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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第2章 彼女のカノジョ
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3.分かること、分からないこと

数日前のLINEで、カオルさんは

自分のセクシュアリティについて話してくれた。

2人が付き合っていく上で

それは大切な話だった。


ひとことで同性愛者、といっても

その中身はとても複雑で

人それぞれに様々なタイプがある。


例えばユッキーは、元々は異性愛者だったけれど

初めての彼女をきっかけに

バイであることを自認したと言っていた。


もともと女性が恋愛対象である人もいれば

何かをきっかけに、変わる人もいる。

同性しか愛せない人もいれば

ユッキーのように性別を問わない人もいる。


中にはFTMと言って

身体的には女性で、性自認が男性の人もいる。

外見では同性愛者に見えても

本質的には異性愛者であることもある。


カオルさん自身はというと

同性を好きになるのは生まれつきのことで

かつ、中身は限りなく男に近いと言った。


限りなくオトコ。

それを聞いてなるほど、と思った。


カオルさんを知れば知るほど

男性的な部分が多い気はしていた。


気が付けば、あたしはカオルさんの事を

女性としてというよりも

男性として見ているのでは、と思う事がある。


『カオルさんは、FTMとは違うんですか?』

あたしの率直な疑問に、カオルさんはこう答えてくれた。


『私の場合は、そこまでじゃないよ。

 男になりたいと、本気で思ってた時期もあったけど

 なれないって諦めもついたし。

 女としても、なんとか折り合いをつけてこられたからね』 


あたしはさらに突っ込んで聞いた。

『でも、そこまで (FTM) じゃなくても

 中身は女じゃなくて、男なんですか?

 女性を好きになるのは、男として? 

 それとも、女として?』


あたしは知りたいと思った。

カオルさんの本質がどこにあるのか。


『うーん、どうかな。

 気持ちとしては男だけど、でも、女でもあるからね。

 たぶん両方なんじゃないかな』


両方。

最も分かりにくい答えだった。

いっそのこと、中身はオトコです、と言われた方が

あたし的には理解しやすい気がしたけれど

それほど簡単にはいかないみたいだった。


あたしはもう一つ質問をした。

『同じ女でも、その、女の人に頼られたりとか

 甘えられたりとかっていうのも、大丈夫なんですか?』

例えばあたしがこの先、甘えたりしてしまっても。


『もちろん。甘えて欲しいし、頼ってももらいたい』 

『でも、同じ女なのに。迷惑になりません?』

『まさか。そういう意味では

 私を男として、見てくれていいから』


そう聞いて、あたしは少しほっとした。

女同士であっても、恋愛のスタイルは

何も変わらないでいいみたいだった。


『ただ、一つだけ分かってもらいたい事がある』

この話の最後に、カオルさんは言った。

『私がバリタチだっていうのは

 ユッキーから聞いたと思うけど』

『……聞きました』


『タチでも、色々あるんだけど私の場合は

 女の自分の体が、好きじゃない。

 男になりたいと思ってたくらいだからね。

 胸なんてなければいいのにと思ってる。

 だからSEXの時でも、裸にはなりたくないし

 女の部分には触られたくない。

 相手が、たとえシノでも。

 それだけは分かっていてほしい』




午後のあたしは、車の中で

ゴロゴロと身体を休めながら

その事について考えていた。


裸にはなりたくないし

触られたくない。


そういう人もいるのだということは

あたしは既に、ネットの様々なところで見ていたし

だから特に、疑問には思わず

カオルさんがそうだと言うのなら、そうで

その通りにするつもりだった。


むしろ、あたしにとってそれは都合が良かった。

同性とのSEXのハードルは

おかげで、だいぶ低くなるような気がする。

……何もしなくても、いいわけだから。


でも、だからこそ理解できないことがあった。

根本的に謎な部分が、どうしてもあった。


カオルさんは、自分が触られることもないのに

つまり、気持ちいいこともないのに

どうして女性を抱きたいと思うのだろう?


そもそも、身体は同じ女性であって

男性のような生理的欲求があるわけではないのに

どうして、それと似たような性欲があるのだろう。


――食べちゃうからね。

ニヤリと笑ったカオルさんを思い出した。


「食べるって……言ったって、さ」

あたしは独り言を呟きながら

車の隅に置いてあった毛布の中に

顔をうずめた。



*FTM=Female to Maleの略。

 身体的には女性であるが性自認が男性。性同一性障害


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