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ダブり集

雨の夜の奇行

作者: 神村 律子

 顔に当たる雨粒で、私は目を覚ました。


 夕べ確かにベッドに入って眠ったはずなのに、何故か目覚めたのは裏庭の焼却炉の前だった。


 全身雨でずぶ濡れ。


 どういうことだ?


 この「怪奇現象」はここ何日か続いている。


 私は仕事を休み、医師に相談に行った。


 いろいろと検査を受けた。


 問診も受けた。


 医師の所見では、私には悪いところはないという事だ。


 しかし、詳しい検査の結果待ちという事で、私は帰宅した。


 帰宅した私を妻が心配そうな顔で出迎えた。


「どうだった?」


「検査の結果待ちだ」


「そう」


 私は結果を待っているなどというまどろっこしい方法が嫌で、強硬手段に出た。


 妻に身体をロープで縛ってもらい、動けなくしたのだ。


 それでも別の場所で目覚めるようなら、私の問題ではなく、何か他に原因があるという事だ。


 その夜、私は妻に身体を縛ってもらい、まるで芋虫のようになってベッドに寝転んだ。


 そんな状態のため、私はなかなか寝付けなかったが、それでもいつの間にか寝入っていた。




 私はまた顔に当たる雨粒で目を覚ました。


 ロープは解かれていない。


 また裏庭の焼却炉の前だ。


 妻を呼んだ。


 ロープを解いてもらい、私は家の中のある部屋に行った。


 そこは私の部屋を隠し撮りするための機材があるところだった。


 私は妻を疑っていた。


 彼女が私を運び出しているのではないかと考えていた。


 だからこうして隠しカメラを設置して、彼女の凶行の証拠を掴もうとしたのだ。


 テープを巻き戻し、最初から再生した。


 しばらくは私が寝ている様子が映っていた。


 私は早送りをした。


 そして1時間ほど経った時、妻が入って来た。


 おお、ついにわかるのか?

 

 しかし彼女は私の様子を確認しただけで、何もせずに退室した。


 妻ではない?


 いや、今のは私が寝ているかどうかの確認だ。


 もう一度来て、私を運び出すのだ。




 しかし、妻はそれから2時間が経過しても現れなかった。


 諦めかけてビデオを止めようとした時だった。


 何か黒い物が部屋に現れ、私を持ち上げると外に運び出した。


 何だ、今のは?


 私は身体が硬直するのを感じた。


 何が起こったのだ?


 私は情報を必死に整理した。


 次の瞬間、黒い物がカメラに近づいて来た。


「え?」


 黒い物の手がモニターから伸び、私はそのままモニターに引きずり込まれた。


「ギーッ!」


 動物の雄叫びのような声が聞こえた。


 その時全て理解した。


 私が以前、裏庭の軒下にいたまだ目も開いていない子猫を焼却炉で焼き殺した事を。


 これはあいつの復讐だったのだと。



 翌日の新聞の見出し。


「焼却炉で首だけ焼かれた死体を発見」

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― 新着の感想 ―
[一言] 設定、展開、構成共にすばらしい掌編小説だと思います。 ホラー的要素もしっかりと入っており、恐怖感を煽る展開もお見事です。 ただやはりラストがもったいない。 さくっと終わりすぎた気がします。 …
2010/12/16 23:16 退会済み
管理
[一言] 設定と冒頭が興味をそそられてよかったです。 しかし、怪奇現象の謎や正体がわかる部分の描写をもう少し綿密にすればより恐怖を煽ることが出来たのではと思いました。 ホラーにしては全体的にあっさりし…
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