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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第1章 はじまりのはじまり
15/85

15.友情と似たもの

カオルさんにもらったボーを持って海に行った。

新しいボードに乗るのは、いつだってワクワクする。


いつものように車の中で目を覚ますと

カオルさんはすでに海に中にいた。

あたしは手早く着替えをすませ、ボードを持って海岸へ下りる。


ひんやりと冷たい砂が、足の裏に心地良い。

砂浜に腰を下ろし、ストレッチをしながら海の様子を眺めた。


冬を思わせる、冷たい北風が吹き

弱い日差しが海面をキラキラと輝かせている。

その中にカオルさんはいた。

ピンと伸びた背筋が、沖のウネリを見つめている。


あれから1週間ぶりだった。

何も変わらない海の光景が広がっているけれど

同じではないようにあたしには見えた。


沖へ出るとカオルさんがあたしを見つけた。

「おはよ、シノ。今日は寝坊しなかったね」

カオルさんが微笑むと、あたしはつい前髪が気になる。

「ボード、早速使わせてもらってます」

「どう? 大丈夫?」

「はい。まだ分かんないですけど、違和感ないです」

「そう。よかった」


いつもと変わらないカオルさん。

あたしは安心した。


「今日ユッキーが午後から来るそうですけど

 カオルさん仕事ですよね」

「え。ユッキー来るって? 珍しい」

「そうなんですか?」

「平日はね。いつも日曜しか顔出さないから」

「そっか。仕事の都合とか、ありますもんね」

「……」

「でもこの調子だと、午後には波無くなっちゃうかもですねー」


陸から吹く北風は、波をおさえてしまうので

風の強まる午後の波乗りは出来なくなるかもしれなかった。


「ね、シノ。明日は仕事? 朝早い?」

「明日ですか? 仕事ですけど。夕方から」

「じゃ、今日の夕飯、一緒にどう?5時には終わるから」

「え……いいですね! じゃあ終わるまで待ってますよ」

「よし、決まり。終わったらすぐに連絡する」


あたしの心は弾んだ。思わぬお誘いだった。

今までランチはあっても、夕飯まで一緒にすることはなかった。

いつもあたしは2時間かけて家に帰らなければならなかったし

そもそも、そこまでの仲ではなかった。


あたしは単純に嬉しかった。

例の話のおかげなのかもしれないけど

どんな形にしろ、カオルさんと親しくなれるのは嬉しい。


もしかしたらあたしは友達に飢えているのかもしれない。

仲の良かった友達たちは、みな結婚して

心も、住む場所も遠くなってしまった。

いつか自分もそっち側に行くのだろうと思いながらも

彼女たちとの距離は開いていく一方だった。



先日も古い友人から連絡があった。

新居に引っ越したから遊びに来ないかと言うので

久しぶりに会いに行ってみたけれど

あたしは正直、行った事を後悔した。


相変わらずシノは変わらないね、という言葉とは真逆に

彼女は変わり過ぎていた。

話すことはこれから生まれてくる子供の話ばかりだった。


あたしが間違っているんだと思う。

彼女らの変化を受け入れられない自分の方が

間違っている。けれど自分では、どうしようもできなかった。


そんな時に現れたカオルさんの存在が

自分にとって大きくなってしまうのも無理はないと思った。


友情はSEXのない恋愛だと誰かが言っていたけど

あたしはそれに少なからず共感を覚えてしまう。



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