ハーレムが当たり前だとホモが増殖するよな
男子なら一度は夢見るのがハーレム。
ツンデレに幼馴染、お姉さんに妹、ネコ耳娘にお姫様!
いや、幼女も捨てがたいしめがねっ子もいい。
おっぱいが大きくてウエストはきゅっとしまり、俺のことが大好き。
そんな、何があったって俺の味方の、俺だけのために生きてくれる女達。
美女を引き連れ冒険し、魔王を倒して世界を救い、栄誉を手にして美酒に酔う。
俺もそういう状況にあこがれる男子高校生だった。
それが何が原因か思い出せないが死んで、好きな世界に転生させてやるって神様っぽい存在に
言われたらさ、異世界行くだろ。
魔物がはびこる、中世風ファンタジー世界でお願いします!って言うだろ。
だが、今になって思う。
あいつは神様なんて存在じゃあなくて、悪魔だったのかもしれない。
いや、どっちだったとしても、「それ」を願ったのは俺だ。
だから、悪いのは俺なんだけどな。
うん、全部俺の責任なんだけどな!!
考えてもみろよ。
ここに、100人ずつ男女がいるとするだろ?
一夫一婦制なら、計算上は男女は全員相手がいる。
もちろん現実ではそううまくはいかないけれど、少なくとも計算上は余る男はいない。
それがハーレムが当たり前の世界だとどうなるか?
例えば、男は10人の妻を持てるとする。
そうしたら、100人の男のうち10人しか妻帯できないんだよ!
残り90人は結婚できないんだよ!!!
妻の上限を5人にしたって、結婚できる男はたったの20人だけだ!
さて、そんな世界で女の子が俺のような男を選んでくれるだろうか。
日本に生きていた頃、俺はなんの特徴もないふっつ~~~~の男子高校生だった。
成績は中の中、運動は出来ないわけじゃないけど得意ってほどでもない。
アニメ・漫画が好きで若干オタク寄りだが、ディープな沼にはまったオタクってわけでもない。
不特定多数、群集に埋もれる平凡な高校生。
それが俺だ。
最初は転生チートktkr!!とか思ってたさ。
だがしかし。
そう、しかし、なのだ。
全国模試で中の中の成績しか取れなかったやつが、転生して神童になれると思うか?
使っている言語はそもそも全く違う。
歴史?
地理?
一から覚えなおしだから、転生関係ねぇよ?
数学……苦手だった。
あぁうん、俺ってやっぱいいところねぇわ。
そういえば、転生だけど俺は赤ん坊の頃はただの赤子だった。
その頃の記憶はひどく曖昧で、両親に聞いてみたがなんの特徴もない乳を飲んでウンチをして泣いて眠る、ただの新生児だったらしい。
記憶が鮮明になって、「やったー俺本当に転生したんだ!」って喜んだのは5つか6つの頃だったと思う。
子供の頃はそのせいで大人びている、と周りから見られていた。
だがしかし、既にある程度の「完成品」だった俺に伸びしろなんてありはしない。
身体能力は他の子と同じで、つまり平均値だ。
この世界は魔法が存在するが、子供の頃から鍛え続けて魔力チート……なんてことにはならなかった。
俺には魔力があるが、使えば使うほど能力限界値が伸びるなんてゲームみたいなことがあるわけないだろ。
魔力値は、精神と身体の能力により左右される。
つまり、俺はせいぜい中の上くらいの魔力しか持っていない。
平凡な俺にある日ドラマティックな出会いが……なんてこともなかった。
初々しいお姫様が悪の手に追われて辺境の村にたどり着いてそこで出会う、なんてことは起きないし、村の聖域に勇者の剣が奉じられていてなぜか俺にだけその剣が操れる……なんてイベントは起きなかった。
つまり、三つ子の魂百までということわざの通り、俺は転生を経験してもその魂の形が変わることもなかった。
魔物がいて魔法があり、騎士が活躍するファンタジーな世界だけれど、人の在り様は地球と変わらない。
女の子だって、そうだ。
つまり、イケメンが好きだし、狩りが上手いようなスポーツマン系の男がモテるし、でなきゃ金を持っているような男がいいのだ。
俺か。
俺はモテる条件なんて一つもクリアしていないよ。
この世界は自由恋愛なんてない。
結婚前に、男とつきあうなんてふしだらな真似をする風習はないのだ。
男は女性の両親に持参金を渡して結婚を申し込む。
まぁ金のない男でも女の子のほうが好いてたら結婚できることもあるけど、それだって見所のない男との結婚を親が許すはずもないわな。
そんな訳で、俺は絶賛彼女いない暦=年齢を更新している。
というか、前世の分もあるから実際は彼女いない暦=年齢×2だ。
切なくてもう涙も出ない。
そして忘れてはいけない。
この男どもの【夢の楽園】、ハーレム世界には俺以上にDT男が氾濫している。
そういった男の中には血迷って、「もう男でもいっか!!!」となる奴がいるのだ。
というか、この世界では男色も奨励されている。
男同士の愛!
それこそが至高!!!みたいなのが。
多分、女を得られない男達の不満をそうやって逸らしているんだろうと思う。オェッ。
俺は女の子には見向きもされない。
背はちょうど平均身長くらい。
押しが弱いし優柔不断だ。
女の子はちょっと強引なくらいの男のほうが好きだっていうしな。
長所としては、料理はうまい。
あと、良く気がつくって言われる。
母が俺の幼い頃に亡くなっているので、掃除・洗濯もできる。
この辺は、転生してから得たスキルだ。
地球にいた頃は母ちゃんの苦労なんて思いもよらなかったけど、主婦ってすげぇって見直した。
で、な。
それで、な?
ホモな男にも好みのタイプってあるんだよ。
勿論個人の趣向もあるから一概には言えないけど、でもやっぱ理想とか、色々、な。
あーーーーーーーうん。
「ショウ!!」
呼び止められて、思わず振り返った。
黒髪の男が走りよってきた。
「ショウ、今帰りなのか、一緒に帰ろう!!」
「ダイン、訓練終わったのか? いいよ、帰ろうぜ」
「フフッ今日はついている、ショウに会えたからな!」
「はぁ、何言っちゃってんのお前。別に嬉しがるほどのことでもないだろ」
「いいや、俺はショウといられれば他に何も要らないし」
ヒィ!!
「ショウ」
いきなり肩を捕まれて、無理やりダインに向き合わされた。
「こないだの返事、ずっと待っていたんだ。聞かせてくれ」
黒髪の下の黒い瞳が、真摯に俺を見詰めてくる。
「あのさ……、お前村でも色んな女の子に告白されてたじゃないか。
だからさ、なんか勘違いしちゃってんだよ」
「勘違いなんかじゃない!」
ダインが吼えた。
「俺は、ショウがいい、ショウが好きなんだ!」
ギャァァアアアアアアアこいつ言いやがった!!
俺は思わず、手に持っていた魔法書の角でダインの頭を強打した。
そして慌てて逃げ出す。
ダインは、同じ村で生まれ、家も三軒隣の幼馴染だ。
子供の頃俺は今よりずっとちびっちゃくて、女の子からも苛められてて、いっつもダインが守ってくれた。
なんの偶然か俺がこの魔術学園に進学が決まったとき、あいつは隣に建つ騎士学園への入学を果たす。
もちろん、俺みたいな棚ぼたラッキーじゃなくて実力だ。
貴族なんて押しのけて、学年でも三本の指に入るほどの実力の持ち主で、最近はダインを婿にもらおうと画策してる貴族までいるくらいだ。
つまり、もう、女の子にはモテモテ超リア充の鑑みたいな奴だった。
俺のことを好きだとかトチ狂ったことを言い出す前は。
「おや、ショウ君どうしたんだい。そんなに慌ててると転ぶよ?」
いきなり声をかけられて思わず足がもつれた。
やべぇ、転ぶ!と思って目をつぶったが、いつまでも衝撃がこない。
それどころか柔らかいなにかにぽふっと抱き込まれた。
目をあけると、超ドアップのイケメンフェイス。
「フフフ子猫ちゃん、そんなに僕に逢いたかったのかい?
いけない子だ、そうやって誑かすつもりだね?
あぁ、僕の理性を試さないでおくれよ」
そう言って、彼は目をつぶるとその金のウェーブヘアをかきあげた。
仕立てのよい、ベルベットの凝ったデザインの貴族服。
磨きこまれた革靴に、幾つもの宝石が埋め込まれたアクセサリーの数々。
金の髪と緑の瞳はゴージャスで、誰もが思い描く貴族らしい貴族。
なのだ、が。
「君は本当に僕の運命だね、ほら今もこうやって惹かれあうように出会ったじゃないか。
あぁ!これぞ神が引き合わせたもうた唯一無二!
君こそが僕のアモーレッッ!!!」
「さよなら」
俺は目を閉じて陶酔している彼をほっといてそそくさと立ち去ることにした。
ヘルクアイズ先生。
子爵の出で、彼の魔力は繊細緻密といわれている。
俺が通っている魔術学園の教授で、若手ナンバーワンと名高い。
なんでも、宮廷魔術師に是非にと請われていたが学園を選んだらしい。
誰よりも貴族らしくありながら、驕らず謙遜を知っている。
そしてあの美貌。
あぁうん、女王の覚えもめでたいらしい。
が、彼には悪癖がある。
俺を完全に美化して恋しちゃってるっていう悪癖が。
たまたま俺が彼の魔術式の欠点を見つけちゃったばっかりに、こんなことになるなんてあの頃の俺は思いもしなかったよ……。
本当は、貴族相手に逃げ去るとか殺されても仕方ないくらいなんだけど、あの人はそんなこと絶対しない人だし、あの詩の朗読につきあってたら夜が明ける…。
「あぁあ、いた! ショウお兄ちゃん!!」
もう少しで学園の門というところで甲高い子供の声に呼び止められた。
「アレックス! お前、もう風邪はいいのか?!」
「うん、治ったよー!
ショウお兄ちゃんが治癒の魔法かけてくれたおかげでバッチリ!」
そういって小さなアレックスがぴょんぴょんと跳ねた。
それから、俺の腰のあたりに抱きついてそれはもう天使な笑みを浮かべた。
「俺の治癒の魔法なんて、まだまだ見習いレベルだよ。
アレックスがちゃんとお薬飲んでいい子で寝てたから治ったんだよ、良かったな」
「ううん、お兄ちゃんのおかげだよ!
おかゆもすっごい美味しかったの、また作って!」
「そうか、おかゆなんて元気になったらまずいだけだぞ?
今度、シュネーバーレン作ってあげるよ。 アレックス、お菓子も好きだろ?」
「本当?! わーーーい、やったーやったぁ!」
またアレックスがぴょんぴょん跳ねだした。
くっそ、こいつカワイイなぁ、男の子だけどこんだけ懐かれると正直悪い気がしないよ。
と、その時だった。
「ここは魔術学園と騎士学園の敷地内だ。 部外者は立ち入り禁止だぞ」
冷たく響く声が俺とアレックスの間に割って入る。
「あ、レトガーさん!
すいません、俺がアレックスを引き止めちゃったんです。
すぐに出て行きますからこの事は内密にしてください!」
「ふん、俺は風紀委員だ。
この敷地内の風紀を乱す奴は誰だろうと許さん」
「風紀なんて乱してません!
ほら、アレックス。 今日はもう帰ろうな?」
「えぇ~~~~………」
「また今度、遊ぼう!」
「ホント?! わーいやったぁ、約束だよショウお兄ちゃん!」
そう言ってアレックスはもう一度俺に抱きついてから盛大に手を振って姿を消した。
「ちっ、いい所だったのになぁ……。
フフッ、でもまぁいいやぁー。
お兄ちゃんは僕のものだもん。
僕のことを誘拐犯から助けてくれたときに決めたんだ。
うん、ぜ~~~~ったい僕のお嫁さんになってもらうんだぁ……」
だから、アレックスがそんなことをブツブツ呟いてたなんて俺は知らない。
くりっとした瞳が、同一人物とは思えないくらい暗く沈んでいることも……。
アレックスの姿が門から消えて、俺はホッと息をついた。
この学園は国中の選りすぐった子弟が集っていて、関係者以外の立ち入り禁止なのは暗黙の了解だ。
門は常に開いているけど、入り込む子なんていない。
いくらアレックスが幼い子供とはいえ、立ち入ったのがバレていいことにはならないだろう。
「ありがとうございます、レトガーさ」
そこまで言った俺は何か硬いものに打ち付けられた。
一瞬脳がグラリと撓み、息も詰まる。
「あぁあああぁああああ、いけない子だなぁああああああ?!」
「レ、トガー、さ」
「俺のものだ俺のものだ、ショウは俺のものだぁあああ!!」
壁に押し付けられた俺の視界いっぱいにレトガーさんの顔が迫ってきた。
その金の瞳の瞳孔が縦に細長くなっている。
さっきまでの、冷たく固い印象がどこにもない。
その口から、赤い、先が二股になった舌がチラチラと見える。
「浮気はいけないよぉおおおおお、ショウぅううううううう」
そう言ったレトガーさんの声が俺の後ろにまわる。
次の瞬間、頭の後ろで押さえつけられている左手の指が、ぬらりと暖かいもので覆われた。
ぬめりと俺の指をしゃぶり、指の股を舌の先でくすぐる。
気持ち悪さに、全身に鳥肌が立った。
「この手この手この手、この指で触れるのは俺だけだよ俺以外ダメだ許さないぃい」
痛い、壁に押し付けられる頭が痛い、肩の関節が悲鳴を上げている、
それよりも何よりも濡れた指先が気持ち悪い!!
その時、腕がミシリと嫌な音をたてたような気がした。
目の前がスパークして、息が止まる。
「蛇ごときがショウに触れるな、汚らわしい」
「あぁああああ王子ぃ王子ぃいいいいい!!
貴様、邪魔をするな!」
気がついた時には、俺は壁にもたれるようにして座り込んでいた。
痛い、左肩が熱い。
レトガーさんが倒れふしている。
そして、レトガーさんと俺との間に立つ後姿。
「黙れ蛇。ショウの悲鳴が聞こえた、貴様何をした」
「何もしていない、これはショウに責任のあることだ」
「そうか、だが立会いのない状態での風紀委員の裁きは認められていない。
お前のそれは私刑と同じだ」
チッ、と舌打ちが聞こえた。
土ぼこりを払うと、何もなかったかのようにレトガーさんが立ち上がった。
「ショウ、今回の件については明日呼び出しを行う。
逃げ出せば罪が重くなるからな、召集には応じるように」
彼の瞳は、先程の蛇の目ではない。
お日様の色なのに、まるで氷のように冷たい視線で、俺は頷くのに精一杯だった。
彼は、サペル族の未来の族長だ。
この世界には亜人や妖精種や様々な種族がいる。
サペルは……亜人の中でももっとも強い勢力を持っている一族のうちの一つだ。
様々な国に住まうサペル族は、やがて彼に傅くのだ。
それがなんであんなに俺に執着してるのかは……よく分からない。
たまたま彼の病を、俺が住んでいる村の近くでしか取れない薬草で治療しただけの話なのに。
「ショウ、肩を見せてみろ」
「い、いえ……殿下、平気です」
「嘘をつくな。 お前の悲鳴が聞こえた、今も微弱に響く。 こっちを向け」
アメジストアイが気遣わしげに俺の顔を覗き込んでくる。
うぅうう、この人本当に美形だな……逃げたい、この人の視界に俺の不細工な顔が写し出されてるんだって思うだけで「すみませんでした!」って土下座したくなる。
「ほら……これ以上俺を煩わせるな」
はいぃ!!
俺は慌てて向き直った。
左肩が、クラウディオ殿下の大きな手で覆われた。
ふんわりと銀色の光が彼の手のひらに集まってくる。
それとともに、俺の体の中に優しくそれでも少し荒々しい彼の魔力が浸透してくる。
俺は思わず体の底からため息を吐いた。
暖かい日差しの中、大きな木の下でうとうとするような……彼の魔法に触れると俺はどうしてもひどく幸せになってしまう。
「ショウ……そんな顔をするな」
「えっ!?」
夢から覚めたように俺はいきなり覚醒した。
しまった、一瞬、本当に一瞬だけど意識が飛んでた。
「キスしたくなる」
甘い、ハチミツをとろりと垂らしたような声で囁かれた。
「ご遠慮します!!」
俺は飛び上がって後ずさった。
あ、肩が痛くない。
「フフ、ショウは本当に恥ずかしがり屋だ。
俺はお前を受け入れる準備は出来ているのだぞ……」
「俺はっ! 偶然この魔術学園に入れただけの平民でっ!
殿下の側に侍るなど恐れ多いことですっ!!」
自分の顔が真っ赤になっているのが分かる。
クラウディオ殿下は特殊な魔力の持ち主で、他者の強い感情が聞こえたり共鳴してしまうことがある。
四六時中という訳ではないので、こうやって学園に通うことだってできるけれど近しいものとはより共鳴を起こしやすくなるのだそうだ。
だから、彼は家族以外にはその心を許そうとはしない。
魔術にも武術にも秀で、10年に一度の天才と言われながらいずれ王家を降ることが決定しているのはその魔力のせいではないかと言われている。
ただ、殿下が言うには、俺との共鳴は不快ではないらしい。
「お前の心は水琴のように響く。
こんなに澄んだ感情を『聴く』のは初めてだ……」
そう言って潤んだ瞳で見詰められたときには本当にどうしようかと思った。
だから殿下は俺を求めている。
俺が側にいれば、人間を嫌いにならずにすみそうだ、と笑って。
わぁああああああああぁぁああああああああ!!!!!!
俺は! ノンケです!!
かわいい女の子と結婚したいんです!!!!!!
まだ! 夢を! 諦めたくないんですぅ!!
いくら、いくら!
俺がホモにモテモテだとはいえ! 俺は男なんて別に好きじゃないんです!!!
あの神様絶対、悪魔だ!!!!
「俺を地球に帰してくれぇえええぇええ!!!」
やーーーだよーーーって、返事が聞こえたような気がした。
狐耳の狐尻尾の超美人さん、だが口を開けばバリトンヴォイス!!超イケボ!
な狐族(幻獣族で人間より神族に近い)の長を登場させたかったけれど飽きたので登場しません。