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異世界に転職するなら  作者: どるき
ケースNo.3 相模カズト

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風竜姫レオナ

(どんな魔法かはよくわからないけれど、あんな薄い盾なんて意味ないわ)

(格闘だけでは勝てなかったのはシャクだけど、殺されるよりはマシね)


 フジマは盾ごと一撃でフェイトを半殺しに出来たと手応えを感じている。

 だがフェイトの思考は止まっていない。

 空中に跳ね上がりながらも冷静に次の攻め手を考えていた。

 攻撃をいなせた種はバネ仕掛け。

 ニ枚の薄い盾の間にコイルを複数挟んだ鋼鉄のミットが体当たりの衝撃を吸収して、フェイトを跳ね上げる力に変えていた。

 フジマが彼女の跳ね上がり過ぎに気づいたときには既にフェイトのセットアップは終わっている。

 攻守が入れ替わる転機の一撃が格闘女子の隙をついた。

 鉄血で精製した長い棒を地面に突き刺して姿勢を戻したフェイトの踵が、フジマのお団子頭に直撃した。

 団子結びが衝撃で解け、チカチカするほどの痛みに悶絶するフジマ。

 頭を抑えてふらつく彼女のみぞおちをフェイトは渾身の力で殴りつける。


「おごふ」

「最初にやったのはそっちなんだから、これでおあいこよ」

「く、くう」


 ユルゲン続いて自分までもが倒されたことに、悔しさと呪詛を混ぜたようなうめき声をあげてフジマは倒れた。


 危機は去りひとまずの安全はこれで確保できたか。

 だが家庭教師トライバンに会うという当初の目的とは逸脱した展開に、フェイトの溜息は大きい。

 今度こそ仕事は投げ出して帰ってしまおうか。

 だがここまでの流れでいうと、あと一人か二人くらいは同じような刺客が現れそうな予感がする。

 古めのゲームならばの話であるが。


「見てよレオナ。フジマが倒れている」

「本当ね。まあ……あの子もちょっと図に乗っていたところがあるし、なにかヘマでもしたのかもね」

「とりあえずあの人を先生のところに案内しようよ。きっと困っているよ」

「とりあえず降りるわね」


 そんな状態のフェイトを発見して、上空から話し合っていた二人がいた。

 飛行能力を持つ風竜姫レオナと彼女が親密にしている少年竜騎士ショウ。

 元勇者トライバンがこのウインドロッドにて育成している残りの弟子二人が彼らである。

 上空から二人が降りてくると、そのときに起きた突風にフェイトも気がつく。

 彼女からすれば、まさかと思ったが案の定といったところだ。


「ようこそウインドロッドへ。キミもトライバン先生に会うために、ユルゲンとフジマの試練を受けたようだね」

「えっと……君たちが次の腕試し相手ですか?」


 フェイトが二人にたずねるのも無理はない。

 現れたのが小柄な女性と、その子に抱き抱えられた少年ともなれば、この二人も先の男女のように問答無用で襲いかかってくるのか疑問だからだ。


「別に腕試しをしなければいけないなんて決まりはないわよ。フジマが倒れているってことは、おそらく貴女はユルゲンに戦いを挑まれたけれど勝利して、ユルゲンが負けたことで激情したフジマに襲われた貴女は彼女のことも返り討ちにした。そんなところでしょうね」

「よかった。貴女は話が通じるようで」

「そこで伸びている色ボケ女と違って、これでもれっきとした大地主ですので」

「実はレオナってウインドロッドの所有者で、トライバン先生もレオナから教室に使うこの辺りを借りている立場なんだ」

「へえ」(でもウインドロッドって昔は風の魔王が支配していたと麓で聞いたけれど、だったら魔王を倒したトライバンが奪い取ったんじゃないの?)


 地主を名乗るレオナの立ち振舞は礼儀正しい。

 かつて魔王の一人が支配した土地の持ち主と言われて、彼女の正体を探る手がかりを与えられてはいたのだが、フェイトは答えには至らずだった。

 ひとまずフェイトは二人に自分の素性を明かし、トライバンへの面会を求める。

 レオナは快く了承して「私の背に乗っていくか?」と、彼女のことを知らないフェイトからすれば小首を傾げる申し出をするほどだ。

 だがショウの態度は違う。

 どこかソワソワしている彼はフェイトを求めた。


「ちょっと待ってよレオナ。申し訳ないんだけれど、オレもフェイトさんと腕試しがしたい」

「え?!」

「そうよショウくん。別にそんなの後でも良いじゃない」

「今じゃないとダメなんだよ。時間をおいたら邪魔されそうだし」

「ああ〜」


 理由は語らずなレオナは倒れているフジマをちらりと見て相槌を打った。

 これは気絶中のユルゲンやフジマが目をさましたら、ショウがいくらフェイトと手合わせをしてみたいと言っても、負けた二人が再戦を挑んで暇がないと予想しての言葉だ。

 それにショウはそこまで予想していなかったが、トライバンに会って仕事を進めればフェイトも彼の挑戦を受ける義理はない。

 たしかにフェイトと手合わせをするのならば今が絶好の機会である。


「どうしますか? 嫌だというのならば、ショウくんには我慢させますけれど」

「おねが〜い」


 子供から甘えられたらフェイトも断りづらい。


「仕方がないですね。危なくないように注意をした上で一回だけなら」

「ありがとう」


 フェイトの了承に喜んだショウは練武場から引肌竹刀を二振り持ち出してきて、片方をフェイトに渡す。

 これを使えば危険は少ないと言うことだろう。


「それじゃあ、オレも本気で行くからね」


 お互いに竹刀を持って構える二人。

 フェイトは子供だと見てショウの実力を軽く見積もるが、それは的はずれな判断だった。

 少年ではあるが竜騎士。

 その意味をフェイトは肌で知る。

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