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第四話 能力確認

 旧1日目の最終部分です。繋ぎで多少加筆減筆しましたが、基本的には変更ありません。

 結論から言おう。モナカの家には寄らなかった。

 と言うか、使っても良いって畑は家から少しだけ離れた所にあった訳だ。

 と言っても目と鼻の先だけど。

 モナカの家はミルクちゃんちよりも規模が大きい農場らしく、案内された畑もそれなりに広いし、同じ規模の畑が後二つあるそうだ。

 それはさておき。

 まずは軽く身体を動かしてみる。

 柔軟をしてから、畑をぐるっと一周走る。二周目は少しペースを上げる。三周目は緩急をつける。

 三周走り終えた所で一度足を止める。

 本来の俺なら、もう息が上がってて当然の運動をした。にも関わらず、今の俺はまだまだ元気だ。

 数値化されていないだけで、ゲームのステータスが反映されているのかもしれない。

 体力面はこれで問題ない事が分かった。次は武器を使えるかどうかかな。


「F4」


 俺がそう言葉を発すると、俺の身体が光の粒子に包まれた。それは一瞬の事で、光が止むと俺の手には一振りのナイフが握られていた。

 F4はメイン武器と予備武器の入れ替えコマンド。装備の変更は戦闘中に行なう事もある為、単語のみで起動する様にしてある。


「F5、F6」


 続いて防具と装飾品も変更してみる。

 武器の時と同じ様に身体が光の粒子に包まれ、それが明けると装備が変わっていた。

 一応ステータス画面を開いて確認してみる。


 武器:雷神の短刀

 防具:暴風竜の法衣

 装飾品1:神秘の勾玉

 装飾品2:竜皮の靴


 よしよし。問題なく装備は交換されている。

 F5が防具の交換。F6が装飾品1の交換だ。装飾品のショートカット交換は1しか登録出来ない仕様な為、他は手作業で変えるしか手はない。

 さてさて。じゃあナイフを振ってみるかな。

 と、適当に素振りをしてみる。


「何となく手に馴染む感じはあるかなぁ」


 ナイフを振る事に違和感がない。振れば振るほど、ナイフを使いこなせる気がしてくる。

 斧とか重い武器って訳でもないから、それなりに使えてもおかしくはない。けど、それ以上に今まで何度も振るってきたかの様な感覚がある。


「大丈夫だと思っておこう」


 と自分に言い聞かせる。

 次はスキルだ。それなりに数があるから、いくつか確認しておけば他のも使えるだろう。


「ストーンウォール」


 俺がスキル名を声に発すると、俺が思い描いた通り目の前に石の壁が現われた。

 強度はどんなものかと、ナイフで斬りかかる。

 雷神の短刀は魔力を秘めた逸品だが、石の壁を僅かに削る程度しか出来なかった。刀身に傷が入らなかったのは流石と言うべきか……


「エレメントシュート」


 石の壁から少し離れて、今度は攻撃用のスキルを発動する。

 前に突き出した俺の手から放たれた七色の光を放つ球状の物体。タワーオブバベルの世界において存在する七つの属性全てを混ぜ合わせた弾丸を放つそのスキルが衝突し、石の壁は被弾部分が粉々に砕け散った。


「基本的にエフェクトはゲーム内と同じみたいだな」


 それにきちんとスキルも発動する。これなら、大概の荒事にも対応出来そうだ。


「後は、支援系のスキルも試しておくかな」


 クリエイターが覚えるスキルは、実を言えば一つしかない。

 そのスキル名は天地創造。タワーオブバベルの世界では、ジョブ毎に使用出来るスキルが決まっており、ジョブを変えれば一度覚えたスキルでも使用不可になる事も多々ある。それでもまた元のジョブに戻れば使える様になる為、ジョブチェンジをマイナスと捉えるプレイヤーは皆無と言っても過言ではなかった。

 とは言え、上級職の方がより優れた恩恵を受けられる為、例え便利なスキルが使えなくなるとしても上級職を目指す者は多かった。

 しかしだ。俺の現在のジョブであるクリエイターは、言ってしまえば最低人気のジョブだ。流石に初期状態と比べれば上だが、少なくとも最上級職としては最低人気。上級職と言われるジョブの中でも最低人気だった。

 ジョブ条件を解放しているプレイヤーは数多くいたが、クリエイターのレベルを上げているプレイヤーは、俺の他には二人しか見た事がない。それ程の不人気。

 それには当然理由がある。

 まず第一に、ステータスへの恩恵が皆無と言う点。マイナス補正も一切ないが、プラスの補正も一切ない。最上級職ともなれば、かなりのステータス上昇が見込めるのが普通だ。しかし、それがない。

 第二に、使用可能スキルが専用スキルである天地創造のみと言う点。しかもこのスキルが超がいくつも付く様な特殊スキルだ。

 スキル天地創造。それは、自分が今までに覚えたスキルを合成し、新たなスキルを生み出すスキル。当然、データ上存在する範囲でしかスキルを作成する事は出来ないが、他のジョブでは覚える事の出来ない特殊なスキルを生み出す事が可能だ。

 この天地創造で生み出したスキルは、天地創造を使用した形式と見なし使用する事が出来る。

 が。問題はクリエイターのジョブ解放条件だ。上級職である召喚師(サモナー)と、錬金術師(アルケミスト)のレベルをマックスまで上げる事。それがジョブ解放条件。これだけでもかなりの労力を必要とする訳だが、最低条件を満たした程度ではクリエイターの真価は発揮出来ない。なぜなら、条件であるどちらかのジョブのままの方が強いからだ。

 クリエイターの真価。それは天地創造の条件だ。今までに覚えたスキルを合成する――つまり、多くのジョブを極めれば極める程その幅が広がっていく事になる。

 因みにだ。タワーオブバベルにジョブは全部で108個あると言われている。条件の分かっていない隠しジョブもまだ存在していて、現在確認されているのは90個。類似職等で重複するスキルがあるとは言え、その全てを覚えようとすれば異様な程に時間と労力が必要になる。

 それなら、一系統のジョブを極めていった方が余程楽と言う話だ。

 それでも俺はクリエイターとして強くなる事を選んだ。だって、天地創造で生み出したスキルには、そのプレイヤーが名前を付ける事が出来るんだぜ。何て素晴らしい!

 結局、殆ど安直な名前しか付けてないけど……

 自分が名前でどんなスキルが判断出来ないと意味ないしね。

 支援系のスキルや、その他思い付く範囲でスキルの確認をする。

 スキルにはそれぞれ一日の使用回数が決められていて、一度使用してから再使用するまでのウェイトも存在している。その為全てのスキルを細かく確認する事は出来なかったものの、それなりに時間をかけてスキルの確認を行なった。

 あまり長時間場所を借りているのもどうかと思い、適当に切り上げて一度案内されたモナカの家に顔を出す事にした。


「ありがとう。助かったよ」


 玄関先でモナカに迎えられた俺は、そう言って頭を下げた。


「いえいえ。力になれて良かったです」


 そう答えて笑顔を浮かべるモナカ。

 うん。癒される。


「もしかしたらまた場所を借りに来るかもしれないけど、その時はよろしく」

「種植え前だったら良いですよ」


 と、今度は苦笑を浮かべる。


「うん。それじゃあね」

「はい。さようなら」


 笑顔で手を振るモナカに見送られながら、俺は燕尾荘へと向かった。



 燕尾荘に着く頃には、既に日が沈み始めていた。

 日没早くね? と思わないでもないが、何だかんだでスキル確認には結構時間食ったからなぁ。

 そう言えば昼飯食べてないな。食堂でなんか食べるか……

 なんて考えながら燕尾荘の扉を開くと、カウンター越しにおばちゃんと話をしている見目麗しい女性の姿が!

 って、あれは確か今朝すれ違った……


「ライムちゃん!」


 あ。しまった……

 思わず思い出した嬉しさで大声で呼んじゃったよ……

 名前を呼ばれたライムちゃんが、訝しげな視線をこちらに向けてきた。そりゃあそうだよねー。


「誰だ貴様? 何故私の名を知っている?」


 視線だけで人が殺せるなら、おそらく俺は既に殺されているだろう。ってくらい冷たくも厳しい視線を向けながらそんな言葉を放つライムちゃん。

 って言うか、おばちゃんがライムちゃんって呼んでたからそのまま定着する所だった。そうだな……


「失礼。ライム嬢。俺はクロウ。今朝ここですれ違ったんだけど覚えてない?」


 一瞬だけキリッと表情を引き締める俺。でも直ぐに素に戻る。

 ライム嬢は少しだけ考えた素振りを見せ、どうやら直ぐに思い出した様だ。


「誰かがいたのは覚えているが、顔までは覚えていないな」

「ライムちゃん。坊やが言ってるのは本当だよ」


 あれー? 俺いつから坊や呼ばわりされてるんだろう? まあいいけどさ。


「この子も客さ。出来る限り仲良くしてやんな」

「興味ないな。とりあえず、今後は気安く名を呼ばないで貰おうか」


 おう。超クール! でもそんな所も凛々しくて可愛いぜ!


「俺は仲良くしたいと思ってるんだけどな」

「……失礼する」


 もうこれ以上何も言う事はないと言わんばかりに、ライム嬢は階段を上って行ってしまった。

 あーあ、残念。


「振られたみたいだね」


 と、おばちゃんがどこか嬉しそうに声をかけてきた。


「まあ、少しずつ仲良くなっていきますよ」

「なかなか根性があるみたいだね。まあ、あの子も長くここに泊まる予定だから、精々頑張りな」

「ははは――ありがとうございます」


 思わず乾いた笑いをしてしまった。


「それはそうと、食堂開いてますよね?」

「当然開いてるよ。夜は22時までやってるよ」


 そうだったのか。覚えておこう。


「ありがとうございます」

「うちで食べてくれるんなら、こっちとしてはありがたいからね。たんとお食べよ」

「頑張ります」


 苦笑を浮かべながらそう答えて、俺は食堂へと入った。

 燕尾荘の食堂は食券を先に買うタイプらしい。

 肉が食べたい年頃な俺は、牛ステーキ定食4ウォールを頼む事にした。

 番号札を渡され、呼ばれたら自分で取りに行く形式だった。

 牛ステーキ定食はボリュームも味も満足出来る内容で、一泊朝食付きの半分に近い値だが納得出来た。これなら明日の朝食も期待出来るそうだ。

 食器も返却口に自分で持って行かなければならなかったが、それくらいは全く問題ない。

 ごちそうさま。と声をかけ、俺は食堂を後にした。

 カウンター越しにおばちゃんと挨拶を交わして自分の部屋へ戻る。

 今日は色々あった。いや、マジで。

 今更ながらどっと疲労感が襲って来た。

 汚れた身体は備え付けのタオルで拭くくらいに留めて、またまた備え付けの寝巻きに着替えた俺はそのままベッドに倒れ込んだ。

 シャワーは明日の朝浴びる事にしよう。

 そう決めた次の瞬間には、大きな睡魔が襲ってきた。


「夢オチとか、ちょっと期待しておこうかな……」


 そんな呟きを漏らし、俺はそのまま眠りに着いた……

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