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勇者にする? 魔王にする? それとも……お料理?  作者: 白米広重
第二章・刀刃帝と獄炎帝
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翠炎とお邪魔虫

時間が空いてしまって申し訳ないです……

「クヒッひひひ! カルテット! クインテット! 援護してくださいますか?」

「まあ、いいでしょう。【立ち昇る炎(フレイムピラー)】」

「仕様がないですわねぇ。【突き抜ける炎ペネトレイトフレイム】」

「クヒヒッ! 素敵ですわよ皆さん――『教皇の指輪パーパル・リング』」


 壁で退路を断たれ、放った子蜘蛛達もどんどん潰され燃やされていっている。

 我輩の劣勢は誰が見ても明らかであろう。

 しかし、それも仕方ないのである。なぜなら、今の我輩は本来のスピードの3分の1ほどしか出せていないからだ。

 その理由は――


「クヒッヒヒヒ! 後ろがガラ空きですわあああ!」

「かわっ――くっ!」

「あん、逃げられました……早いですわね」


 ――コレだもの。

 どうしても見惚れてしまう。いくら相手が憎くとも、いくら我輩が姫に心酔していようとも、可愛いものは可愛いんだもの。

 ほんの数瞬だが、こちらの行動が遅れてしまう。避ける事は出来ても、それ以外の行動に移せなくなってしまう。


「むう、こうなってしまっては致し方あるまい」


 しかも、可愛いだけならまだしも、強さも尋常ではない。このままではいずれ確実に殺されてしまうだろう。

 そう考えた我輩は狙う対象を変え、先程から何故か驚いてばかりの男の方に移動を開始する。


「眷属達よ!」

「なっ邪魔ですわ!」

「鬱陶しいですわね!」


 我輩の無情なる命を受け、少なくなった我が子蜘蛛達が5つ子のうち3人を命懸けで足止めしてくれる。


「……すまない」


 できる限り美少女達を見ないようにしながら謝罪を告げる。我輩の魔力で産み出した意思無き子蜘蛛ではあるが、心臓もあるし、成長もする。

 そんな蜘蛛達の犠牲が作り出した貴重な数十秒、無駄にするわけにはいかない。


「くっ! ソロ! トリオォ!」


 後ろから聞こえる叫びから察するに、まだ足止めしてくれそうだ。

 男を狙うというのはフェイク、真の狙いは前方の2人のうちから、この壁を作り出した犯人を倒すこと。

 予想通り、ソロと呼ばれる方が男とともに避難を開始。もう一人のトリオと呼ばれる方が、吾輩を足止めするようである。先ほどの会話から察するに、壁を作り出しているのは――


「左目に壁と同じ藍色の炎が灯っている方!」

「んんー? 狙いはヨウさんではなく――」

「――わたくし、ですの?」


 男を守るように逃げた翠色の炎だけを宿した方を無視し、それを守るように立ちはだかった方の美少女がターゲットだ。

 若干の違和感からそれに気がついたらしい美少女達も対応を変え始めている。

 しかし、今の我輩といえど、その対応は遅すぎる。


「『不燃斬糸』!」

「『藍炎ラピスラズリ』」


 我輩の糸が現れた藍色の壁に吸い込まれて行く、しかし手応えが感じられない。


「……クヒッヒひ! 流石に、全力の火力では御自慢の糸も届かないようですわねえ!」「溶けた……のか」


 耐火性に特化したこの糸でも届かないとなると……状況はかなり厳しいか。


「そろそろ他のわたくし達もこちらにくる頃合い……諦めたらどうですの?」「余計な――」


 我輩が最後の手段に打って出ようとした時、それは起きた。


「[神閃]」


 藍色の壁に、大きく輝く横一文字が走ったと思ったら壁が爆散し、消失した。


「オルガアアアアッ! 俺様はまだ負けてなどいないぞおおッ!!」


 やたら派手な装飾の施された服を着た、何やら怒りながら叫んでいる若い男と、それに付き添う女の2人が走ってきた。

 彼等が誰だかは知らないが、なんと素晴らしい働きをしてくれたことか。


「炎の狂女オルガよ、せっかくだが、我輩はこれで失礼させていただくとするよ!」


 顔を見ないように言いつつ、我輩は糸を手繰り、大きく飛翔、急スピードでこの場を後にする。


「待っ――」

「そこかあぁっ!」

「くっ、邪魔ですの!」


 八つある目のうちの2つで振り返れば、男が5つ子達に突撃し、我輩への追撃を図らずも防いでくれているようだ。

 まさか、エドヴィルを倒したのが女性、それもとびきりの美少女とは思いもよらなかった。

 我輩は強敵(男)専門なのだし、負けてしまう可能性が高い。とあらば、この情報を持って帰るのが最善だろう。

 この結論に辿り着く前にすでに逃走を開始していた我輩は、より一層そのスピードを増し、城へと舞い戻った。



◇◆◇



「ああん、もう! 」

「あの男……確か昨日の勇者でしたわね」

「全く……お仕置きが必要ですわね」


 どうやら他のわたくし達もわたくしと同じ考えに至ったようですし、これは満場一致でお仕置き決定、ですわね。


「見つけ――な! 何なのだ!? 増えているだと!?」


 わたくしが複数いる事に漸く気がついたらしい勇者は、目に見えて狼狽している。


「はぁ、こんな奴に邪魔されるなんて……デュエット」

「わかりましたわ」


 凝固した紫炎の結晶でできた刀を手に、デュエットは勇者へと駆ける。

 彼女はわたくしの中でも武器による接近戦を得意としている。


「むっ! け、剣で戦ってくれるのか!?」


 向かってくるデュエットが手に剣を携えている事に気がつくと、なぜか勇者は顔を綻ばせる。


「何をニヤニヤと……気持ちが悪いですの!」

「ふんっ!」


 デュエットの全体重と勢いを乗せた右の振り下ろしを、勇者は俊敏な切り上げで相殺する。


弾けリーペル!」


 剣同士が拮抗した一瞬の間に、デュエットは紫炎の力を使って勇者の剣を弾き飛ばす。初めからこれを狙っていたのか、デュエットは既に左手で勇者を突く構えを取っている――


「なんの!」

「なっ」


――が、勇者はこの事を予想できていたのか、剣が弾かれた勢いそのままにくるりと回転し、デュエットよりも早く二撃目の斬り降ろしを繰り出す。

 さすがに予想外であったのか、デュエットは避けきれなかったらしく、纏っていたドレスに大きく裂け目が入っている。


紫炎アメシストの力を利用された……?」

「ふん、その力は一度見たのでな」


 なるほど、どうやらこの勇者もただのバカではないらしい。


「く、クヒひヒヒひヒ! 少しは成長されているようですわねえ!」

「あらあらデュエット、一人で楽しみすぎては駄目ですわよ?」

「そうですわ。わたくし達にも遊ばせてくださいな」


 興奮状態のまま単騎で突っ込もうとしていたデュエットにクインテットとカルテットが近づいてゆく。


「ふう……ま、仕方がないですの」


 渋々ながらデュエットもその申し出を了承する。

 彼女たちはわたくしから生まれた存在ではあるものの、個々で性格や得意とすることが異なる上に自立した意思を持っている。


「ふう、相変わらず見守るのも冷や冷やさせてくれますわね」

「ん? なにかいいましたの?」

「いえ、なんでもないですの」


 危ない危ない、うっかりトリオの存在を忘れてましたわ。


「それでは皆さん、行きますわよ」


 六つの獰猛な眼が獲物を吟味するかのように勇者を捉える。


「まとめて相手してやる」


 それに臆することなく、勇者もそれに向き合う。


「では、30秒ほどで終わらせますの」

「それはいいですわね」

「そうしましょう」

「「「それでは、行きますわ!」」」

「舐めるな!」


 わかりやすいデュエット達の挑発にまんまと乗る勇者。正面から三人に突っ込んでゆく。

 勇者を名乗るにはまだまだ精神面があまあまですわね。


「【灼熱の大地マグマヴァース】」

「なっ……なにィー!?」

「あら、アレを避けるのはさすが勇者と言ったとことですわね」


 確かPスキルで少し先の未来が見えているのだったかしら、それにしてもいきなり辺り一帯を溶岩にされて無傷なのはあっぱれというところですわ。まあ、驚きは隠しきれなかったみたいですけれど。


「【燃える流星(メテオ)】」


 間髪入れず、今度は遙か上空からいくつもの巨大な燃える隕石が迫る。


「ななな! くっ! [ディメンションスラッシュ]!」


 勇者は数ある隕石のうちから、正確に直撃コースの石のみを異次元へと消し去っている。

 だが、その一瞬が命取り。


「クヒヒっヒひヒ! ソロ!」

「ええ」


 予想通り、デュエットから協力が要請される。


「「『クリスタルバレッド・アメシストクオーツ』」」


 発動と共に、デュエットの刀はその形態を一瞬で銃へと変化させ、そこから一発の銃弾を発砲する。

 空中での回避はさすがに無理なのか、銃弾に気が付いても勇者は避ける気配はない。


「なんのそれし――」


 瞬間、弾丸は勇者に着弾し、勇者の体を一筋の紫光が通り抜ける。

 その直後、勇者の身体は四方に弾け飛び、辺りに勇者だったものが散乱した。


「…………ええええええ!? ゆ、勇者様ーー!?」


 御付きで来ていた存在感のない女があっけなく倒された勇者に驚愕している。


「さて、あなたですわね? 勇者をここまで連れてきて、わたくしの邪魔をさせたのは」

「あ……」


 しまったとばかりに口を手で塞いでますが、もう遅すぎますけど。


「お話、聞かせていただきますわ」


 ニヤニヤと笑いながら女に近づくデュエット達。

 嫌ですわね、笑い方もそうですけれど、なんとなく雰囲気が怖いというか……わたくしはああはなりたくないですの。


「ま、まっ――あ」


 女は何か希望を見つけたのか、少しだけ顔が引き締まる。


「もうなにをしてもむ――」

「[絶対強者の命令]! 『叫びながら後ろに走りなさい』!」

「なにを言ってま――」

「うあああああああああああああ!!」


 あんまりな文句に呆れていると、突然わたくしの隣から大声が発せられる――まあ、ヨウさんだったのですけれど。

 ヨウさんはそのまま叫びながら全力疾走で後ろへと走っていった。

 それをわたくし含め、全員で呆然と見ていると、ふと気が付けば女は何処かへと消えていた。


「なっ、ちょっと、ヨウさん!?」

「や、やられましたわ……」

「なんて卑怯な! 次に会ったら絶対にミンチにして差し上げますの……」


 気が付けば、わたくしに残された時間が切れかけていることがわかってしまう。

 他のわたくし達も足から消えているのが見える。


「こ、こんな中途半端なところで消え――え、デュエ――」


 そこでわたくしの意識は奥へと戻っていった。

 前回、僕は「三日でうんたらかんたら」と書いたのを覚えています。でも、前回の投稿からこんなに間が空いてしまいました。謹んで、ここにお詫び申し上げます。

 夏休みが! 夏休みがいけないんだ! ……いえ、完全に作者が悪いです。

 本当にすみませんでした。完結させるつもりはマンマンですので、その点は絶対に裏切りません!

 期間が空いてしまうこともあるかと思いますが、これからもどうかどうかよろしくお願いいたします。

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