表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/45

第三十三話 モモとの約束

 モモの家にやってきた俺だったが、残念ながらモモは家にいなかった。

 母親もまだ意識が戻っている訳じゃないから、当然家の中から反応はない。

 さてどうしたものかと悩んでいると、後ろから声をかけられた。


「あれ? お兄さん。うちの前でどうしたの?」


 振り返るまでもなく、声をかけてきたのがモモだと分かる。いや、振り返るけどな。


「ああ。良かった。例のアレが手に入ったから持ってきたんだ」

「え!?」


 俺の言葉に、モモは心底驚いた様子で声を上げた。まあ、かなり入手困難な物みたいだし当然か。


「ほ、本当?」

「ああ。そんな嘘ついたってしょうがないだろう」

「そ、それもそうだね……でもどうしよう……こんなに早く持ってきてくれるなんて思ってなかったし、お礼とか……」


 そうか。前回は一応塔について教えて貰ったりはしたが、その場の流れで渡したもんな。前回の分も踏まえて、どうお礼をしようかと悩んでいたらしい。


「そんなに気にしなくても良いってのが本音なんだけどな……そうだ。なら、今度俺とデートでもしてくれよ」

「で、デート!?」

「ああ」

「なな、何言ってるのさ!」


 おーおー。モモの慌てっぷりが面白い。顔なんか真っ赤にしてるし、ぶんぶんと手を振ってる様子なんか見てて微笑ましいくらいだ。


「大体、お兄さんはボクの事男の子だと思ってたじゃないか。そんなボクとデートだなんて……」

「いやまあ、中性的だとは思ったのは事実だけどな。一人称がボクだったから男だと思っただけで、モモは十分可愛いと思うぞ」


 それは別に嘘じゃない。


「な! ななな……」

「それでどうだ? 俺とデートしてくれるのか?」

「お兄さんが良いなら……」


 もじもじと俯き、ぼそぼそっと言葉を返すモモ。うんうん。良いものが見れたな。


「もちろん構わないさ。そもそも俺から言い出したんだしな。それで、モモはいつなら都合が良い?」

「えっと、明後日かな」

「明後日か……すまん。明後日は俺が都合が悪い。パーティでの塔攻略を約束してるんだ」

「そっか。お兄さんはその為にこの街に来たんだもんね。それなら、その次は一週間後かな」

「ならその日にしよう。時間は、昼前くらいからで良いか? まずはお昼を一緒に食べよう」

「うん。大丈夫だよ」

「それと、何か希望はあるか? やりたい事とか、行きたい所とか」

「特にないかなぁ……お兄さんにお任せするよ。って、お兄さんまだこの街の事そんなに知らないんだよね」


 実際には大分詳しい方だと思うが。簡単にデートとか言ってしまったが、良く考えたら俺にはそんな経験ないし、エスコートなんてどうして良いか分からない。ここはモモの勘違いに乗っておこう。


「ああ。情けないけど、モモにこの街の良いところを教えて貰えたらな。なんて思わないでもない」

「うん。分かったよ。それなら、当日までの間に何か考えておくね」

「助かるよ」


 いや、マジで。


「そうだな……それじゃあ、一週間後の11時くらいを目処に迎えに来るとしよう」

「分かった。楽しみにしてるねっ」

「こちらこそだ。それじゃあ、今日のところはこれで帰るよ」

「あ。ごめんね。ずっと玄関先で……」


 お茶くらい出すべきだったね。と落ち込む様子のモモ。


「気にするな。それじゃあ、またな」

「うん。またね」


 俺は軽く手を上げて踵を返す。

 モモに見送られ、その場を後にした。



 そろそろ昼も過ぎる頃合い。昼食を取るべく一度燕尾荘へと戻ってきた。

 本日のランチメニューは海老フライ定食。大変美味でした。

 昼食後に自分の部屋に戻ろうとすると、階段に差し掛かったところで上から誰かが降りてくるのに気が付いた。見上げると、そこにはライムの姿があった。


「よぅ。今日はこれからか?」


 そう尋ねてから気が付いた。ライムはいつもの鎧姿ではない。着飾っている訳ではなく、ズボンにTシャツといった大変ラフな格好だ。美人が台無しだ。と言いたいところだが、多分どちらも素材的には良い物なんだろう。決して貧相な感じはなく、それですら様になっている。


「見ての通りさ」


 おそらく俺が服装に気が付いたのを察したのだろう。ライムは肩を竦めながらそう答えた。そして下まで降りてくる。


「今日は一日休もうと思ってな。今から昼食だ。クロウもどうだ?」

「残念ながら、俺は丁度今済ませたところだ」


 本当に残念だ。ライムとの食事の機会を逃すとは。


「そうか。それは残念だな」


 どうやらライムも残念だと思ってくれるらしい。俺への好感度もなかなか上がってきた気がする。


「クロウは、今日も塔に行ってたのか?」


 俺はきちんと装備を整えているからな。これから部屋に戻ろうとしているんだからそう判断したんだろう。


「まあな。少し休んだらまた行くつもりだ」

「心配はいらないかもしれないが、気をつけろよ」

「ああ。ありがとな」


 そんな言葉を交わし、俺は階段へと足をかける。ライムはそのまま食堂へと向かい、俺は自分の部屋に戻った。

 ああ。ジェシカが他に誰も見つけられなかったら、いっその事ライムをパーティに誘うのもありかもしれないな。

 現状、少なくともジェシカよりはライムの方が信用は出来るし、実力的にもまだ先まで進めるはずだ。一度共闘してるのもプラスだしな。

 レベルの話なんかもするだろうから、誘うタイミングも考えないといけないか。後で一度ジェシカを探してみるのも手かもしれないな。

 何だかんだで、俺の中ではライムを誘うのが確定しつつある。そんな自身の思考に何となく笑みが零れる。

 俺も案外、直ぐ情が移るんだな。そんな自嘲めいた苦笑を浮かべながら、俺は自分の部屋に入った。

転職した事もあり、執筆時間をほとんど取る事が出来なくなってしまいました。

仕事にも慣れ落ち着いてきたらもう少し何とかなるとは思いますが……

そんな訳で、次回からまた更新頻度が落ちてしまうと思います。

最低でも月一は更新する様にしますので、稚作ではありますが見捨てずに頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ