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退魔師兄妹の日常  作者:
第三章 彼女の秘密と二人の変化
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第15話 『妹』

 待ち合わせ場所のファミレスに着いて夢奈の姿を探すと、夢奈は直ぐに見つかった。

 夢奈は泣きそうな顔でストローを指で弾いている。


「夢奈」


 駆け寄って名前を呼ぶと、夢奈は心底安堵した様子で微笑んだ。その表情に俺も安堵する。夢奈は俺を見上げながらズボンをつまんで引っ張る。夢奈の目は明らかに『撫でて』と訴えていた。俺はわざとらしく肩をすくめて見せて、夢奈の頭を撫でる。


「そんなに心配しなくても、俺はいなくなったりしないっての」

「……むー」


 夢奈は唸りながら掴んでいるズボンをぐいっと引っ張る。


「帰るか」


 俺の言葉に夢奈はこくん、と頷いて返した。



 それから会計を済ませて俺達は帰宅した。

 キッチンには既に帰宅していたしろがいて、なにやら落ち着かない様子で俺達を見比べている。


「しろ、ただいま」

「ただいまです」

「あ、ああ、お帰り」


 部屋着である男物のTシャツを身につけたしろは挨拶を返すと気まずそうに視線を逸らした。


「どうかしたのか?」

「へ? な、なにがだ?」


 しろの尻尾がぴーんと上向いている。こういうところは夢奈以上にわかりやすいな。


「なんかそわそわしてるから」

「あう……その……」


 しろは視線を彷徨わせながら冷蔵庫を指さす。思わず俺と夢奈は顔を見合わせる。それから俺は冷蔵庫を開けて中身を確認。そこには『エンジェルパフェ』と店名が書かれているケーキ箱があった。『エンジェルパフェ』は確か、隣町にある女子に人気の洋菓子店だ。


 俺はそれを引っ張り出して、ダイニングのテーブルに置く。


「こ、これ……」


 夢奈がキラキラした瞳をしろに向ける。するとしろは気まずそうに目をそらした。


「ここのカスタードプリンを夢奈が、その……食べたいと言っていたから……」

「わざわざ買ってきてくれたのか?」

「ん」


 しろはこくんと頷いた。


「し、しろぉぉぉおおお~~~~~~~~~~!」


 夢奈は弾んだ声を上げながらしろに抱きついて頬ずりをしている。しろも満更でもないようで少しだけ嬉しそうに表情を綻ばせていた。

 夢奈は頬ずりをやめて、しろを解放するとにっこりと、無邪気に微笑む。


「しろ、ありがとうございます」

「……ん」


 しろはこくんと頷きながらちらちらと俺を見ている。


 なんというか、やっぱりわかりやすいな。多分撫でて欲しいんだろう。

 しろと距離を詰めると期待いっぱい、と言った眼差しで俺を見上げてくる。


「ありがとな」


 そう言って頭を撫でると、しろは「ん」と言いながら嬉しそうに目を閉じる。


 猫耳をぴくぴくさせて、尻尾は俺の手の動きに合わせて右に左に揺れている。

 なんだこの可愛い生き物は……! というのがやっぱり俺の感想だった。なんとも愛くるしい。


 妹を見る兄の目線というか……子を見る親の目線というか……。とにかく、しろを見ていると時々えらいなーよしよし、とか言いながら頭を撫でたくなるような、そんな衝動に駆られる。


「むー」


 唸りながら夢奈が抱きついてくる。


 子供のように俺の身体に顔は埋めているものの、しろを撫でていることに文句を言う様子はない。俺は苦笑を浮かべながら空いている片手で夢奈の頭を撫でる。


「それじゃあ折角買ってきてくれたわけだし、ありがたくいただくとするか」

「はいっ!」「ああ」


 それから俺と夢奈はひとまず着替えるために部屋に行き、そしてリビングに行く。


 リビングではテーブルの前でぺたんと腰掛け、目の前に置かれたケーキ箱をご機嫌な様子で見つめながら尻尾を揺らしているしろの姿があった。


 夢奈のために買ってきたというのは間違いなく事実だろうが、しろ自身が食べたかった、というのもまた事実だろう。


 女の子はやっぱり甘いものが好きらしい。ま、俺も嫌いじゃないけど。


 それからTシャツに短パン、というラフな格好に着替えた夢奈も来て、俺達はプリンを食べる。


 ほどよい甘さにカラメルソースの苦さがマッチしている。有名店だけあって、プリンはとても美味しかった。


 夢奈もしろも見ているこっちが笑顔になるぐらいに美味しそうに、幸せそうに食べている。


 食べ終わって、夢奈がしろに抱きつきながら「ありがとうございますっ」と言っている姿を見て微笑ましい気持ちになる。

 うん、やっぱり夢奈はしろが嫌いなわけじゃないんだな。


「あ、お兄ちゃんがゆめにえっちな視線を送ってます。お兄ちゃんがえっちです、変態です、大好きです」

「んな視線送ってねぇよ! なんかさ、二人って全然似てないけどそうしてると姉妹みたいだよな」

「そ、そうか?」


 しろが恥ずかしそうに視線で俺と夢奈を見比べる。


「おう」


 女の子がそうやってじゃれ合っている光景が俺の目にはそう見えるだけ、って可能性もあるが──というかその可能性が高いけど言わないで置く。


「それならやっぱりおねーちゃんって呼びます?」

「夢奈がお姉ちゃん…………ぷっ」


 堪えきれずに噴き出すと、夢奈が顔を真っ赤にしながらふくれっ面になった。


「ひ、酷いです! ゆめにとってお兄ちゃんは確かにお兄ちゃんですが、双子だから歳も誕生日も同じなんですよ!? わかってますっ?」

「それはわかってるんだけどさ。なんかそんな感じしないんだよなー。実は夢奈は双子じゃなくて、三つ年下の妹でしたーとか言われてもあー、やっぱりって納得できちゃうし」

「うぐぐ……確かに童顔だという自覚はありますけど……」

「いや、見た目っつーか中身の問題だよ。夢奈はなんというかこう……妹っぽい」

「妹っぽいってなんですか!? なにを基準に妹っぽいって言うんですか!? ゆめの胸は大きいんですからね!!!!」

「胸の話はしてねぇだろうっ! 自慢げに胸を張るな! 持ち上げるな、掴むな、揉むな!」

「お兄ちゃんにいっぱい突っ込まれちゃいました……はぅ」


 夢奈が言うと性的な意味にしか聞こえないぞどうなってんだ!


「はぅ、じゃねぇよなんで頬赤らめてんだよ!? 指をくわえるな、胸元開けてこっちに谷間見せんな一旦胸から離れろあほ!」

「今日もイズモは突っ込みまくりだな」


 なんだかしろの言葉も性的な意味に聞こえてきたぞなにこれ不思議!


「激しいですねっ♪」

「確かに激しいな」

「なぁしろ、もしかしてわかって言ってる?」

「勿論わかって言ってるぞ。イズモはえっちだな」


 本当にわかってるっぽいな。そういや夢奈に対して雌牛だのビッチだの言ってたし、その手の話が全くわからないわけではないのだろう。


「ところでお兄ちゃん。ゆめのどの辺が妹っぽいんですか?」

「ん? ああ、俺もよくわかんないんだけどさ、夢奈ってこう……見てると守ってあげたくなると言うか、世話を焼きたくなると言うか……放っておけない雰囲気があるんだよ」

「そ、それはすごく嬉しいですけど……」


 夢奈は顔を僅かに赤く染めながら俯いて上目遣い気味に俺を見る。


「それって『妹』関係あります?」

「……どうだろうな」


 俺はそっと夢奈から目線を逸らした。


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