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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【BL】まさかの遭遇

作者: Ag/あぐ

◇まさかのそうぐう◇


王道学園・王道転校生・脇役主人公を理解している前提のお話です。


自サイト掲載: 2010.07.14

約一ヶ月前、僕の通う学園に転校生がやって来た。


ボサボサとしたボリュームのあるダサい髪型に瓶底眼鏡のまるでオタクルック。僕は小説でよく読んで憧れた、王道転校生がついに来たのだと当初はかなり興奮した。


リアル王道展開が見られるかもしれないという期待に、僕はこの学園で生徒会副会長をしている幼馴染みで恋人の(さとし)に一つお願いをした。


『王道展開へ進むように、他の生徒会メンバーが転校生に興味を抱くよう行動してくれ』と。


智には、この学園に入学した時から既にやってもらっている事がある。それは常に愛想笑いを顔に引っ付けてもらう事だ。本来の智はとても男らしい性格をしているのだが、今回は僕の萌えの為に腹黒副会長を目指してもらっていた。今では立派な微笑み、腹黒王子様が出来上がっている。


智は僕のお願い通り一ヶ月前、転校生に絡んでくれた。そして他の役員にも興味がいくように動いてくれた。しかし今、僕はそれをとても後悔している。


「ふふふ、頬にご飯粒が付いてますよ」


「わっ智!急に何すんだ!?」


「何って、頬に付いたご飯粒を取っただけですよ」


イチャイチャしてる…。

智と転校生が。


…いや、実際には生徒会役員全員と転校生が、だけど。僕にはどうしても智しか目に入らない。


自分が望んだ事の筈なのに、この状況は嬉しくもなんともない。


(智は僕の智なのに…)


僕が俯いていると、生徒会メンバーと転校生が席を立った。食堂を出ていくようだ。周りの生徒達が聞こえない程度にコソコソと悪口を言っているのが聞こえた。今、僕が智を追いかけたりしたら同じような扱いをされるかもしれない。でもそんなのどうでも良かった。


僕は思い切り声を張り上げた。


「「「「「「待って!!」」」」」」


「「「「「「えっ!!?」」」」」」


しかし、僕の声に他の人達の声が重なる。吃驚して食堂を見回す。他の生徒たちも、転校生も何事かとキョロキョロしていた。


僕は、僕と同じような体勢で固まる五人の生徒を見つけた。お互いの間に気まずい空気が流れる。僕はとっさに口を開いた。


「えっと…お先にどうぞ」


「いえいえそちらがどうぞ」


「あ、そちらの方はどうですか」


「いやいやそちらこそお先に」


「いやいやとんでもないそちらが先で」


「それこそとんでもないそちらがお先に」


「いえいえ滅相もないそちらがお先で」


六人で変な譲合いが始まった。


そんなやり取りが数分続いて、僕は話しを進める為に一歩前に踏み出した。


「じゃ、じゃあ僕からいきます」


「おおっ…!」


「どうぞどうぞ!」


「では次は俺が言います」


「じゃあその次は俺で」


「僕は最後で良いっす」


譲合いに決着がつき僕はほっとして、先程から何故か動かず同じ場所に留まっていた生徒会メンバーに、智に視線を向けた。


「副会長…ううん、智!」


「俺ですか?一体、一般生徒である君が俺になんの御用でしょうか」


「っ…ごめっ…ごめんなさい。僕が一ヶ月前にお願いした事は取り消してください」


「…はて、なんの事でしょう」


「っ…転校生に絡んでってお願いした事です」


「…ふふ。今更、何故ですか?」


「っ…智と、転校生が…イチャイチャしている所を僕がこれ以上見ていたくないからですっ…!」


「君は…幾也はそれを見ていてどう思ったんだ」


「っやだ!やだやだ!智は僕のものなのにっ…!もう、リアル王道萌えとか言わないから!っ…だから転校生に絡むのをやめてください!…うっ。そ、それとも智は僕より本当に転校生が良くなっちゃった?」


「幾也」


僕がとうとう泣き出してしまうと、優しく智に呼び掛けられた。ゆっくり智に視線を向けると、そこには学園では決して見せなかった笑みを浮かべる智が。


「さ、智…?」


「幾也、やっと言ったな」


「え…?」


智の言葉に驚くと、智がこちらに近づいてきた。僕も釣られて前に進もうとする。しかし、それよりも早く衝撃の言葉が耳に入りこんできた。


「「「「「君もまさか腐男子なの…?」」」」」


「え?」


「え?あれ?」


「へ?まさか」


「うそ、もしかして君も?」


「え?そう言いますと、君もですか?」


「じゃあ、そちらもですか?」


まさかの展開。僕が立ち止まるといつのまにか近くに来ていた智に抱き締められた。それに抱き返しながら、僕は答える。


「は、はい。僕は確かに腐男子です」


「俺もです」


「俺も」


「僕もっす」


「…俺も」


「俺も腐男子…」


「「「「「「……」」」」」」


訳が分からず皆に話を聞いていくと、彼等も僕と全く同じような事をしていた。


でもまさか五人共、生徒会メンバー各々の幼馴染みだったなんて。…しかも恋人。


上から。

僕たちと同い年である、三年の生徒会長の幼馴染み兼恋人。俺様会長を演じるようお願いしていたけど、転校生とのイチャイチャ場面に僕同様、我慢ができなかったみたい。


次に二年会計の幼馴染み兼恋人。チャラ男会計を演じさせて以下同文。


次、二年書記の幼馴染み兼恋人。無理矢理ワンコ書記を演じさせて以下略。


一年、会計補佐及び雑務役員の幼馴染み兼恋人。可愛い小悪魔会計をこれまた無理矢理演じさせて以下略々…


最後に一年の書記補佐及び雑務役員の幼馴染み兼恋人。孤高のツンデレ不良書記を演じさせて以下略々々…。


「まさかこの学園にお仲間がいたなんて!」


「君、この学園で好きなカップリングは何ですか!?」


「俺が萌えたのは門番と理事長!あの二人が逢瀬を重ねてるのを知った時はマジ鼻血もんでした!」


「マジっすか!?僕もなんか怪しいとは思ってたんすけど、まさか本当にっ?!」


この時転校生がそれを聞いてギョッとしていた。ああ、王道通り、身内の方でしたか。


「もう皆、僕の部屋で杯を交わそうではないですか!実際酒は出ないけど語り合いたい!」


「おおっ…」


「賛成賛成」


「…あの、彼氏も連れていって良いですか」


「もちもち!呼んできなよ」


「はい!」


「じゃ、じゃ俺も」


「僕もっす」


「あ、光樹!来て来てー」


呼ばれた会長がまるで尻尾を振った犬のようにやってくる。


「翔!一緒に行こう?」


会計がチッと舌打ちをしながら、でも嫉妬してもらえた事に満更でもない表情でやってきた。


「稔!」


書記が呼ぶのが遅ぇんだよ馬鹿!と顔を僅かに赤らめながらやってくる。


「やっ君、来て来てー」


会計補佐が少しビクビクしながら小動物よろしくやってくる。


「太一、来いよ〜」


書記補佐が、はぁ~と頭に手をやり、ため息を吐きながらやれやれとやってきた。


生徒会メンバーがそれぞれ恋人の元へ行ってしまった為に一人取り残される転校生。そして未だに状況が理解出来ていない周りの生徒達。


そんな周りを置いてきぼりに、去っていった生徒会メンバー+その恋人一同はその日遅くまで、美野幾也の部屋で大変盛り上がったそうな。


END

美野幾也(みのいくや)

三年生。腐男子で、背が低く童顔な平凡君。ちまちま感が、クラスでは大人気。


鈴峯智(すずみねさとし)

三年生。学園では腹黒副会長。素は、優しく誠実な男前。美野幾也の恋人。


恩田大紀(おんだだいき)

三年生。腐男子で、生徒会長親衛隊隊長。とても可愛らしい顔立ちで明るく元気。親衛隊の為、生徒会には入っていない。


厳島光樹(いつくしまこうき)

三年生。学園では俺様会長。素は、大紀大好きな寡黙ワンコ。恩田大紀の恋人。


満井優哉(みついゆうや)

二年生。ふんわり優しい雰囲気の美人クラス委員長。もちろん腐男子。何故かランキングには名前が載らなかった。


浅川翔(あさかわかける)

二年生。学園ではチャラ男会計。素は、軽度の俺様野郎。優哉しか見えてない。満井優哉の恋人。


小柴爽汰(こしばそうた)

二年生。平凡な顔立ちだが、とても爽やか。運動部を色々掛け持ちしている。爽やかなのに腐男子。


仙道稔(せんどうみのる)

二年生。学園ではワンコ書記。素は、ツンデレ。でも爽汰の前だと頻繁にデレが出る。小柴爽汰の恋人。


川口恭輔(かわぐちきょうすけ)

一年生。若干ゆる~い性格。見た目はチャラ男会計寄りなチャラチャラ具合。頭は良い。でも腐男子。


東山弥生(ひがしやまやよい)

一年生。学園では小悪魔会計補佐。素は、強度のチキン。恭輔以外の相手だと上手くしゃべれなくなる。演技中は何故か平気。川口恭輔の恋人。


明石家虎太郎(あかしやこたろう)

一年生。腐男子。とにかく馬鹿。この学園に入れた事は奇跡と身内に言われてる。元気っ子で友達が多い。


屋代太一(やしろたいち)

一年生。学園ではツンデレ強面不良書記補佐。素は、虎太郎に振り回される苦労性少年。でも虎太郎以外ならとっくに見捨ててる。明石家虎太郎の恋人。

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