 冤罪をかけられたあのパーティは王城で行われたものだ。

 それを思い出し、嫌な気持ちになった。それに詳細を言われないのも妙だ。


「あの、王太子殿下は一体何の目的で私を連れて行こうと言うのですか?」

 逆らう気はないが、理由が気になる。


「我々にもわかりません。王太子殿下がお呼びなのでお連れするだけです」


「せめてカラムに連絡を」


「心配ありません。カラム殿も別な馬車にて王都へと向かわれております」


「え?」

 自分だけではなくカラムまで……ますます嫌な予感しかない。


 しかし王太子の命令だ。逆らえるわけない。平民だから、尚更。


 最低限の物を持ち、近所の人にしばらく留守にすると伝えて馬車に乗る。

 王都まで数日かかるがその間にカラムに会えないのは辛い。


(それにしても一体何の用かしら)

 追放されてから約半年、オルフ達ともあれ以来会っていないし、父であるクライム伯爵とは手紙のやり取りはあるものの、顔を合わせたのは一度きりだ。


 何か不敬な事をしたからこうして直々に呼ばれたのだろうか。何も知らされないので悪い方にしか考えられない。


 王城に着くまで生きた心地のしない数日を送るようになってしまった。




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