4.バカップル
日もすっかり落ちて、暗くなった頃、
あたしはカオルさんのアパートに行った。
仕事終わりのカオルさんは、帰宅してすぐに
夕飯の準備を始めていてくれた。
明日はあたしが、朝6時からの仕事で
しかもそのあと、夜勤入りなので
あまりゆっくりはしていられないからだ。
「だから今日は、手抜きだけど」
そう言いながらも、カオルさんは
前日から作り置きしておいてくれた肉じゃがと、
焼き鮭、小松菜のおひたしに、具だくさんのお味噌汁、
それに鶏ときのこの炊き込みご飯を出してくれた。
相変わらず普段ジャンクな食生活のあたしは
純和風の食卓に感激した。
特にカオルさんの作った肉じゃがは
今までに食べたどの肉じゃがよりも
最高に美味しかった。
「何時に帰る?」
ご飯の代わりに焼酎を飲んでいるカオルさんが聞く。
あたしは味噌汁のお椀を手に
壁の時計をちらりと見た。7時半をさしている。
「遅くても……10時くらいには」
車で2時間かかる事を思うと
それが限界だった。
「大変なのに、ありがとね」
「とんでもないです。
こんなに美味しいゴハンが食べられるなら、全然」
手にした味噌汁には牛蒡や、冬瓜まで入っている。
あたしだったら絶対に調理しないものだった。
「ゴハンのためだけ?」
カオルさんが笑った。
「そんなわけ……ないけど
でもゴハンは、最高に美味しいです」
ふ、とカオルさんは微笑んだ。
「今度は、私がシノの所へ遊びに行くよ」
「え? 駄目ですよ、ウチなんて」
「なんで」
カオルさんは意外にも可愛い顔で、ムッとする。
「だって、海ないですもん。カオルさん、つまんないですよ?」
「あのねぇ。どれだけ私がサーフィンバカだと」
「だってあたしも、サーフィンバカだし」
言って、二人とも笑った。
「じゃ真冬、波のない時に遊びに来てください」
「そうだね。シノの家の方には、ビアンバーもあるし。
今度、一緒に行こう」
「ビアンバー? あたしも?」
「そ。シノが彼女だって、自慢したい」
「でもあたし……ビアンじゃないのに」
「私の彼女がシノなんだから。大丈夫」
レズビアンバー。
行ってみたいと思った。
「いいですね。いつか連れてってください」
「もちろん」
好奇心もあるけれど、それより何より
あたしの恋人がカオルさんだと
公言できる場があることが嬉しいと思った。
実はノロケたいのだ。
カオルさんがどんなに素敵な人で
あたしがどんなに惚れているか。
ノロケたい欲求が常にくすぶっている。
「あたしも……カオルさんを自慢したいな」
言ってしまってから、照れた。
これではいい歳をした、バカップルだ。
カオルさんは、口元を緩めた。
「早くご飯、食べて。時間ないんだから」
「? はい」
「いちゃいちゃしないと、ね」
「――」
ご飯はあと、お茶碗に半分残っている。
あまりに美味しいので
おかわりをしようかと思っていたけれど
急にノドのあたりが詰まるような気がした。




