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武器紹介『刀』編

 始めるにあたって一つ……武器というのは途方も無く奥の深いモノであり、深部まで足を踏み入れようとするならば、刀一種類だけでも十万二十万文字程度じゃ語り尽せない……そこまでいくと最早専門書の領分です。

 例えば、刀だけをとってみても、刃先の形状、鍔の形、銘の入れ方、波紋の形状等々……造り方までいくと、焼入れ焼もどしのやり方、鉄の違いと選び方、心鉄と皮鉄の違い、砥ぎの技術等々……キリが有りません。今の羅列だけでもゲンナリな方はこのまま読み進めてください。今のに興味を持ってしまった方は……読み進めた後、専門書を買いましょう(ようこそ、ディープな武器の世界へ)

 なので、ここではなるべく分かり易く、その上で知ってると少し玄人っぽくみせられるであろう知識をアクセントとして加えながら書いていきたいと思っています。


 さて、個別の武器紹介第一弾は、私が執筆している作品の主人公的存在ユートが持っている刀(ユートが持っているのは小太刀)についてです。

 刀は日本特有のモノと思っている方も多いですが、刀とは本来片刃の剣の総称であり、世界的にも片刃の剣は数多く存在します。ですが、ここでは所謂日本刀と呼ばれるモノを刀としてご紹介します。

 一般的に多くの人が刀と聞いて思い浮かべるモノは、恐らく打刀と呼ばれる種類のモノです。時代劇の侍が腰に帯びてるアレが打刀です。

 

 刀は片刃の曲刀です。まず、簡単に片刃の曲刀の特性についてご説明しましょう。

 勿論変則的な刀も存在します。鋒両刃造という形状で有名な小烏丸は、反りが浅く切先から中ほどまで両刃になっていますが……ここでは省きます。小烏丸も非常に格好良く、画になる刀ですけどね……


 曲刀……つまり、湾曲した刃というのは斬るという動作に都合が良い(刃が湾曲していた方が、引き斬る際に切先を這わせ易い)

 片刃……鎬(剣の一番肉厚な部分。鎬を削るの鎬)が中心部にくる両刃よりも、刃の棟側(峰とも言います峰打ちの峰、刀の背の部分)が肉厚になる片刃の方が、重心や刃の鋭さ(両刃は鋭さを追及すると、その形状から薄く脆くなる)を追及するのに向いています。

 ただし、鋭くするという事は、反面脆くなるという事でもあり、刃こぼれ等により低下する切れ味を維持するには、定期的なメンテナンス(砥ぎ等)が必要となります。


 刀の性能を五段階(長短含めた武器性能です。打撃専用武器に比べれば、斬り系統の武器は殴りの★少ないですし、長物に比べれば剣などは攻撃可能範囲は狭いです)で表すと


ダメージ性質は

斬り★★★★★ 刺し★★ 殴り★

 斬る事を追及した刀匠達の情熱は素晴らしい。切れ味は文句無しに★5です。

 刺しに関しては、反りの入った形状がマイナスポイント。刀は突き刺す事もできる曲刀ですが(ファルシオンなどの斬り専用の曲刀も存在します)、刺突専用の武器に比べると、やはり見劣りします。

 峰打ちや鍔や柄頭を用いた打撃技は有りますが、あくまで変則技であり、通常打撃武器としては用いません。


攻撃可能距離……★★

 後程記載しますが、刀にも色々種類があり、刀身の長さも様々です。一番メジャーな打刀で二尺三寸(約70cm)です。ナイフやダガーに比べれば攻撃可能距離は広いですが、長物の武器と比べると攻撃範囲はそこまで広くはありません。

 また、刀は引き(押し)斬る(刃を叩きつけるのではなく、刃を走らせるように斬る)モノなので、刃が届けば攻撃可能という訳でもありません。


重さ……★★ 

 剣全般からみると、さほど重くは有りません。打刀は1kg前後、太刀は2㎏前後です。1㎏以下なレイピア等の刺突剣と比べると重いですが、西洋の剣(中型剣が1.5㎏~2㎏程、大型剣になると3㎏以上)と比べれば比較的軽く、武器全体からみても軽め。


扱い難易度……★★★★

 刃の鋭さがウリな武器全般的にですが、刃を立てるのが非常に難しいです。刀の切れる部分は切先三寸(刀の先端から9cm位)といわれています。そのよく斬れる部分を攻撃点に対して、ほぼ垂直の角度で正確に当てなければ、有効打になりません。(現在の剣道においても、刃と峰の概念は一応あり、竹刀の根元や峰部分での打撃は有効打にならない)

 一時、刀の切れ味を検証……みたいなテレビ番組があり、西洋の剣では切れないモノが刀では斬れる!と放送されていましたが、あの番組で斬っていたのは巻藁や氷(だったと思います)でした。

 動かないモノに対して刃を立てて斬るのはさほど難しくないでしょう。(難しくないといってもそれなりに修練は必要です)しかし、実戦では相手も勿論動いています。知能有る相手の場合、避けられない時にわざと根本で受けたりもするでしょう。

 実戦で相手を行動不能にするほどの一撃を入れようとするならば、相当な修練が必要となるでしょう。


耐久力……★★

 刀は折れず曲がらずといわれていますが、それはあくまで見た目的にはということであり、実戦に耐えうるかどうかは別の話になってきます。メンテナンス無く使い続けても、血や脂で脆くなり、骨など堅いモノで欠けた刃では、最早通常の攻撃力は見込めません。

 斬り続けると刀の反りも変わって(要は曲がります)鞘に納める事も出来なくなります。反りが合わないという言葉がありますね……正にこの事です。

 ちなみに、血や脂で切れ味が落ちたり錆びたりするのは嘘という記述を見かけます。理由としてよく見かけるのは、包丁で牛や豚を切り続けても、切れ味は落ちないとあります……お宅の包丁はステンレスでは?血や脂の処理がしてある市販の食肉と、生きた人間では血も脂も比べ物になりません。

 血振り(時代劇でよく見かける斬った後、納刀前に刀を振る仕草)程度では血や脂は落としきれず、人を斬った後は、刃は三度拭う(直ぐに布で拭い、後に懐紙で丁寧に拭い、最後に革で磨き上げる)といわれており、手入れをせずにいると、錆で鞘から抜けなくなります。

 これは刃を持つ武器の宿命ですが、メンテナンス無しの長時間連続使用には、形状は保つことができても、武器としての性能は保つことができません。



 以上が私の独断の武器評価になります。★はあくまで目安であり、種類や造り手によっても様々に変化します。

 ★5が多い方が強いという訳でもありません。重さは★が少なければ携行性に優れますし、攻撃範囲は★が少なければ至近距離に強くなります。要は用途に合ったバランスかどうかです。


 個人的な見解になりますが、冒険者に刀系の武器は合わないと思います……自作の登場人物を否定してしまっている様になっていますが、刀というジャンルの武器は、冒険者の様な劣悪な環境下で、人よりも堅い獲物を連続で斬るのには向いていない(どんな武器もそんな想定していませんが……特に不向き)とおもいます……


 打刀と太刀の違いは大きく分けて二つ。作製時期と用途です。

 まず主な作製時期が違います。室町時代を境に、室町以前が太刀でそれ以降が打刀です。


 次に用途ですが、打刀は徒歩での使用を前提に造られているのに対し、太刀は基本的に馬上での使用を目的として造られています。その為、打刀が二尺三寸(一尺はおよそ30cm、寸はおよそ3cmです)に対し、太刀はだいたい二尺六寸前後が多く三尺越えのモノは大太刀(野太刀)と呼ばれました。


 また、太刀は打刀に比べ、反り(刀の湾曲)が大きい事が多いです。刀の携帯の仕方も違い、太刀は刃を下向きに佩き、打刀は刃を上に帯びます。(打刀は帯びる、太刀は佩くです。ここまでいくとマニアック過ぎるので、作中では帯びるにしてあります)

 これは、馬上で腰に佩いた際に、反りが下に向いていると馬の尻に当たってしまう為といわれています。


       太刀         打刀

制作時期   室町以前       室町以降

形状     反りが強く長め    反りが浅く短め

用途     馬上で使用      徒歩で使用

携帯方法   刃を下向きに佩く   刃を上向きに帯びる


 ザックリと纏めるとこんな感じです。


太刀……刃長は二尺六寸程。反りが強め。

大太刀……刃長が三尺以上の太刀。

小太刀……刃長が二尺未満の太刀。

長巻……刀身の長い太刀を扱い易くする為に、柄を長くして荒縄等で巻いたもの。薙刀の様なモノ。


打刀……刃長は二尺三寸。太刀に比べ反りが浅い。

脇差……刃長は一尺五寸。

短刀……刃長一寸未満。所謂懐刀と呼ばれるモノ。


 本編主人公の持つ武器である小太刀ですが……小という字から脇差の様なモノと思われがちですが、実際は全然別物です。

 小太刀の刀身の長さは二尺(正確には二尺未満)、脇差は一尺五寸程です。刀身15㎝の差は結構違います。何より、銘(刀の名というか造り手を現すモノ)の入る場所が違います。

 銘は(なかご)といわれる柄の内部に入り込む部分に打たれるのですが、通常刀の表(携帯する際の外側)に入れます。つまり、表裏を確認した際、刃が上に向くのは打刀(脇差も)刃が下向きなのが太刀なのです(刀の展示をする際もこれで分かります)


 ただ、脇差にも色々種類があり、一尺三寸程の小脇差や一尺八寸程の長脇差(渡世人などが持っている長ドスといわれるのはこの長脇差)があり、色々と混同される事が多いのだと思います。

 また、現在の剣道において、型の一つに小太刀の型がありますが、これもややこしいモノで、小太刀と言いながらも使用する木刀は脇差です。


 実際小太刀は現存するモノも少なく実際謎の多い刀で、通常時(馬上ではなく徒歩)携帯する為の太刀であるという説や、大きすぎる太刀の練習用(子供用)の太刀という説、儀礼用の太刀という説等々……色々ありますが、実際に使われる機会は殆どなかったようです。


 本編を読んで頂く際には、ここまで深く考えないでください。普通の刀よりもちょっと短くて、ちょっと反ってる刀……ぐらいの認識で大丈夫です。


 さて、色々と述べてきました。刀のダメだしも沢山してしまいましたが……斬るという事において、刀は世界的にも他に類を見ない程、素晴らしいモノである事は確かです。折れず曲がらずよく斬れるを追及し、刀に心血を注ぎこんだ刀匠達に敬意を表します。

 芸術的にも美しく、程良く反った形状、美しい刃紋、濡れた様な質感、研ぎ澄まされた刃……日本人の魂に訴えかけてくる何かがあります。

 なにより、刀はカッコいい!!特に納刀がカッコいい!!!血振りをしてからの納刀(上で否定しておいてなんですが……)が大好きです。剣道をやっていた頃、カッコいい納刀をよく試行錯誤していました……


 第一弾であり、主人公の武器である刀。なにより私が好きな武器だったので、簡単に纏めると言っておきながら、大分長めになってしまいました……次回からはもう少し簡単にします。

 あなたのお気に入りの武器は何ですか?そんなモノ無いよ……という方も、これからの紹介の中できっと見つかる……はず!

 ではまた次回……

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