表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第4章 もうひとつのはじまり
66/85

4.フェムタチのアカネさん

暇さえあればサイトにログインして

あたしは常に誰かと絡んでいた。


悲しみの底に沈む事は

まだ、なくなりはしないけれど

おかげで気が紛れる。

もしかしたらこのまま

次に進めるのではないかと

希望を持つようにもなっていた。


けれど友達は出来ても

恋愛対象となると

そう簡単にはいかない。


『どんな人がタイプなの?』

聞かれると、あたしは困った。

元々が異性愛者だから

好みの男性像はあっても

好みの女性像は持っていない。


『ボーイッシュな人がいいの?

 それとも、女らしい人?』

そう聞かれれば、

ボーイッシュな人がよくて

『年上? 年下?』

そう聞かれれば、年上がよくて

『相手は、タチさん限定?』

と聞かれれば、その通りだし


けれどそれは丸々、あの人だった。

似ている人を探している。

身代わりを、探している。

そんな自分はサイテーだと思った。


『仕方ないよナツミちゃん。誰だって

 失恋したらそういうものじゃない?』


そうやっていつも励ましてくれるのは

サイトの常連のアカネさんという人で

色々と詳しくて、この世界では顔も広い。

あたしとは同じ年ということもあって

このところ、特に仲良くしてもらっていた。


アカネさんは比較的、近所に住んでいる。

いつか会う事もあるかもしれないからと

本人の写真を見せてもらった事がある。

清楚で落ち着いた雰囲気の

着物が似合いそうな

正統派な日本美人、という感じだった。


アカネさんは約半年前に恋人と別れ

今は恋人募集中らしい。

ビアンでフェムタチ、と言っていた。

正直なところあたしの頭では

彼女がタチ、というのが

全くもって結びつかないのだけれど

ユッキーのような子もいるし

この世界は本当に分からない。


『わたしも、元カノ似の女の子に

 ついクラッとしちゃうもの』

とアカネさんは言った。

『どうせなら違うタイプの子と

 お付き合いしてみたいと思うけれど』


『どんな人だったの? 元カノさんは』

『そうねぇ……小動物的な感じかしら。

 わたし、構うのが大好きだから

 弱くて守ってあげたい感じの子に

 つい惹かれてしまうの』

『へぇー』

『ふふ。ナツミちゃんの好みとは、正反対ね』

『うん。被らなくて、良いけど』

女性と好みの女性が被ったら

自動的に修羅場になりそうで怖い。


『今、誰か気になる人は、いる?』

『え。いないよ』

『本当?』

『うん』

『あの人は? 中性で、タチの……』


アカネさんが言おうとしているは

同じサイトの中の人だ。

確かにプロフィールだけを見れば

年上で、中性タチで

気にならない訳では、ないけれど。


『一度、会ってみたらいいのに』

『やだよ』

『どうして?』

『どうしてって、言っても』

『向こうも気にしてるみたいなのに』

『でも個人的に会うとかは、だって。

 会ってガッカリとか、あるでしょ』

『ああ……そうね』

『やっぱり、あるんだ』

『そりゃ、あるわよ。

 だけど会わなくちゃ、そうでもしないと

 女同士の出会いなんて、少ないものだし』

アカネさんの言う事は、よく分かる。

普通に生活をしていて

日常で巡り合うのは奇跡に近いかもしれない。


だからこそ専用のSNSを利用しているのだけれど

あたしはリアルに誰かと会う事については

正直なところ、躊躇していた。


その理由をあたしは思い切って

アカネさんに話すことにした。

彼女には不思議と、安心感がある。


『本当のところは、自信ないんだ。

 あたし女の人のこと

 好きかどうか分からない。

 もしかしたら女の人は

 好きじゃないかもしれないし』

『そうなの?』

『うん』

いつも疑問に思っていた事だった。

『だってボーイッシュとか中性的な人が

 好きだって事はさ、それって結局、

 男が好きなのと同じなものかもって』


女性である人を好きになったとはいえ

どこかに男性的な部分を見ていたし

とどのつまり、それはその人の

女性性を否定する事になるのではと

あたしなりに考え、悩んだ事だった。


女らしい女を好きになるならともかく

男らしい女を好きになるというのは

一体、そこに何を求めているのだろうかと

疑問に思わずにはいられなかった。

そんな半端な気持ちでは

知らず知らずのうちに自分は

相手を不快にさせてしまうかもしれない。


『ナツミちゃんたら。ずいぶん

 難しいコト、考えちゃったのね』

『うん』

嫌になるほど、考えた。

フラれた理由を。自分の非を。

これからの自分も。


『健気で可愛い。ナツミちゃん』

『可愛くないよ。だからね

 個人的に会うのが嫌っていうより

 あたし、そういう自分に自信がないから

 わざわざ会ってもらうのは、申し訳なくて』

『ん。そういうこと、ね』

『駄目だよね。そんな風に思うくらいなら

 こういうの、やめればいいって思うけど』

後ろめたさと、すがりたい気持ちと

いつも2つを行き来している。


『大丈夫よ。深く考えすぎよナツミちゃん。

 好きになっちゃえばそんなの

 女も男も、関係ないもの』

『そうなんだけど』


『じゃあ、こうしない?

 今度、一緒にクラブイベントに行くの』

『クラブイベント……?』

『そう。いきなり1対1とかオフ会とかじゃ

 気が引けちゃうものね』

『ちょっと待って。クラブイベントって

 どんなの?』

『普通のクラブと同じよ。音楽かけて踊って

 ちょっとしたショーをやったり。

 ただ全員が女性の、ビアンイベントね。

 とりあえずそこで、いろんな人を見て

 適当に楽しんでみるっていうのは、どう?』


イベントの詳細はホームページがあるからと

アドレスを教えてもらって、見た。

そこにはいくつか画像も載っている。

本当に女だらけのパーティー。


『考えていても、答えは出ないし

 パーッと遊びましょうよ』

日付は10日後に迫っている。

『行ってみる?』

『……うん』






 
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ