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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第2章 彼女のカノジョ
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12.どうしようもない愚かさ

祖母の手術の日取りが決まり

準備は着々と進んだ。


とは言っても、あたしは何もしていなかった。

両親や叔母たち、それに

あたしより家の近い姉夫婦が

諸々の世話をしてくれていた。


手術をするまでは

全身状態は安定しているので

今は特に心配するようなことはなかった。


だから、というわけでも

ないわけでもないのだけれど

祖母の手術を二日後に控えた、

その週の初め、月曜日。

あたしは予定通り

カオルさんの元へ行く事にした。


遊んでいるヒマがあるのなら

祖母に顔でも見せたらどうだ、と

もしその事実を知れば、

あたしの家族は怒るだろう。


罪悪感がないわけではなかった。

手術を控えて不安な祖母と、家族たち。

そこへ行かなければと思いながらも、

でも、それでも、今のあたしにとっては

カオルさんを想う自分自身の方が

大切だった。


後々になって思えば、それがどんなに

幼稚で愚かな、自己中心的な考えだったか

痛いほど悔やむ時がやって来る。

今この時には、分からないのだけれど。



カオルさんに、諸々の事情を説明すると

『無理して来なくてもいいよ』 と

いつものように、そっけない返事が返ってきた。


カオルさんは、会うとそうでもないのだけれど

LINEなどの文字になると、いつもそっけない。

絵文字やスタンプだって、ほとんどない。

こういう部分は男性的なのかなと思う。


”無理するんじゃないんです、

 あたしが会いたいから、行くんです”


思い切ってそう伝えようと

LINE画面に打ち始めたところに

『その日、ユッキーも泊まりに来るし』

と、思わぬ文章が入ってきた。


あたしは打ちかけていた文章を消した。

『ユッキーが?』 と入れ直す。


ユッキーには悪いけれど

あたしはこの時、明らかに落胆していた。

カオルさんと、二人きりにはなれないんだ。


『なんかその日、ユッキーが

 元カノとの事で、色々あるみたいでさ』

『元カノさんと?』

『そう。だから夜は一人でいたくないって。

 事情はシノにも話すつもりでいるみたいだから

 その時に、聞いてやってよ』


ユッキーの……元カノ。

そういえばと、あたしは思い出した。

ユッキーがいつだったか

元カノについて語った時に

あの明るい顔に、影を落としたことを。


あたしは単純に

ユッキーに会えるのが楽しみになった。

彼女がどんな人を好きになり

どんな恋愛をしていたのか

とても興味があったからだ。


それに何か苦しみを抱えているのなら

精一杯、聞いてあげたいと思う。

あの明るさの陰にある、彼女の弱さを

あたしは知っているような気もして

辛いことがあるのなら

寄り添ってあげたいと、心から思った。


けれど、それとは裏腹に

よりにもよって、こんな時にと

タイミングの悪さを呪ったのも事実だった。


本当はカオルさんと2人きりで

ゆっくり過ごしたかった。


抱きしめてもらいたかった。

もう一度、キスマークを

消えないようにつけてもらいたかった。


悪気はなくとも、思わずその二つを

天秤に載せていた自分に気付いて

あたしは宙に向かって細く、長いため息を吐いた。



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