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Life is choice.  作者: 小野田ラコ
第1章 はじまりのはじまり
12/85

12.そーゆー意味とは

ビアンバーの話を聞いていたら、

あっという間に1時間くらいが過ぎていた。


あたしはこの後まだ、予定がある事になっていたので

(それは嘘だったけど引っ込みがつかなくなっていた)

まだ話し足りない雰囲気ではあったけれど

3人とも店を出る事にした。


ユッキーは、これからも仲良くしようねと言って

あたしと連絡先を交換してくれた。


ユッキーが先に駐車場を出ていくと

カオルさんは自分の車から

一枚のサーフボードを取り出してきた。


「実は今日はこれを、シノに渡したくて」

「あたしに……?」


それは赤いラインが周りに入ってる、

きれいなサーフボードだった。

有名なシェイパーのロゴが入っている。


「だいぶ前に大会の賞品で貰ったんだけど。

 私には少し小さいんだよね。

 シノならちょうどいいと思うから、良かったら使って」

「そんな!」


カオルさんはそのサーフボードを、あたしにくれると言う。

突然の事で驚いたのは勿論だけれど

とてもそんなものを頂く訳にはいかなかった。

あたしは首を振った。


「遠慮しないで。私が持ってても、どうせ使わないから」

「でも」

「いいのいいの。それにうちにはまだ他のもあって

 置き場もないから貰ってくれると、正直助かる」


グイッと目の前に差し出されたサーフボード。

あたしは恐る恐る手を伸ばした。

「いいんですか……ほんとに?」

「いいよ。新品じゃなくて悪いけど

 でもほとんど使ってないから」


あたしは手にしたそれを、うっとりと眺めた。

「本当にいいんですか。本当に?」

「いいから。受け取って」


それでもかなり躊躇したけれど

結局は貰う事になった。

「嬉しい……!」

あたしは両手に抱えてはしゃいだ。

「こんなのが欲しいって、前から思ってたんです」

カオルさんは微笑んだ。

「よかった。気に入ってもらえて」

サーフボードを持って飛び跳ねる事は出来ないけど

飛び跳ねまわりたいくらいの気持ちだった。


言っても言っても足りないくらいのお礼を言いながら

あたしがサーフボードを大切に車に積み込んでいると

カオルさんがあたしのお礼の言葉を遮るように言った。


「じゃあソレ、今日のお詫びってコトにしといてよ」

「お詫びって?」

よく見るとカオルさんの笑顔にはまだ

不安が混ざっているように見えた。


「いきなりで、ごめんね」

「やめてくださいよ、お詫びだなんて。もう」

「でも正直、引かなかった? 大丈夫?」

「あたしがですか? とんでもない!」


そんな事であたしが、と思う。

「あたし……それよりあたしの方が

 カオルさんに避けられてるんじゃないかと

 不安になったくらいだったのに」

思わず口にしてしまった。

「そんな事で引いたりしませんよ」


今度はカオルさんが驚いたように目を開いた。

「え? 避ける? 私が?」

「そうです」

「シノを? なんで。まさか」

「だってLINEとか、なんかそっけない感じでしたもん」

「うそ」

「ほんと」

……あたし、拗ねてるなぁ。


「そんなつもりは全くなかったけど……」

「あ、だから気のせいだったら全然、いいんです。

 ただそんくらい、あたしは」

「あーでも、あったかもなぁ」

「えっ?」


「違う、避けたいとかじゃなくて。さっきのハナシ。

 アレ、どうしようかちょっと悩んでた部分はあった」

「……話すか、話さないかってコトですか?」

「まぁ、そんなトコ」

「そうだったんですか……」

あたしは拗ねた自分を少し反省した。


「シノを避けたりなんて、しないよ」

カオルさんの優しい口調に、あたしは少し照れる。

「シノが、私を避けるのなら、ともかくね」

「そんな!」

見上げるといつの間にかカオルさんの顔は笑っていた。

「もう。カオルさんたら」


カオルさんは笑いながら、腕を組み首を傾げた。

「避けられてるかと、不安になってくれたんだ?」

「え? あ、でももう、それは」

「可愛いね、シノは」

「へ?」

カオルさんの顔が意地悪く光る。

「だからシノは可愛い。 ”そーゆー” 意味で」

カオルさんの口元がニヤリと笑った。


あたしの心臓が勝手にドクンと鳴った。

この場合の、 ”そーゆー” 意味とは

一体……


今日は早く帰る事にしておいてよかった。

とにかく頭ン中を整理整頓しなくては!



*シェイパー……サーフボードを作る人のこと。

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