第四十二話 鉱石換金
バベルの塔1階へとやってきた俺は、まずはホーンを探す。先延ばしになっている鉱石売却の為だ。
ゆっくりと歩きながら周囲を見回す事数分、ようやくホーンの姿を見つけ声をかける。
「探したぞ」
「クロウじゃないか。どうかしたのか?」
「どうかしたのか? じゃない。昨日降りてきた時にホーンの姿が見当たらなかったからな。せっかく鉱石を売ろうと思ったのに」
いつ売りに行くとも決めてないから、責める理由にはならない。が、いつもいる様な気がしていた為文句の一つくらいは言いたくなるってものだ。
「おいおい。一日でそんなに目ぼしい鉱石が掘れたのか? やっぱりクロウは只者じゃないな……」
褒められて悪い気はしないが、残念ながらホーンが期待している程の収穫はなかっただろうな。
「そこまで目ぼしいものはないぞ。一応、銀の欠片、鋼鉄の塊、大鋼鉄の欠片辺りがそれなりに目ぼしいとは思うが、どれも一つずつしか掘れてない」
「なるほどな。他にも採れてはいるんだろう?」
「ああ。後は劣化鉄の欠片が5個、鉄の欠片が2個、鉄の塊が1個、銅の欠片が1個だ」
「あー。確かに、クロウの言う通り目ぼしいのはさっき言った分くらいだな。でもまあ、きちんと適正価格では買い取らせて貰うぜ? どうする?」
「なら、全部買い取って貰おうかな」
おそらく今回集まった鉱石が必要になる事はないだろうし、少しでも資金稼ぎになるのなら売ってしまうべきだろう。
「オーケー。劣化鉄の欠片が一つ銅貨5枚。鉄の欠片が一つ銅貨20枚。鉄の塊が銅貨40枚。銅の欠片が銅貨30枚。銀の欠片が銀貨1枚。鋼鉄の塊が銀貨6枚、大鋼鉄の欠片が銀貨5枚だな。合計で銀貨13枚と銅貨35枚になる」
ホーンの計算が間違っていない事を信じて鉱石を渡し、その分の代金を貰う。
採掘も本腰を入れれば稼げるんじゃないかと思うが、資金稼ぎそのものが目的ではないので頭の片隅に追いやる。
「これからまた登るのか?」
「ああ。とは言っても、今日は採掘メインじゃないけどな」
今の目的はソロ攻略だ。前回の攻略はヴァランとの思いがけない遭遇で終わってしまったが、今回は砂漠エリアくらいは踏破したいところだ。
「まあ、大丈夫だとは思うが気をつけてな」
「ああ」
そんなやり取りでホーンと別れ、俺は転移陣を使い20階へと訪れる。ここから砂漠エリアである31階まで昇るのも苦ではないがなかなか面倒だ。砂漠エリアのクリアくらいとは思ったが、どうせなら転移陣のある40階まで進んでおきたいと思い直す。
なんにしても、まずは自分の足で進むいかない。
俺は心なしか重くなった足取りで階段を昇って行く。
分かっていてがやはり大した苦労もなくとりあえずの目的地である砂漠エリアへと突入する。それまでの要した時間は三十分程。
マップは埋めていないが、きちんとマッピングはしている。階段までの道のりは分かっているのだからこの程度の時間で済むのも当然だろう。
ともあれ、ここかはまだ未踏破だ。まずはウォーターアーマーで熱気対策をしつつ、周囲を見回す。
まずはそうだな……
前回と同じルートで進んでみるか。
ヴァランとの遭遇地点を目指して、俺は再び砂漠の地を進み始めた。