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第四十三話 砂漠兎1

 再び訪れた砂漠エリアでは、前回と違い直ぐにモンスターと遭遇した。

 最初に現れたのはデザートラビット。真っ赤な体毛に覆われた二足歩行可能な巨大ウサギと言えばその姿は伝わりやすいだろう。ゲームでは平凡なモンスターだったが、現実となった今その攻撃方法が厄介なものになっていた。ただの体当たりや噛み付きなんかは問題ないが、アルマジロの様に身体を丸めての回転しながら突進と言う攻撃パターンがあり、それがなかなかに対処が面倒だったのだ。

 ちなみにこのデザートラビット。体毛を硬化させる能力を持っており、どちらかと言えば防御に特化したモンスターなのだが、突進攻撃時にはこの硬化を利用していると言う設定がある。つまり、回転している為迎撃自体が面倒な上に防御力も上がっていると言う二重苦なのだ。

 物理職泣かせだな。


「さてさて、どうしたもんかな……」


 実際のところ、俺にとっては対処する事自体は難しくない。だが、こう群れで出て来られるとどうしたもんかと悩んでしまう。


「えっと……全部で6匹か」


 既にゴロゴロと転がっている個体もいる為ぱっと数え難かったが、とりあえず敵の攻撃を避けながら数えたところその数は6匹だった。


「ストーンウォール」


 眼前に迫った1匹の突進をスキルで生成した石の壁で防ぐ。石壁にはヒビ一つ入らなかった。まあ、一応上層でも役立つ様に創ったスキルだからな。

 今現在石壁の向こう側に4匹、俺の背後に2匹のデザートラビットがいる。石壁を背にして、2匹のデザートラビットと向かい合う。 

 割と近くにいた1匹が既にこちらに向かってきているが、普通に走って近づいてきているだけだ。もう1匹はそこそこ距離があるが、こちらに向かい始めている。


「アイシクル・ボム」


 発現可能範囲が著しく狭い爆発系の攻撃スキルに氷属性を与えたこのスキルは、相応の威力があり肉薄していたデザートラビットを吹き飛ばす。

 一撃で倒すまでには至らなかったが、十分にダメージは与えたはずだ。大した補正はないが、一応弱点属性でもある事だしな。


「アイスランス、かける五発」


 自身の周囲に生成した氷の槍の内三本を近づきつつあるデザートラビットに放つ。飛び跳ねながら近づいてくるそいつは、うまくジグザクに飛び二本の氷槍をかわした。しかし残った一本が後ろ右足に当たり、ダメージはともかくとしてその動きを止めた。

 その隙に振り返ると、二匹のデザートラビットが石壁を迂回して接近していた。

 アイシクル・ボムはまだ使えない。新たにスキルを発動しても良いが、俺の周囲にはまだ二本のアイスランスがある。それぞれ一本ずつ放って迎撃しつつ、俺は後方に跳び距離を取る。

 近距離での迎撃を避けられる訳もなく二匹共に直撃したものの、先の一匹同様に足止め程度の効果しか得られない。それで十分とは言えないが、再び振り返り先にダメージを与えた二匹の様子を確認する。アイシクル・ボムを当てた方はまだ起き上がっていない。アイスランスで足を負傷させた方は立ち上がっている。とは言っても、後ろ足を負傷したせいか四本足でだ。機動力が大きく損なわれたのは確かだろう。なら、今の内にトドメをさした方が良いかもしれないな。


「氷雪乱舞」


 デザートラビットとの距離を詰め、攻撃系のスキルを発動させる。乱舞と名前を付けたものの、ラッシュしたりする様なスキルではない。短剣系統の武器限定のスキルで、発動直後からの攻撃に氷属性を付与、及び攻撃力を上昇させる。上昇値は低いが、属性値は高い為弱点を突けばかなりのダメージを見込める。だがこの属性付与には効果持続の条件がある。そこに乱舞と名付けた理由がある。発動直後最初に一撃には、発動後一分以内ならば他の類似スキルを発動しない限り属性は付与される。が、一撃を与えてからはシビアになる。攻撃を当ててから一秒以内に次の一撃を当てなければ属性付与は解除されるのだ。但し、逆に言えば一秒以内に攻撃を当て続ける事が出来れば永久に属性付与が続く。これは攻撃対象が変わっても持続される為、弱点属性の相手との乱戦時にはかなり有用なスキルと言える。とは言っても、大体が対象一体を倒して終わるパターンになるが。

 デザートラビットからの反撃を避けながら、また極力反撃そのものをさせない様にナイフを振るい、一撃、また一撃と攻撃を加えていく。そして俺が十五回の斬撃を与えた時点でそのデザートラビットは倒れそのまま消滅していった。

 もう少し少ない攻撃回数で倒せると思ったが、意外と中層の敵は侮れないらしい。

 ともあれ、残りのデザートラビットは5匹。振り返れば既にアイスランスを当てた2匹はこちらに近づいてきているし、距離のあった奥の2匹も石壁を避け接近してきている。視線を送ればアイシクル・ボムを食らった1匹もよろよろとだが起き上がってきている。


「アイスブラスト」


 俺は一番近くにいたデザートラビットに、放出タイプの魔法スキルを放つ。自身の前方に圧縮されたエネルギーを放つブラストと言うスキルに氷属性を与えただけのスキルだが、その汎用性は高い。ブラストの放出時間は最大で三十秒。それ以内なら任意で止める事が出来る。そして対象に当ててさえしまえば三十秒と言えど継続してダメージを与えられる為勝手が良いのだ。尚且つ、属性を付与した事で状態異常を与えられる可能性もある。単発でダメージを与えるスキルでは確率は低いが、継続してダメージを与えるブラストではその確率も上がるのだ。まあ、あくまでも判定回数が増えると言う意味で、スキル自体の異常発生確率を上げる訳じゃないが。

 俺の放ったアイスブラストが捉えたデザートラビットは、その直撃を五秒は受けた。その時点で1匹が俺に肉薄してきた為ブラストの発動を止めて後方に跳んだ。アイスブラストを受けた1匹は、嬉しい事に氷漬けになっている。氷属性の状態異常にかかったのだ。氷漬けになり、一定時間一切身動きが取れなくなる。その代わり外部からの攻撃も受け付けなくなるのが難点だ。だが、現実の今なら氷ごと破壊してしまう事も可能な気はする。

 だが、今それを試している余裕はない。

 再程肉薄してきていた1匹と、まだ遠い2匹の内の1匹が身体を丸めている。回転突進の準備に入っていたのだ。


「アイスマシンガン」


 その名の通り氷の弾丸を放つスキルを使い、近い方のデザートラビットの動きを阻害する。弾一つ一つは大きくないが、まさに機関銃の如く乱射される無数の弾丸を浴びたデザートラビットは仰け反り、身体を丸めていた態勢から二足立ちへと戻った。


「アイスエンチャント」


 武器に氷属性を付与し、駆け抜けながら一撃を与える。そうして俺が向かった先はアイシクル・ボムを食らわせた個体。


「疾駆の一撃」


 走りながらでなければ発動不可の物理攻撃スキル。疾駆の一撃は与えるダメージを増加させるスキルだ。その増加率は1.1倍から2倍。走る速度によって変動する。氷属性を付与した一撃は、何倍の威力になったかは判別出来ないが弱った個体を倒すには十分だったらしい。

 そして走った事で残りのデザートラビットとの距離が取れた。俺が見据えているのは身体を丸めている個体。今まさに転がり出そうとしている瞬間だ。間に合ってくれよ――


「裁きの氷雷」


 一定の距離が離れた対象座標に、氷と雷の複合属性を得た一撃を上空から落とすスキル。その見た目は良くマンガなんかで見る雷そのもの。氷属性があるからかその色は水色っぽい。座標指定型だがその発動は早い為、距離感させ掴めていれば当てるのは難しくない。一度使えば24時間使えないが、その威力は上層でも十分に通用する。その一撃を受けたデザートラビットは、一撃で倒れ消滅していった。

 これで残りは4匹。その内1匹は氷漬け。更に1匹は手負いだ。

 さてさて。もうひと頑張りしますかね。

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