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第二十四話 VSクリスタルゴーレム

 急接近する俺達を迎撃しようとするクリスタルゴーレムだったが、その動きはゴーレム種に相応しく遅い。普通のゴーレムよりは素早いが、それでも俺達の方が早い。

 しかし、名前の通り全身がクリスタルで出来ている為非常に堅い。俺のエルーザナイフは下層の敵程度なら簡単に切り裂けるが、このクリスタルゴーレムクラスの堅さとなるとそうはいかない。斬りつけた奴の肩口に傷は付けたものの、大したダメージは与えれていない様だ。横を見やると、ライムの剣を弾かれていた。まあ当然だろう。

 俺達は直ぐに距離を取り、クリスタルゴーレムの反撃をかわす。

 通常攻撃が効かないなら、スキルを使って倒すしかない訳だが……

 ここまでライムは戦闘で殆どスキルを使っていない。使う必要がなかっただけで使えるだろうが、あまりゴーレムに有用そうなスキルを使える様には見えない。それは単純に戦闘スタイルからの憶測であって、実際にはソロで塔を登っている以上それなりに色々な敵と戦える様にしているとは思うが……

 俺一人で倒しても意味がない訳で、俺はライムの出方を窺う。


「ファイア・エンチャント」


 ジョブによる制限を受けないスキルの一種であるエンチャントスキルを発動させるライム。ライムの持つ剣に炎が宿り、おそらくクリスタルゴーレムに傷を付ける事が可能になったのだろう。

 最初の一撃の前に使えば良かったろうに。と思うのは俺の方が心に余裕があるからだろうか。

 どうやら後に攻撃をしたライムに標的を絞ったらしく、クリスタルゴーレムがライムに向かって突進していく。ライムはそれをかわしつつ反撃するつもりみたいだ。ならここはアシストするところだな。


「スロウ!」


 対象の動きを鈍らせるスキルを発動させる。対象の敏捷値が高い程成功率が落ちるという難点はあるが、ゴーレム種相手なら失敗する事はないだろう。

 しっかりとクリスタルゴーレムにスロウの効果がかかり、鈍い動きが更に落ちる。


「助かる!」


 ライムはそれを機に攻勢に出た。クリスタルゴーレムはライムの動きに対応出来ず、炎を纏った剣で何度も斬りつけるライム。一発一発は大したダメージではないだろうが、それでもライムの攻撃は確かにクリスタルゴーレムに傷を付けていく。

 傷を負いながらも怯む事なくクリスタルゴーレムはその剛腕を振るうが、スロウの効果もありライムはその攻撃を簡単にかわす。ライムの体力次第ではあるが、時間さえかければこの戦法で十分倒しきれるだろう。とは言え、このまま下がりっぱなしなのも何となく気が引ける。


「ライム、代わるぞ!」


 遠距離攻撃だとライムを巻き込む可能性もあるしなぁ。と思っていたところで、ファイア・エンチャントの効果が切れた。その機を逃すまいと、俺は声を上げながら駆け出した。

 俺の声を聞いたライムは俺と入れ替わる様に下がり、今度は俺がクリスタルゴーレムを相手取る。スロウの効果も切れたらしく、動きが少しだけ良くなったクリスタルゴーレムだったが、そもそも簡単に当たってやるつもりはない。

 下手にスキルを使えば簡単に倒してしまう可能性もある為、クリスタルゴーレムの攻撃をかわしながら通常攻撃でダメージを与えていく。ライムが何かしらのアクションを取るか、スロウが再び使える様になったらライムと交代しても良いかもしれない。


「クロウ! 下がれ!」


 今度はライムからそんな言葉が発せられた。雰囲気から察するに、大技でも放とうとしているのかもしれない。

 俺は言われた通りクリスタルゴーレムとの距離を取る。都合良く、スロウのウェイトタイムを終了した。


「崩天剣・破の太刀!」

「スロウ!」


 ライムと俺の声が重なった。

 ライムの剣からは青い衝撃波が放たれ、クリスタルゴーレムは再びスロウの効果を受ける。これで回避する事は出来ないだろう。それでも何とか防御姿勢を取るクリスタルゴーレムだったが、衝撃波の直撃を食らった。倒れたり吹き飛ぶ事はなかったが、胸元で交差された両腕が崩れてボロボロになっている。まだ倒し切れていないものの、この状態ではまともに戦う事は出来ないだろう。


「と言うか、崩天剣なんて使えるのか……」


 崩天剣とは、剣士系の隠しジョブである聖魔騎士と呼ばれる中二病ジョブが覚える固有スキルだ。となると、ライムは聖魔騎士と言う事になるのだが……

 だとすれば、ソロでももっと上の階に行けるくらいの強さはあるはずだ。ミスリルナイトがそれだけ強いのだろうか……


「すまないクロウ。トドメはお前がさしてくれ」


 ライムを見やると、膝をつき肩で息をしている。いくら強力なスキルを使ったとは言え、普通はあんな風にはならない。となると、何か特別な手法で崩天剣を使用したと言う事だろうか。


「分かった」


 とりあえず詳しい事は後で聞くとしよう。まずは、きちんとクリスタルゴーレムを倒しておかないとな。

 俺が近付いて行く間に、クリスタルゴーレムはドシンと音を立てて前のめりに倒れた。立ち上がろうとしている様だが、それが叶う様子はない。それでも一応は警戒しつつ近付き、クリスタルゴーレムの核を探す。

 ゴーレム種にはその原動力とも呼べる核が存在し、核の場所は個体によって差異がある。ゲームの時は核に攻撃を与えるとダメージにボーナスが加算される上に必ずクリティカルになると言う特典があったが、今はどうなんだろうな……少なくとも、トドメを刺すのには持ってこいだろう。

 クリスタルゴーレムの身体はクリスタルだけあって中が透けて見える。良く見れば、体内のほぼ中心にぼんやりと光る部分があるのが分かる。これが核で間違いないだろう。俺はナイフを逆手に持ち替え、刃先を核の位置に合わせる。


「ペネトレイト」


 俺がそのスキルを発動させると、俺の右手首から先が青白く淡い光を纏った。

 ペネトレイト。次に利き手で投擲した物が、必ず貫通能力を得るスキルだ。勿論貫通するのは一つの対象のみだが、モンスターの核は本体と別扱いではない。

 手首のスナップだけでナイフを振り落とすと、ペネトレイトの効果を受けたエルーザナイフがクリスタルゴーレムの身体――核を貫通し地面に刺さって止まった。

 数秒の間があったものの核はひび割れ、そのまま消滅。クリスタルゴーレムも身体の一部を残し光の粒子となって消えていった。

 どうやら、残ったクリスタルがドロップ品と言う事らしい。

 俺はナイフを取り鞘に納め、とりあえずクリスタルを拾い上げると片手で持ちつつ踵を返してライムの元に戻った。


「大丈夫か?」

「ああ。すまない」


 俺が残った左手を差し出すと、ライムはその手を取り立ち上がる。

 どうやら大分回復したらしく、多少疲れている様ではあるがいつもの凛々しいライムの様に見える。


「しかし驚いたよ。ライムが崩天剣なんて使えたなんてな」

「崩天剣を知っているのか?」


 おっと。もしかして、あまり人に知られていない感じなのか?


「まあ、名前くらいはな。使い手を見るのは初めてだけど」


 これは本当だ。設定上は知っているが、実際には見た事はない。


「私なんて、使い手と呼べる様なものではないさ……辛うじて、あの技だけは何とか使えるくらい。と言った所か」


 ふーむ。やはり現実だとそういう事もあり得るのか……ゲームだったら、固有スキルを違う職で使うなんて不可能だしな。


「込み入った事情があるなら深くは聞かないさ」


 気にならないと言えば嘘になるが……

 もしかしたら、俺も他の固有スキルを使える可能性もある訳だしな。

 とは言え、現状で困っている訳じゃないし、言いたくない事を無理に聞くつもりはない。


「……すまない」

「良いって。それより、少し休むか?」

「そうだな……少しだけ休ませてくれると助かる」


 やはり体力の消耗が激しいらしい。ここまでずっと休まずに来たのも理由の一つだろう。


「問題ないさ。それじゃあ、少し休憩しよう」


 洞窟の壁際に腰かけられる様な部分があった為、それを利用して腰を下ろす。

 一応周囲への警戒は怠らないにしつつ、今までと比べれば十分に強い敵との戦闘をした疲労を癒やすべく、俺達はしばしの休息を取った……

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