23.伝えたいこと
普段からジャンクな食生活を送るあたしに
カオルさんの手料理は身に沁みた。
野菜がふんだんに使われていて
味付けはシンプルなのに、とても美味しい。
ドレッシングまでが手作りで
あたしは感動しながら、モリモリと食べた。
「小さいのによく食べるね」 と
カオルさんが笑った。
食事をしながら、ワインを飲みながら
2人でサーフィンの話をたくさんした。
偶然にも、カオルさんもあたしもサーフィンで
何度かインドネシアのバリ島に行ったことがあった。
カオルさんはパソコンで画像を見せてくれながら
色々な話をしてくれた。
あたしも行った事のある同じ場所があると
その話で,とても盛り上がった。
「あ、ここのマック懐かしい」
とあるマクドナルドの店舗の前には
サーフィンの街らしく、マクドナルドのキャラクターが
波に乗っている。
「ここで絶対、写真撮りますよね」
「撮ってるし」
「あ、ここも」
とあるバーの路地には、波のチューブを模した壁。
そこをくぐるようにサーフボードがつけられていて
カオルさんは笑顔で、その上に立っていた。
あたしも同じような写真を持っている。
「ベタなところはちゃんと、ね」
「ですよね」
他にも美味しそうな料理や、きれいな波の写真
見ていて飽きない楽しいものがたくさんあった。
カオルさんの言った通り、元々のカオルさんは
ずっと髪は短かったようだった。
若い頃の表情は,今よりも鋭い感じで
ドキリとするほど……イケメンだった。
見ようによっては本当に、男にも見える。
こんなカオルさんと一緒に笑っている
他の人たちが羨ましいと、あたしは心底思った。
もっと早くに出会っていたらと思う。
もっと違う形で出会っていたらと思う。
パソコンをのぞき込もうとして不意に近づくと
カオルさんから、カオルさんの匂いがした。
「……シノ」
「……はい?」
「次、何飲む?」
気が付けばワインのボトルは1本無くなっていた。
「ええと……じゃ、焼酎にしよっかな……」
「ん」
カオルさんはスクッと立ち上がってキッチンに向かった。
「水割りでいい?」
「……ロックで、お願いします」
「はいよ」
カオルさんがグラスを手にソファに戻った時
あたしは意を決して、座り直した。
ぐびりとアルコールを喉に流し込んで。
「あの、カオルさん。この前の、話なんですけど」
ちらとソファに座るカオルさんを見上げると
カオルさんは何? というように眉を上げた。
「やっぱり、駄目だった?」
「あ……」
「いいよ。無理なものは、仕方ないし」
カオルさんは口の端を上げた。
「ゴメンね。もう気にしないで、いいから」
「……」
「ありがと」
この話はもう終わり、とでも言うように
カオルさんはリモコンでテレビの電源を入れた。
静かだった部屋が、突然騒がしくなる。
あたしは呆然とした。
この話がこんな風に、呆気なく終わってしまうなんて。
結論としては同じはずなのに
釈然としなかった。
「シノ、どうした? 眉間にシワが寄ってる」
「だって……」
カオルさんは困ったような顔をした。
「じゃあ……付き合える? 私と」
「それは――」
「うん。だから、分かってるから」
あたしの眉間のシワはますます深くなった。
カオルさんは、苦笑する。
「だからなんで、そんな顔するの」
「だってすごく……悩んだのに」
「うん」
「カオルさんは……
分かってなんかないです」
「シノ?」
「だって。あたしがどれほど――」
ドレホドカオルサンガ、スキカ。




