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エピローグ
及川の専属料理人になってからの小次郎は様々なことを学んでいった。
この世界がアイジーとは異なる異世界ということ。
日本で暮らす上での常識的なこと。
そして他人と触れ合うということ。
「そう気を落とすな。彼女は美人で気立ても良くて、逃すのには惜しいお嬢さんだったのだろう。だが女はこの世には無数にいる。また良い出会いがあるさ」
この年齢になるまで独り身な及川が言っても説得力に欠けるのだが、彼の言葉を励みにして、小次郎は日本で暮らし始める。
異世界人なので戸籍も何もない彼のために及川が用意した名前は及川小次郎。
無戸籍のまま成人するまで育てられた、及川の私生児という偽りの身分を與えられた彼は、そのまま及川の息子として第二の人生を謳歌した。
幸運にも数年後、彼はフェイトに似た雰囲気の女性とも出合い彼女と結婚する。
初孫の顔を見せるためにも、小次郎は養父の命をつなぐ料理を日夜作り続けた。




