第四十四話 砂漠兎2
更新一月空いて申し訳ないです。
俺の意気込みも虚しく、そこからの戦闘は楽なものだった。
残ったデザートラビットは、俺に対して恐怖心を抱いた様だったからだ。逃走する程ではないが、明らかに動きが悪くなっている。恐慌状態も状態異常の一種として存在しており、この異常には段階が存在している。最も軽いもので今の様に動きが悪くなるもの。次にあらゆる行動に対して判定で失敗が出てくるもの。当然前の状態と同じく動きは悪い上での判定だ。この判定で失敗になれば、取ろうとしていた動作は全てキャンセルされる。そして次が逃走。その逃走を阻むと五分の確率でなる最終段階が、あまりの恐怖に暴れまわるというものだ。この状態になると、攻撃力が上がる上に通常とは違う動きをする為厄介なのだが、レアドロップ率が上がるという特典もあったりする。その為、ゲームでは敢えてこの状態を狙う者なんかもいた。
ともあれ、まずは数減らしに手負いの個体に向かう。
特にスキルを使わず、アイスエンチャントの効果が残る通常攻撃をする。数発攻撃を入れたところで、ようやく残りの個体が仲間を救おうとこちらに向かってきた。だがその動きは通常時よりも遅い。
俺の攻撃を受けている個体も何とか反撃に出るが、避けるのが簡単な単調な動きだ。その攻撃を避けつつ更に攻撃を続ける。途中クリティカルもあったのだろう。十発程攻撃したところでその個体は倒れた。
そしてようやく残りの2匹がすぐ傍まで辿り着いた。だが、スキルも使わず倒し切られた仲間を見て更なる恐怖に駆られたのか、どうやら恐慌状態の具合が進行したらしい。1匹は俺に攻撃しようと前脚を振り上げた状態で硬直している。もう1匹は同じ様なモーションで攻撃を続けてきたが、これも避けるのは簡単だ。その攻撃を避けると同時に反撃。当然その一撃は入るが、それくらいで倒せる訳はない。
「あと十秒か……」
俺があるスキルを使おうと思うと、使用可能になるまでの残り時間が脳裏に浮かぶ。いちいちステータス画面で確認しなくても良いのはありがたい。
出来れば、この十秒間この2匹がまとまったままだとより一層楽なんだけどな。とは言え、足止めするスキルを使う程じゃない。
俺に攻撃を避けられて態勢を崩した個体に追撃を入れつつ、再び残り時間を確認する。
あと五秒。
硬直が解けた個体が背後に回る形になった俺に振り返る。
あと四秒。
そいつがこの至近距離が身体を丸め始めると同時に、ダメージを与えた方の個体が振り返る。
あと三秒。
まだ完全には丸まらない。振り返った個体が前脚を振り上げる。
あと二秒。
身体が完全に丸まった。俺は一歩だけ下がり、振り下ろされた一撃を避ける。
あと一秒。
丸まった個体が動き始め、もう1匹も俺に追撃をしかけようと一歩を踏み出す。
「アイシクル・ボム!」
2匹のデザートラビットのほぼ中心で俺はそのスキルを発現させた。
突然の爆発から逃れられる訳もなく、また範囲が狭いとは言え近接していた2匹をきちんと巻き込む。 先にダメージを与えた方は勿論、もう1匹のデザートラビットも倒す事が出来た。どうやら、アイシクル・ボム一発で倒せるか倒せないか際どいところの様だ。
さて。これで残すは氷漬けの1匹のみ。そのまま破壊出来るかどうか試しみるとしよう。
そう思って氷像と化したデザートラビットに近付く。が、目の前に辿り着いたところで状態異常が解けてしまった。
とは言え慌てる事はない。敵は手負いだ。それに、まだきちんと動ける状態ではないらしい。
「斬首の刑」
身動きの取れない相手にのみ発動可能なスキル。斬首の刑。その名の通り首を斬り落とすこのスキルは、効果は一撃必殺。但し首が落ちても死なないアンデット等には効果がない。
このスキルの発動条件は三つ。一つは先に言った相手が動かない事。そして、刃のある武器を直接首に当てなければならない事。しかし当てさえすれば一切の力が必要なく首を落とす事が出来る。これだけ聞けば使い勝手が良く聞こえるかもしれないが、最後の条件が面倒だ。それは、相手がこちらに恐怖を抱いている事。これらの条件を当てはめる為には、普通に考えればそれなりに戦闘を行なっている必要がある。つまり、一撃必殺の即死効果としてはあまり意味がないスキルなのだ。ならなぜそんなスキルを創ったのかと言えば、それは一撃必殺が漢のロマンだからとしか言い様がない。
ともあれ、斬首の刑により最後のデザートラビットも倒れ、今回の戦闘も無事に終了した。
この調子で、砂漠エリアをさくっと攻略したいところだな。
そんな風に思いながら、俺は先に進む事にした。