第七章 自室にて
監獄から帰ったアレンは自室にて、魔女のことを思い出すが・・・。
7 自室にて
クリフが意識を取り戻したのは、馬車が城に着く直前のことだった。
クリフは、帰城するなり、客間の椅子に腰をおろし、額に手を当てて、「ああ疲れた」と頭を振った。
「大丈夫?」
「大丈夫さ。ちょっと疲れが出たみたいだ。昨日も今日もずっと馬車に揺られていたからね」
目覚めた直後こそ自分の置かれている状況が理解できていないクリフだったが、馬車に揺られているうちに、気絶の原因を疲労と結論づけるまで回復したようだった。
アシルは、気絶の原因は疲労などではなく、魔女の魔法のせいではないかと思っていたが、それについては何も言わないでいた。魔法実践者ではないアシルには、魔法の何たるかが分からなかったし、仮に伝えたところで、クリフは自分の言葉を受け入れないだろうと思ったからだった。
「医者を呼んでくる」
「呼ばなくて良いよ。お互い騒ぎを大きくしたくないだろう?」
クリフは椅子の背もたれから身体を起こして言った。
「ひょっとしてまた立ち会うつもりなの?」
「当然さ。そのためにわざわざオルセンまでやってきたんだぜ」
「カリーナ様のお供じゃなかったの?」
「姉上をけしかけたのは僕さ。女ってどうしてああ、単純なんだろうね…。それより、ちょっと休ませてくれないか? 少し眠りたい」
「ああ、ごめん。じゃあまた後で」
アシルは客間を出ると自室へと戻った。普段着に着替えて寝台に横たわる。
「何か疲れたな…」
呟いて、枕元の本―ギルバートに借りたものだ―を手に取った。
(まさか謝られるとは思わなかったな…)
心の中で呟いて、パラパラとページをめくる。
視線は紙面上にあったが、意識は監獄へと向かっていた。
本を閉じ、身体を起こすと、ぶっきらぼうに謝る魔女の表情が思い浮かんだ。
「まるで小さな子供だ。僕も彼女も…」
ぷっと吹き出すと、心の中に、もう一度会ってみたいという欲求が生まれた。
(どうしたんだろう?僕は…)
胸に手を当て考えるが、答えは出ない。
アシルは本を戻してうつぶせになり、そのまま目を閉じた。
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さて、だんだん話が転がり始めてきました。
気長にお付き合いくださいませ。