イチの回想 1
いなりちゃんとのうちよそから生まれた小説です。
二人で話し合ってキャラクターやストーリーを膨らませていくのが、もう楽しくて楽しくて…。
この場を借りてお礼を言わせてもらいます。ありがとねー!!
というわけで、完全に身内で楽しむための小説です。せっかくだからと投稿してみましたが、あくまで身内用なので…
それでも良いよーという人だけどうぞ!
自分の生きるところには、いつだって『影』が付きまとった。
『それ』は自分を見ており決して逃がさず、どこへだってついてきた。けれどもこちらに姿は見せないから、パノプティコンのはたらきとなってじっとりとへばりつく気配に常時監視の目を感じ、ジリジリと精神が削られていく。
高校生の頃、その『影』は女性のクラスメイトであった。
優しくしたが運の尽き。リップサービスを口説き文句と思い込み、重い愛を抱いては、相手にも同じだけの愛を求める人だった。道を歩く度後ろにある気配、数の増えてく不在着信、大量の手紙、写真、プレゼント、その中からは盗聴器……それらが彼女なりの求愛だと気づく頃には、もうすっかり心身共にまいってしまっていた。
ここで問題がひとつ。彼女は強くて、自分は弱かった。
まさか、単純な戦闘力の話ではあるまい。『人』としての強さを測るものは、たくさんある。学力、財力、器量、要領、云々……。そして学校という場において、一番の武器はコミュニケーション能力だった。
この一点において、彼女は本当に強かった。
力ある者とコネを作り、一人またひとりと仲間を増やす。事の顛末を語る時には、相手の落ち度は悪逆非道に、自分の落ち度は共感を誘って。『裏切られた悲劇のヒロイン』になることに、とても長けている人だった。周りの人間が善い人ばかりなのも災いした。正しく弱く見える方に、正義の顔して味方する。
気づけば自分は総スカン、クラスのどこにも居場所はなかった。悪役の退場は、自主退学という形で成された。
戦おうとは思わなかった。
戦う気すら起こらなかった。恨んですらもいなかった。その頃、自分は半分死人のようであった。自分と世界を常に半透明の膜が阻んでおり、簡単な話をするのにも苦労して、自分の正当性を主張するだけの、気力も、体力も、まともな思考すらも奪われていた。
『めんどくさい』はただの怠けの精神にあらず、怪物といってもまだ足りない、疲れた人の頭を狂わす恐ろしいものだと知った。もうなにもかもが、心の底から『めんどくさい』気持ちでいっぱいだった。彼女と離れたい一心だった。
抗うこともせず、ただ楽な方へと流されて流されて、生き延びることだけを考えていた。
twitterで #レイ十 #みのねが創作 といったうちよそタグが出来ています。
自作のタグってなんだか小っ恥ずかしい。でもいなりちゃんが作ってくれたのは嬉しい。よければ覗いてみてね。