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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第4章 もうひとつのはじまり
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18.プレゼント

ほどよくお酒も回ったころ

あたしはカバンからある物を取り出し

ソファに座るカオルさんの真横へ

思い切って移動した。

いきなり隣に座ったあたしに

カオルさんは愉快そうな顔で微笑む。

「何、どうしたの急に」

あたしは照れ笑いしながら

後ろ手に持っていた包みを差し出した。

「これ」

「え……?」

「ピアスのお礼にと、思って」

ブラウンの包装紙に小さな赤いリボン。

「本当はバレンタインの時に

 渡そうと思ってた物なんだけど」

それは1か月前、バレンタイン用に買っておいた、

あの腕時計だった。

渡せる事はないかもしれないと思いつつ

ずっと大切にしまってあった物。


カオルさんは驚いた顔をして

それからその包みを、ではなく

いきなりあたしを丸ごと抱きしめた。

「ありがとうシノ。ありがとう。嬉しい」

「か、カオルさん」

「ごめん。その時……」

「そんなの、それはもう良くて。

 って言うか、そんな、大した物じゃなくて

 恥ずかしいんですけど」

「……見ていい?」

「もちろんです」

カオルさんが包装紙を解くのを

あたしはドキドキしながら見守った。

プレゼントを渡す時というのは

どうしてこうも、照れくさいんだろう。


包装紙の下には、透明の箱に収められた

薄紫色の腕時計。

「一応、防水で。海で使えるようにと思って」

「こんな……」

カオルさんは言葉を詰まらせると

再びあたしを抱き寄せた。

「最高のプレゼントだよ。ありがとうシノ。

 使うよ。いつも使う」

カオルさんの腕がぎゅうっとあたしを抱きしめる。

あたしはホッとした。良かったと思った。

こうして渡すことができて。

「ごめんね。シノの気持ちも知らずにあの時は

 ひどい事をしたよね。本当にごめん」

「もう。だからそれはもう、いいのに」

「ありがとう。本当に嬉しいよ。大事にする」

「……」

カオルさんの真剣な言葉に

あたしはいよいよ照れてしまった。

嬉しいのは、むしろあたしの方で

けれどそれを言い出すときっと

照れくささの無限ループにハマるから

あたしは黙ってカオルさんの肩に顔を埋める。


「バレンタインか……忘れてたな」

あたしの髪を弄りながらカオルさんは言った。

「もう少し待つんだった」

「……もう、ホントですよ」

あたしはからかうように笑った。

「ホントならチョコだって、あったのに」

「そうだ、チョコ。チョコは?」

「食べちゃった」

「え」

「ヤケ食いしちゃった」

カオルさんはクッと肩を震わせた。

「美味しかった?」

「うん」

「どんなの?」

「なんかね、贅沢なやつ」

「いいな。食べたかった」

「食べてもらいたかったな」 

「じゃ、今度は一緒に食べよう。

 私がシノにプレゼントするよ

 ホワイトデーもある事だし

 贅沢なチョコでもケーキでも

 シノが好きな物なら、なんでも」

「……うん」

「でもね、その前に私がシノを食べる」

「え?」

「チョコを食べた美味しそうなシノを食べる」

「え」

「食べさせて」

「え」

「駄目だなんて言わないよね」

「言わ……ない、けど、でも」

「言わないんだ」

「え? あ、ええと……うん。でも」

「でも、なに?」

「そ、そんなに美味しくはないかも」

「は?」

「だってあたし、その、色々と

 スタイル悪いし胸ないしお腹出てるし

 がっかりさせちゃうかも……ですよ」

「なんだ、そんなコト」

カオルさんはフッと笑うと、キスをしてくれた。

「馬鹿だね。そんなの、気にしなくていいのに」

「でも」

「それにシノのカラダなら、だいたい知ってるよ。

 海でいつも見てたし……可愛いビキニ姿を」

「!」

「美味しそうだなと思って、いつも見てた。

 エロい目で見られてるの、気が付かなかった?」

「き……気が付かなかった、です」

「油断したな」

カオルさんの顔がニヤリと笑った。

「私の目の前を、無防備に

 ビキニ姿でうろつくから」

「だ、って、それは」

「太腿の後ろに、ホクロがあるのも知ってる」

「い!?」

「今日は逃がさないから、覚悟するように」

そんな恐ろしいセリフと共にしてくれたキスは

チョコよりも、ずっと甘くて

多分あたしは自分から逃げるなんて

不可能なんじゃないかと思う。


「でも、困ったな」

力の抜けたあたしを抱きしめながら

カオルさんは言う。

「こんなに可愛いシノを抱いたら

 きっと、二度と手放せなくなる」

「……ダメなの?」

「ん……どうだろうね……」

「……」

優しい手が、ゆっくりと髪を梳いている。

耳元でカオルさんの心臓が、とくとくと鳴るのを

あたしは目を閉じて聞いている。





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