第三十二話 採掘ツアー
前回は一切戦闘のなかった21階だが、連続してそんな事にはならなかった。
最初に遭遇したのはロックタートルの群れだ。数は5匹。その名の通り岩を背負う亀のモンスターだが、大きさは小さくても1メートル。大きい個体だと5メートルくらいになるらしい。更に背負う岩はただの岩とは限らず、鉱石を背負っている事もある。全体ではなく、背負う岩の一部に鉱石が埋まっていると言った方が正しいが。昨日は鉱石持ちとは遭遇しなかったが、今目の前にいる内の2匹には鉱石が埋まっている様だった。因みに、埋まってる様に見えなくても、ドロップでは鉱石を落とす事がある。見えない場所に埋まってるのかもしれない。見える位置に鉱石がある場合は、動きを止めれば採掘する事も可能だ。まあ、ソロでは厳しいのが普通だが。
数もいるし、いちいち足止めして掘るのは面倒だ。採掘はきちんとしたポイントで行なうとして、ロックタートルはさくっと倒す事にする。
「フレイムストーム」
周囲に誰もいない事を確認してから、俺は範囲魔法系スキル、フレイムストームを発動した。指定座標にその名の通り炎の嵐を起こすスキルで、下層の雑魚モンスター相手なら炎耐性持ちじゃなければ一撃で倒せる威力がある。ウェイトタイムは12時間。攻撃魔法スキルを主とするジョブなら同等のスキルをもっと高頻度で使用出来るが、生憎と俺が造り出したスキルはそこまでハイスペックではない。と言うより、ジョブ的に適正が高くない。
ロックタートルは属性耐性こそないものの、あの甲羅自体が物理・魔法系問わず攻撃耐性を持っている。俺の魔力値では一撃で倒せるかは微妙なラインかもしれない。が、ゲームシステム的なダメージとは別に、一撃で倒せるだろうと確信していた。
ロックタートル達はフレイムストームの効果が現れると同時に甲羅の中に身を潜めた。攻撃よりも防御に特化した奴らは、攻撃を受けると直ぐにああして甲羅の中に隠れる習性がある。が、それこそが俺の狙いだ。
俺のフレイムストームは、魔法職で覚える範囲魔法系スキルのファイアストームと、座標指定設置型の魔法系スキルであるファイアウォールを複合したスキルだ。本来ならば効果を現しダメージを与えたら消える炎の嵐が、設置型としてしばらくその場に残る。そうする事で範囲内から逃げない限りは継続的にダメージを受けるし、甲羅の中なんて半密室空間にいれば当然蒸し焼きになる。
フレイムストームの効果が消える15秒の間に、ロックタートルはきっちり全滅していた。
5匹の内2匹がアイテムをドロップしていた。一つは素材アイテムである岩亀甲羅の欠片。防具の素材となるこのアイテムはダメージ軽減の能力が付く事もあって、結構な売却値になると思われる。もう一つは鋼鉄の欠片。
ドロップアイテムをマジックボックスにしまい、採掘ポイントを探し回る。
その後も何度か戦闘を繰り返しつつ、採掘ポイントも何カ所か回った。塔に来てからかれこれ3時間程が経つだろうか。最初に使用していた鉄のピッケルは2本共ダメになってしまったが、鋼鉄のピッケルも大鋼鉄のピッケルも全て無事だ。採れたのは劣化鉄(鉱石系で一番ランクの低いものだ)の欠片が5個。鉄の欠片が2個。鉄の塊が1個。銅の欠片が1個。銀の欠片が1個。鋼鉄の塊が1個。大鋼鉄の欠片が1個だ。ピッケルで掘る作業は実際に行なう為かなりの重労働だったが、ステータスのおかげかそこまで苦ではなかった。疲れはするが。しかし掘った結果手に入ったのはゲームと同じ様に欠片や塊と言った固定の大きさの鉱石のみだった。その辺が塔の不思議な所で、どうやら俺以外の誰がやっても同じらしい。採掘目当てのパーティと遭遇して確認したから間違いないだろう。
因みに、21階は回りきって今は22階にいる。22階のエリア踏破はもう少しかかりそうだ。
昼までもう少し時間もあるし、22階の踏破を目指してもう少し回ってみるか。そう思ってピッケルを片付け移動しようとした時、俺は見覚えのある小さなモンスターを見つけた。
小さいネズミサイズの猫の様なモンスター。それはまさしく、エトルアン。まだ奴は俺を敵として認識していないらしく、逃げて行く様子がない。ならば――
と、俺は森エリアで奴を倒した時と同じ様にまずはホーミングミサイルを放つ。そしてすかさずデスショックを使いスタンさせる。距離はそんなにない。俺は直ぐにエトルアンへと駆け寄り、スタンから復帰する前にナイフを振るいエトルアンを倒した。
そして当然の様に現れるエトルアンの涙。本当にドロップ率は100%なのかもしれないな。
22階の踏破よりも、早くエトルアンの涙をモモに渡してやろう。そう思い、俺は20階まで降りて転移陣で1階に跳ぶ。
モモの家の場所は覚えている。家にいるかは分からないが、まずは行ってみよう。
そう考えて、俺は塔を後にした。
道中、ホーンに鉱石を売りに行くのを忘れていた事に気付いたが、まあそれが後でいいかと思いとりあえず鉱石売却の事は意識の外に追いやった。