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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第4章 もうひとつのはじまり
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3.迷子のナツミ、バイセクシャル(?)

新しい恋。ユッキーの言葉に

あたしは動かされた。


自分が再び同性を好きになるかどうか

それは分からない。けれど

もし他の女性に恋をする可能性が

自分にあるのだとしたら

その可能性を確かめてみたいと思った。


カオルさんという存在だけが

自分にとって唯一無二の

特別な女性だった、と認めることは

あたしにはどうしてもできなかった。

もしそうなのだとしたら、この結末は

あまりにも惨めで残酷すぎる。


たった1人の女性への恋は

この先、何人の男性に恋をしたとしても

忘れる事も叶わずに、その喪失感は永遠に

痛みを放ち続けるに違いない。

そんなのには耐えられないと思った。


目には目を

歯には歯を

失恋には

新しい恋を。


苦しみから逃れたい一心だった。

あたしは少し

おかしくなっていたのかもしれない。



あたしはインターネットで色々と調べて

1つのサイトに登録をすることにした。

レズビアンまたはバイセクシャルのための

女性専用のSNSで、ブログを書いたり

ツイッターのように呟いたりして

自由に交流することができる。

同じ仲間の友達を作り、あわよくば

新しい出会いも、と考えての事だった。


初めてのことで、不安はあったけれど

あたしはこの事をユッキーに話さなかった。

いま彼女に頼る訳には、いかなかった。

引越しなどで忙しいだろうし、

何よりユッキーには

あの人の姿がちらついてしまう。

知られたくなかった。


サイトの中のあたしは実名を伏せ、

適当に考えた名前で

ナツミ、と名乗った。


ナツミ 30歳 バイセクシャル(ネコ)

それがあたしのプロフィールになった。

まるで別人だなと思った。


登録したものの、あたしはこの世界、

つまりセクシャルマイノリティの世界では

ほとんど初心者だから

何をどう書いていいのか分からず

最初のうちは、ただ読んでいるだけだった。


それに、ある意味、怖かった。

バイセクシャルなのかどうかも分からない、

中途半端な身分で、そこに存在するのは

ルール違反なのではないかと思い

受け入れてもらえないのではないかと

不安だった。


けれどこの世界は驚くほど寛容だった。

中途半端な自分に不安を抱えるナツミに

こう言ってくれた人がいる。

『最初から自分が何か、なんて

 はっきり答えが出る人はいないよ。

 誰でも最初は迷いながらだから、大丈夫』


目を開かれる思いがした。今まで

マイノリティの世界は狭いと思ったけれど

むしろその懐はマジョリティの世界よりも

深く、開けているのかもしれない。


おかげでそんなナツミにも

何人かの友達ができるようになった

もちろんネット上だけの話で

会うことも顔を見ることもない。

でもだからこそ、話せることがあった。


『ナツミさんの元カノさんは

 どんな人だったの?』

『ナツミさんはいつから

 女性を好きになったの?』

『どうして、別れちゃったの?』


聞かれるたびに、あたしは少しづつ

自分の想いを吐き出せるようになった。


初めて、人に話したと思った。

ずっと凍りついていた心が少しずつ

溶けていくような気がする。


ある時、こんな励ましの言葉ももらった。

『失恋、辛いですよね。

 私も同じような経験をしたから

 すごくすごく、よく分かります。

 今は苦しいだろうけど

 時間はかかるかもしれないけど

 でもいつかきっと癒える時がきますよ。

 頑張ってください』


あたしは胸を打たれた。

なんて優しいのだろうと思った。

なんて、心に響くのだろうと思った。


文章そのものは

世の中によくある、ありきたりな

励ましの言葉かもしれなかった。

けれど失恋の相手が同性であるという

同じ立場の人のその言葉は

特別なものとなって、心に深く浸透する。


彼女たちと関わることは

あたしにとって、救いになった。

それまで何をしても

癒えることのなかった苦しみが

彼女たちとの言葉のやりとりで

ほんの一時でも、緩和される。


ようやく落ち着ける自分の居場所を

見つけたような気さえして

いつしかあたしは

そこに依存するようになっていった。







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