表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者にする? 魔王にする? それとも……お料理?  作者: 白米広重
第二章・刀刃帝と獄炎帝
43/56

仲間と再出発

長くなってしまった……

オレイン目線継続です。

 黒いフードにダボダボの外套。武器はシミターか。如何にもといった風貌の暗殺者だな。それが見えるだけで三人。気配からして、まだ何人か潜んでいるだろうが、今すぐに出てくる様子はない。


「……勇者様、私はどの程度までやっていいのでしょうか?」

「どの程度?」

「はい。許されるのならば、私一人で殲滅せんめつしてご覧に入れますが」


 ん? コイツ(サディス)はそんなに強いヤツだったか? ……いや、ただ単に俺に認めてもらいたくて見栄を張っている可能性が高いな。


「そうだな……できるところまでやってみろ」


 とはいえ、流石に瞬殺される事は無いだろう。コイツの実力を知るいい機会だ。

 頃合いを見て助太刀するか、と思いつつ俺は様子を見ることにした。


「ありがとうございます」

「女、我々の目的は勇者サマ一人。今逃げるなら見逃してやるが?」

「……あんた、誰に向かって口聞いてんの? 部をわきまえてほしいんだけど?」

「……交渉決裂だな」


 色を失っていた暗殺者達の目に、暗い光が宿る。あれは……かなりの場数をこなしている目だ。


「……あのあの、オレインさん」


 空気がざわつく中、フルーが空気を読まずに俺の裾を引っ張ってくる。


「なんだ、後でにしてくれないか」

「私達はともかく、あなたは加護で死なないはずでは?」

「……! た、確かに」


 フルーの言葉に、前にいるサディスがビクッと身体を揺らす。


「……サディス、集中しろ。それに、復活する場所は教会、つまりは奴らのテリトリーだ。どうせ、復活と同時に無力化する何かがあるのだろう」

「な、なるほど……」


 故に、ここで死ぬわけにはいかない。

 というかサディス、気がついてなかったのか……


「話は終わったか?」

「……あら、丁寧に待っててくれたの。そうね、じゃあ最初のご褒美はあなたにしてあげる」

「なんの話だ?」

「すぐにわかるわ」


 サディスは腰に巻きつけていた武器、皮の鞭を手に取る。


「見たところ、それは皮の鞭……なめているのか?」


 暗殺者の言う通り、この世界でも皮の鞭はかなりランクの低い武器。もうパーティーを組んでから結構経つが、俺も始めてみる装備だ。


 ……なんで俺はパーティーメンバーの武器すら知らなかったんだ?


「随分と口数の多い暗殺者ね、そんなヘボにはこれで十分だとは思わない?」

「……後悔するなよ」


 俺が、ふと浮かんだ疑問に答えを出す前に、戦闘が始まる。

 暗殺者の一人が左手を後ろに回すのと同時に、三人の暗殺者がサディスに左右正面から襲い掛かる。


「【快楽強化】」


 魔法を唱えつつ、サディスは正面の男に鞭をしならせる。男は左手の籠手こてにそれを巻きつけて、鞭を固定。その隙に左右の暗殺者がサディスに斬りかかる。


「言わんこっちゃ――」

「[(ひざまず)け]」


 サディスの発言と同時に、左右から迫っていた二人が膝を降り、サディスにこうべを垂れる。


「なっ、こ、これ……は!」

「動け、ない……!」


 必死で抵抗しているのか、二人の身体は小刻みに震えているものの、立ち上がる事はおろか、頭を上げることすらできないようだ。


「さて、お次はあなた――」

「ッ!」


 鞭が籠手に巻きついた男は何かを感じたのか、シミターで鞭を切断するべく振りかぶりつつ、後ろへ跳ぶ――


「いい判断だわ。でも、無駄なんだけど?」


 が、鞭が断たれる事は無かった。


「なんだと……!」


 切れる事を前提としたバックステップだったためか、男は空中でバランスを崩し、そのまま地面に落ちる。


「あはっ! ザーンネーン。中に合金が通してあるのよ」

「不覚……!」


 切れないと悟るや否や、男は腕に巻きついた鞭を反対の手で解こうとするも、握ったシミターが邪魔して上手くいかない様子。


「ノロマな子は嫌いよ――【通電】」


 小さな魔法陣が鞭の柄に広がり、そこから青い稲妻が鞭を伝う。


「アババババババババ」


 鞭が巻きついている男はそのまま感電。電撃が治ると同時に倒れ込み、身体から煙を出しつつ時折ビクビクと痙攣している。男が苦労するほど巻きついていたはずの鞭は、サディスの一振りによって解け、手元に戻る。


「さて、次はあんた達ね」

「……ま、待て――」

「っ! サディス! 上だ!」


 気配を感じ、上を見ると二人の暗殺者がサディスに飛びかかる寸前だった。更に、未来視によって、サディスの影から一人の暗殺者が現れる未来が流れてくる。


「[守りなさい]」


 俺の忠告に、サディスは上を確認もせず、ただ一言呟くだけ。


 何やっているのだアイツは!


 流石に旅に出る前に仲間を失うわけにはいかず、俺は助けるべく刀に手を添え、加速の準備に入る――


「【陰手裏剣の術】」


 が、突如サディスの元から黒い物体が飛び出し、上の二人を襲う。


「この術は……!」


 上の二人はそれを回避するため、着地点がサディスからずれる。男達は着地と同時に左右へ転がり、サディスを対角に挟むように陣取る。身のこなしからしても相当な手練れのようだが、何がコイツらを邪魔したんだ?


「お前……何のつもりだ?」


 暗殺者の一人がサディスに語りかける。しかし、それに答えたのはサディスではなく――


「この方への手出しは俺が許さん」


 ――何と、サディスの影から出てきた先程の暗殺者だった。


「あはっ! 超偉いんだけど、お前(・・)! ご褒美に踏みつけてあげる!」

「あふん! あ、有難い……!」


 サディスを助けた暗殺者は、周りの仲間が呆然とする中、サディスの前に跪き、背中を踏まれて喜んでいた。


「ふぅ……さて、と。次はあんた達だったわね」

「ひっ」

「や、やめ――」


 サディスは両隣に手を伸ばし、未だに跪いたままの暗殺者達の頭を掴む。


「【通電】」

「アビビビビビビ」

「アガガガガガガ」


 プスプスと煙をくゆらせつつ、両隣の暗殺者達も前のめりに突っ伏してしまう。


「あはっ、はぁはぁ……あらぁ? 何であんた達は襲って来ないの?」


 急に矛先を向けられた暗殺者達はビクリと肩を跳ねさせる。

 しかし、それも無理も無いだろう。今まで寝食を共にしてきたであろう仲間の三人が、今やサディスにかしずき、鞭打ちをオネダリしているのだから……。


「うんうん。よろしいよろしい。じゃあ、他にも仲間がいる? 答えてくれたら――」

「ハイ! あと二人が背後の壁の中に待機しております!」


 背後の壁って――!


「えっ――わっ!」


 俺は即座にフルーを掴み、後ろの壁から距離を取りつつ、注意を向ける。


「……いる。二つの生体反応だ」

「バッ! 何を言って……何が起きてるんだ?」


 仲間の居場所をバラされ、動揺しつつも暗殺者は何か念じるそぶりをする。と、唐突に後ろの壁の一部が揺らめき、そこから二人の男が飛び出してくる。


「コレは……一体どういう状況なんだ?」

「へぇ……ねえ、何、今の技?」

「ハイ! 景色同化の魔法です! 術者は景色に溶け込む事ができますが、この魔法の使用中、術者は視覚、聴覚が極端に落ちます! なので、頃合いを見て念話で指示を送り、勇者を襲わせる予定でした!」


 サディスの問いに、ペラペラペラペラと答える暗殺者。ちなみに、先程の問いに答えた暗殺者は、現在サディスの鞭に打たれてむせび喜んでいる。もう一人は二度も報告の機会チャンスを逃したからか、悔しそうに歯をくいしばっている。


「女、なんだその能力は……我々の洗脳対策は万全なはず」

「お前たち、そんな無駄な事してたの?」

「ハイ! すみません!」


 即座に返答した者に鞭を打ち(打たれた暗殺者は喜んでいる)、サディスは自分の正面にいるまともな暗殺者に語り掛ける。


「あはっ! 一つ教えてあげる。コイツ等は別に洗脳されて私の犬になったわけじゃないわ。自分の意志でこうしているのよ?」


 ねえ? お前たち。と語りかけるサディスに、暗殺者達はワンと言って答える。


「そんな事……信じられるか!」


 一見、感情がなさそうだった暗殺者達に、感情的な部分が見え始める。


「我々は痛みや魔法といったものに幼い頃から晒され続け、今では何も感じないはずだ!」


 やはり、こういう者達はお約束といった感じで、子供の頃から訓練を積まされた孤児だったりするのだろうか?


「あははっ! そんな訓練じゃあ私の御褒美・・・に耐えられるわけないんだけど?」

「ふざけるなッ!」


 一気に距離を詰めて来た四人に、三人の暗殺者が相対し、残る一人がサディスに襲い掛かる。振り下ろされるシミターを、サディスは鞭を張ることで防ぎ、魔法を唱えて電流を流す。


「チィ!」


 先ほども使用した魔法だ、鍔迫り合いした状態では感電するとわかっているのだろう。男は電流が届く前にバックステップで電撃を避ける。


「そこッ!」


 しかし、逆に言えばこの行動バックステップは半強制的にサディスがさせた行為。当然の如く、動きを読んでいたサディスはただでは逃がさない。着地の瞬間を狙い、魔法を唱える。


「【滴る赤蝋(キャンドルドロップ)】」


 伸ばした指先から赤い粒が飛び出し、暗殺者の顔に当たる。


「ぐああああああ!」


 急所にダメージが入ったのか、暗殺者はその場で顔を抑えてうずくまる。そのタイミングを見計らい、サディスは反対の手に持っていた鞭をうずくまる暗殺者の首に巻き付ける。


「いっ……やめッ――」


 片手で顔を抑えつつ、懇願するような顔でサディスを見上げる暗殺者。その顔を満足げに睥睨へいげいしつつ、サディスは微笑む。


「さあて、あなたもぉ、私のペットになって頂戴?」


 語尾にハートマークを連想させるほど甘い声で返答するサディス。当然、暗殺者を逃がすわけがなく、笑顔で電気を流す。


「アゴゴゴゴゴゴゴ」


 例のごとく、煙を纏いながら突っ伏す暗殺者。


「そう、耐えられるわけがないじゃない。だって、これは――」

「き……んぎもぢいいいいいいいいい!」


 ビクンビクン! と身体を跳ねさせながら、先ほどの暗殺者が叫ぶ。


「――快楽による調教、なんだから」


 ニコニコと笑顔を浮かべながら、叫びだした暗殺者を満足気に見るサディス。そのサディスを前に、まだ無事な暗殺者達は震えだす。


「あはっ! 教えてあげる。私の攻撃は痛覚に比例した快楽を伴うの。それをさっき強化したってわけ。つまり、痛覚よりも快感の方を強く感じてしまう攻撃になっちゃってるのよ」

「馬鹿な……それだけで――」

「モチロン、それだけじゃないわ。Pスキルでね、私や私の武器に触れた生物の快楽中枢を最大限まで敏感になるよう、強化・・してあるの。この状態で私の攻撃を受けるとどうなるか……わかるわよね?」


 暗殺者達は無意識に唾を飲み込む。彼らの仲間を見れば、どうなるかは一目瞭然だからだ。彼らの考えている事、それ即ち、「そんな攻撃を受けちゃったら、俺はいったいどうなっちゃうの?」だ。

 それにしても恐ろしい。本当に洗脳ではないため、そっち系の対策では対応できず、かといって強化の一環であるためデバフ対策も無意味。その上、痛覚ならともかく、快楽中枢なんて ピンポイントなところに対策を講じている者などいないだろう。


 俺でもヤバいやつだぞこれ……


「ああ、ちなみに、私に一定以上近づくと、私の絶対命令圏に入るから気を付けてね」

「なんなのだそれは……聞いた事ないぞ」

「勇者様……はい。今まで聞かれたことがなかったので」


 無意識に呟いてしまった疑問に、サディスは律儀に答える。しかもいつものヘコヘコ口調で。


「従順か!」


 思わず突っ込んでしまう。確かに、今まではコイツ(サディス)の事を情報源ぐらいにしか考えておらず、興味がなかったが……これだけ有能なら早めに示してくれてもいいではないか!

 と思いつつ、コイツにそんなチャンスを与えた事なかったと思い至る。

 これは反省だな。


「えと……絶対命令圏とは、私のスキル、[絶対強者の命令]を無詠唱で起動できる範囲の事です。距離に比例して効果が上昇します。快楽に溺れたこの様な者達であれば、ある程度離れていても、コイツら自ら(・・)の意思で命令を遂行させる事が可能です」


 ……ちょっと、サディスについて知らないことが多すぎる。これは勝負が終わったら話し合いが必要だぞ。

 そう心に決めつつ、俺はサディスに命令を下す。


「……サディス、終わらせろ」

「かしこまりました」


 暗殺者達に戦慄が走ったのが伝わる。仲間に足止めされ、逃げることもままならない三人のまともな暗殺者達は、より一層逃げるために奮闘する。


「おい、正気に戻れ!」

「お前もコチラヘこい」

「……クソ、こうなったら――【影伝かげづたいの術】」


 鬩ぎ合いの中、一人の暗殺者が影へと身を沈める。


「チ! ご主人様! 影に注意――」

「【通電】」

「アビビビビビビビ」


 サディスは影に短剣を刺しており、既に電気を流している。


「あはっ! その技、さっきアイツが見せてくれたし、わかってるっつーの。オラッ! お前も行ってこい!」

「は、はひぃ!」


 痺れて動けずにいた暗殺者の尻を蹴り飛ばし、サディスは笑う。


「あははっ! そいつらを無力化した子にはご褒美にビンタしてあげるわ!」


 ……アレ、サディスなのか?


 俺と喋るときはいつも丁寧口調だったし、礼儀も重んじていた。それがなんだ? 今まで見ていたサディスとはいったい……


 俺がサディスに対し恐怖を募らせている間にも、まともな暗殺者は多勢に無勢、あっという間に無力化、調教されてしまう。


「ふぅ……ふぅ……よし。勇者様、終わりました」

「う、うむ……ご苦労……さま」


 もはやどう接したらいいのかすら不明だ。よくもまあこれだけの力を持ちつつ俺に従事していたものだ。

 結局、仕向けられた暗殺者の七人は全てサディスの……なんだ、犬(?)になった。


「やはり、教会からの刺客だったようです。ね?」


 ベシンッ!


「うっ! ……そうです」


 暗殺者の一人に腰掛けつつ、尻を叩きながら質問するサディス。そして、それに対して恍惚の表情を浮かべて答える暗殺者。ヤバイ光景だ。あと、無言で「座りますか?」と言わんばかりの顔をするな向けるなこっちを見るな!

 ため息を吐きつつ、俺はサディスを横目で見る。


 それにしても、俺はサディスについて全く知らなかったな……。


 驚きしかない戦闘だった。これだけ強いのだったら、オルガ戦でちゃんと協力すればもっと戦えたのではないだろうか? そう思うと悔しくてならない。

 オレインの大胆不敵な性格に染まりすぎた挙句、自身の力に自惚れ、あのザマだ。気がついた時には元の俺の性格は遠く向こう。なんだか急に目が覚めた気分だ。これからは極力仲間にも気を配ろうと、俺は心に誓う。とはいえ、もうこの性格に染まってから長い。すぐには戻れそうにないな……。


「ご、ご主人サマ」

「なぁに? 誰が勝手に口を開いていいって言ったの?」

「サディス、うるさいぞ」

「す、すみません」


 ……口の利き方がどうしても治らんな。まあ、少しずつでも治していけばいいか。それよりまずは、


「貴様、何を言おうとした?」

「……誰が知らんヤツに口を――」

「お前……勇者様に失礼なんだけど? もっと敬えよ、オラ」

「すみませんごめんなさい。ハイ。ここにとどまっていると、我々の仲間がくる可能性が高いです。それもかなり数が」


 もはやサディスの口調には突っ込まない。

 それにしても、それは……ちょっと面倒だな。俺はさっさとこの街を出てオルガを追いたい。


「それは面倒だ。俺様にはやるべき事がある。どうにかならんのか?」

「あっ! 私、地下通路のルートを暗記しています!」


 突然、大きな声を出しつつ挙手したのはフルーとか言う女。


「バカな! アソコは入り組み過ぎて我々でも迷うのだぞ?」


 暗殺者の一人が信じられんと叫び、うるさいとサディスにぶたれて喜ぶ。

 ……そんな事より、フルーに関しては謎しかない。俺や俺のパーティー情報、オルガの情報も知っていた。なんでそこまでして俺に協力する? 依然として怪しさが拭えない。


 ……少し、試してみるか。


「……フルー、嘘なら殺すが?」

「まっかせてください! 地下への道はこっちです!」


 俺のドスを効かせた脅しにも動じず、フルーは自らの豊かな胸をドンと叩き、先行して道を進んでいく。正直なところ、怪しいなんてもんじゃないが……今は信じるほかないか。

 俺はサディスと顔を見合わせた後、互いに頷き、素直にフルーについて行くことにした。



◇◆◇



「で、街の外まで来たはいいが」


 フルーの案内により、俺たちはあっさりと街の外へ出る事が出来た。が、


「どうかされました?」

「……なんでこいつらまでついてきてるのだ?」


 俺が目を向ける先、そこには先程まで敵対していた暗殺者達が全員いた。


「……なんか、私の調教が忘れられないみたいで、邪魔ならいなくさせますが」

「……まあ、来たいなら止めはしないが、お前らはそれでいいのか?」

「ハイ、勇者サマ。お嬢の主人であるアナタならば、我々も従わせて頂きたい」


 普段は一人の影に残りの六人が潜んでいるため、見た目は一人だ。声は六重だが。


「あのー、こいつらに、私も入ってるんですけど」


 背後から、服を摘まれると同時にやけに通る声が聞こえる。

 もちろん、コイツ(フルー)も含めてコイツら、だ。


「そうだお前。オルガは何処へ向かったんだ? 言え」


 ダメだ。まだ意識しないとオレインの口調になってしまう。せめて、欲しい物は全部俺の物、なジャイ●ン体質だけでもなんとかせねば……


「横暴ですねー、まあいいですけど」


 フルーは俺のヤバイ態度に対しても気を悪くした様子はなく、やれやれという冗談じみた仕草で流す。そんな彼女の姿を見て、俺はふと思う。

 全体的に少し幼さがあるものの、出るとこは出ており、目鼻立ちもくっきりしている。フルーは以前の俺なら有無を言わさず手を出しているタイプの女だ。時々出る言動の残念ささえなければだが。


「あんた……勇者様に近づきすぎなんだけど! 邪魔なんだけど!」


 俺に纏わり付いてくるフルーを引っぺがしつつ、しっしっと他所へ追いやるサディス。

 こいつだって、よくよく見てみればキツイ吊り目ではあるが、黙っていれば大人の女性特有の色気を纏っている。それに、あの性格を除けば顔だって悪くない。


 ……オレイン、手に入れたものには関心が無くなるタイプだったんだな。


 そんな事にも気がつけなかったという事から、オレインのもともと(・・・・・・・・・)の精神に随分と影響されていた事がわかる。これからは注意しとかねば……もし、あのまま気がつかずにいれば、いずれはオレインのコピーになるところだったのかもしれない。


 そんなまさか……な。


 俺は今の考えを鼻で笑う。プレイヤーの精神が乗っ取られるなんて、それこそお笑いだ。

 俺はこの考えを打ち切り、言い合いを始めた二人を見つめる。


 それにしても、皮肉な事だ。


 手に入れたいものは望めば離れていき、高望みをやめた途端に手に入ってしまったのだから。


「――て、ちょっと。オレインさん! 聞いてますかー?」


 そんな、くだらない事について思いを馳せていると、フルーが大きな声で叫ぶ。


「あ、うむ。すまん、聞いてなかった」

「もー、しっかりしてください!」

「ちょっと! あんた、うるさすぎるんだけど!」


 サディスもサディスで、二人の時はどこか気を張り詰めていた印象だったが、今はフルーに躍起になっている。その姿に以前の面影はない。自然体だ。いい意味でフルーの加入も影響しているようだ。

 と、今はそんな事を考えている場合ではない。


「で、なんなのだ?」

「あ、はい。まず、ヨウさん達はモリアオの『凍結帝』に会いに行ったみたいです。その前に、ギチトの街に行くと言ってました」


 ギチト……刀刃帝領地との最前線。フルーの話では、最前線に優秀な人材がいるという話だったが……

 俺はチラリと後ろを振り返る。


「どうされた勇者サマ」

「なんでもない」


 なんかよくわからんうちに優秀(?)な面子が揃ったしな……


 先日の戦いより、個では絶対にオルガに勝てない事は理解した。しかし、チームであればまだわからない。今度は確実に俺の実力を認めさせる。そのために、まずはチームの事を把握する必要がある。


「……勇者サマ、敵反応アリです」


 三歩後ろを歩く暗殺者――イチ(コイツらのコードネームは全て数字だった)が敵の接近を囁く。

 タイミングよく怪物も現れた事だし、コイツらの事をもっと知っておくべきだろう。いつか来る、再戦の日に向けて――


「まずは、お前らの力を見せてもらおうか」

オレイン目線はここで終わりますが、いかがだったでしょうか?

次回からはヨウ達の話が再開です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ