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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第2章 彼女のカノジョ
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16.どうして欲しいと思うんだろう

酔いが回ったあたしとユッキーは

何だか楽しくなって

陽気に話し続けていた。


カオルさんは酔っても

あまり変わらない。

あたしたち二人のやりとりを

面白そうに眺めながら、飲んでいる。


不倫や元カノさんの話は

とうに終わっていた。

今はユッキーの夜のお仕事の

面白おかしい話題が中心になっている。


ユッキーはホステスとしても

かなり人気があるようだった。


当然だと思う。

ユッキーは、可愛い。


けれどあたしは目の前のユッキーが

どんなに可愛くても、色っぽくても

恋愛対象にはならないのだから

それが不思議と言えば、不思議だった。


同じ女性なのに、どうして

テーブルの向こうのカオルさんだけが

あたしにとって、特別なんだろう。


もしかしたら自分は、他の女性にも

魅力を感じるのではと思って

最近はそういう目で

女性を見ていたりするのだけれど

カオルさん以外の人に惹かれる事は

今のところ、全くない。


元はと言えば、カオルさんは

あたしの憧れの人だったのだから

その時点で特別だったと言えば

そうなのだけれど、

けれどもう、憧れだけでは

すまなくなってきている。


髪をかき上げる仕草を見ては

その髪に触れたいと思うし


グラスを持つ手を見ては

その手に、触れて欲しいと思うし


少し伸びた襟足を見ては

首筋のあの

甘い匂いを嗅ぎたいと思う。


今までに抱いた事のない欲求が

明らかに自分の中に生まれていて

あたしはそれを持て余してしまう。


今まで、男性に対してでも

そこまで思った事は無かったように思う。


カオルさんだから、なのか

カオルさんが女性だから、なのか。


「ところでユッキー、お風呂は?」

カオルさんが時計を見上げながら言った。

「ん、あとで借りるー」

ユッキーはコタツと一体化している。


「シノは?」

「あたしは、いいです。家で済ませてきたから」


「じゃあユッキー、そろそろ入りなよ」

「やだー。もうちょっとあとでー」


「だめ。あんまり酔い過ぎないうちに」

「まだまだ飲み足りない」

「あとで、ゆっくり飲めばいいから」

「ちぇ」


ユッキーは重い腰を上げると

ごそごそと荷物から着換えを取り出して

お風呂場へと向かって行った。


あっさり2人きりになっちゃった、と思った。

思ってあたしは、急にドキドキした。


カオルさんがビールの空き缶を

両手に持って、立ち上がる。

「よし。じゃ少し片付けとくかな」


あたしも慌てて立ち上がった。

「手伝います」

コタツの上の、空いた皿をかき集めて

カオルさんのあとについて

あたしもキッチンへ向かう。


「洗い物はいいよ、そこ置いといて。

 ここ古いから、お風呂使ってると

 お湯の出が悪いんだよね」

カオルさんは空き缶をすすいでいる。


「はーい。じゃあ置いときまーす」

あたしは流し台の上に食器を置きながら

すぐ隣のカオルさんを見上げた。


「なに?」

「別に、なんでも……」

いつの間にか、あたしの顔は

勝手に緩み、ニタニタと笑っていた。


さっきまでコタツの向こう側にいたので

そばに寄れたことが、単純に嬉しい。


横からあたしを見下ろして

カオルさんが、クスリと笑った。

「そんな、赤い顔して」

「赤いですか?」

「けっこう飲んだね」


カオルさんは濡れた手を、タオルで拭くと

そうするのが

まるで当たり前だったかのように

あたしの火照った頬に、手を添えた。


ひんやりと冷たい

カオルさんの手。


このシュチエーション、いつものあたしなら

照れてどうにかなりそうなところだけれど

普段よりも酔っているおかげで

あたしはポーッと、カオルさんの顔を見ていた。


カオルさんは少し怒ったように

顔をしかめて笑った。

「可愛い顔して。まったく」

そう言うと、高い背を屈めた。


あたしは嬉しかった。

きっとそうされるのを、待っていた。


ゆっくりと近づくカオルさんに向かって

あたしは少し顔を上げて、目を閉じる。


柔らかい唇が降りた時、

あたしの全身の血液は、歓喜で波立ち

甘苦しい切なさが

喉元にこみ上げてきた。


どうしよう、もう。

好きだ。

あたしカオルさんが

ものすごく好きだ。



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