表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転職するなら  作者: どるき
ケースNo.1 城之内ヒロシ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/29

プロローグ

 ここは都内某所にあるビルの屋上。

 社会人10年目に差し掛かる一人の男が寂しげな顔で登っていた。

 彼は入社当初は営業でバリバリと働いていたのだが、2年前に30歳になるのに合わせて管理部に移動。

 最初はものは試しにと軽い気持ちで引き受けたことを後悔し、今にも飛び降り自殺してしまいそうだ。

 彼は今のところ自殺する気がないので悲劇は起こらないが、一歩間違えば挽肉になるのは時間の問題だろう。


「あれが城之内ヒロシね。たしかに病んでいるわ」


 そんな彼を別のビルから双眼鏡で覗いている銀髪の女性がこの話の軸である。

 彼女の名はフェイト。

 職業は転職エージェント。

 ただし彼女が勧める転職は風変わり。


「あの人を何が何でもオーザムに連れていって冒険者ギルドに入れろだなんて、ブラフマンもまた無茶なことを言うわね。まあ……失敗したので世界が一つ滅びました、貴女の責任ですと、ネチネチと言われることを思えばやるしかないんだけれど」


 上司にボヤきながらも鋼線を使ってビルの屋上伝いに彼のもとに向かうフェイトはさながら蜘蛛女か。

 音も極力たてずに舞い降りてきたフェイトの姿を偶然その目に捉えた彼は思わず呟いていた。


「はいていない?」


 ベージュの下着を誤認する彼が夜のお店以外で女性の下着を見たのはこれが初めてのことだった。

 そんな彼も一ヶ月後にはこの通り──


「ヒロシ! 今日は北のダンジョンに行こうぜ」

「ヒロシはあたしのモノなのだから、あなたについていくわけがないでしょうが」


 二人の女性が異世界で冒険者となった彼を取り合うようになっていた。

 こうなったのもヒロシがこの二人ともバッチリ関係を持った二股だからに他ならない。

 彼女たちは異世界から来た冒険者のヒロシに惚れており、互いに相手を妾と見なして自分が正妻だと主張する関係である。

 いちおうこの世界にも婚姻制度が存在するが、まだヒロシは誰とも結婚していない。

 それというのも、ヒロシはまだこの世界に定住していない、週末だけの来訪者に過ぎないからだ。

 フェイトの手引で手に入れた異世界というセカンドワーク。

 これで力を得て、女を知り、今までの仕事にもメリハリを得られたのは、ひとえにフェイトを差し向けたブラフマンの采配だった。

 もし彼が異世界に行かなければ、彼は病んだ末に己で命を断っていたであろう。

 もし彼が異世界に行かなければ、ある理由でこの世界は滅んでいたであろう。

 ブラフマンは世界を超えた転職活動を通して、双方を救う神である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ・冒頭のヒロシと一緒にいた二人が(自称)魔王と勇者だったとは思いもしなかったので驚かされた。 ・展開が驚くくらい早い。ストレス要因があまりないのですぐ読み切れる。 ・八尺様と五寸釘寅吉を混…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ