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第二十二話 二人きりのパーティ結成

今回かなり短いです。次回は少しは長くなる予定……

 13階も変わらずに森だった。苦手意識がある身としては勘弁してくれと言いたいところだが、言ったところでどうしようもない。まあ、おそらく15階か16階からは森じゃなくなるんだろう。

 動かない事には先には進めない。とりあえず東側にでも進んでみようと方向を決めて、一応木々に印をつけながら森の中を進む。


「ん?」


 歩いていると、微かに人の声が聞こえた気がした。

 足を止めて耳を澄ますと、やはり声が聞こえる。その内容までは分からないが、と言うよりこれは言葉ではなく叫び声か?

 おそらく、誰かがモンスターと戦っているんだろう。だとしたら、そこには近付かない方が良いかもしれない。そう考えはしたものの、何となく気になる。

 声が聞こえてきたのは俺の進む先だ。様子見がてら、もう少し近付いてみても良いだろう。そう頭を切り替えて、俺は再び歩き始めた。

 近付くにつれて声は大きくなっていく。と言うより、直ぐにその内容が判別出来る様になった。


「ハァァッ!」


 それは気合の入った声だった。更に近付くと、その姿も確認出来た。

 叫びながら剣を振るい、数匹のウッドモンキーと戦っているのはライムだった。劣勢と言う訳ではなく、むしろウッドモンキーの攻撃を的確に捌き、一匹ずつ確実にダメージを与えていっている。その剣の腕は、素人目に見てもかなりのものだと理解出来た。

 邪魔するのも何だし、ここで戦闘が終わるのを待つとしよう。もしも危険そうなら助けるべきだろうけど、特にその必要も感じない。それだけ、安定した戦い方をしている。

 最初に何匹いたのかは分からないが、現在ライムを囲う様に散開してるウッドモンキーは5匹。そのうち完全に死角にいるであろう個体は2匹だ。その背後にいる2匹と、ライムの正面にいる個体が同時に攻撃をしかけた。

 ライムはその全てを屈む事でかわし、正面にいた個体に向かって駆け出した。と同時に伸ばした腕を剣で斬り付けている。浅く、腕に傷を入れながらの疾駆。そして本体の間合いに入ったところで一閃。首元を裂かれたその個体は、直ぐに絶命し消えていく。だがその隙を突く様に、残った2匹が同時に攻撃をしかけていた。しかしライムはその挟撃も容易くかわし、右側にいた個体の腕を切断する。今度は態勢的にも駆け出す事は出来なかった様だが、1匹は得意の攻撃方法を封じられ、それ以上にそのダメージでのたうちまわっている。

 他のウッドモンキー達が再度攻撃態勢に入るよりも早くライムが態勢を整え、腕を斬ってない方の近い個体に向かって駆け出した。ウッドモンキーは迎撃しようとするが、機敏なウッドモンキーでさえも間に合わない。ライムの動きはそれだけ素早いものだった。

 ライムはスキルを使ったのか、普通では考えられない動きでウッドモンキーの両腕を斬り落とし、尚且つ胴体を上下に両断する。

 これで残りは3匹。しかも1匹は手負いだ。もうライムがやられる事はないだろう。

 それから大して時間をかける事もなく、ライムは思った通り危なげなく残りのウッドモンキーを全て倒しきった。


「流石だな。ライム」


 剣を鞘にしまうライムに、俺は手を叩きながら近付いた。


「やはりクロウだったか」


 どうやらライムは俺の存在に気が付いていたらしい。まあ、特別気配を消してたとかそういう訳でもないし、ライムくらいの実力があれば当然かもしれない。とは言え、いるのが俺だって判断していたのは驚きだ。


「どうして俺だって分かったんだ?」

「クロウの気配は独特だからな。何となくと言えなくもないが……」

「ふーん。自分じゃそういうのは良く分からないけど……ライムがそう感じたならそうなのかもな」

「それで、クロウは今日も道に迷っているのか?」

「迷ってないとは言えないけど……今日は上を目指して攻略中だよ」


 ライムがからかい半分に尋ねてきた言葉に、俺は苦笑を浮かべながらそう答えた。


「ライムもそうだろ? にしても、俺も結構早くから出たつもりだったけど、ライムは更に早かったみたいだな」

「日が昇るよりも前には宿を出たからな」


 森を進むのに俺よりも時間をかけなくて良いライムがこの階にいるって事は、日の出は俺が起きる少し前くらいだったのかもしれない。

 もしくは、もう帰るところとか? いや、そんな訳はないか。


「ライムさえ良ければ、ここらか一緒に行かないか?」


 森に苦手意識のある俺としては、ライムがパーティに加わってくれると物凄く助かる。


「クロウと一緒にか……」


 俺の提案に、ライムは腕を組んで考え込む。今までライムが誰かとパーティを組んでる姿を見た事はないし、もしかしたら何らかの理由で前の俺と同じ様にソロでの攻略を目指しているのかもしれない。まあ、前回降りる時には一緒だったしたまたまなのかもしれないが。


「どうだ?」

「……分かった。クロウが実際どの程度の強さなのか知りたいし、今回はその提案を受けよう」


 どの程度、ね。他意はないんだろうけど、まだライムは俺の事を下に見てるのかもしれない。俺自身自分が強そうには見えないから、それも仕方ないんだろうけど。


「助かるよ。よろしくな」

「こちらこそよろしく」


 ライムは真面目な表情で、俺は笑顔を浮かべ、俺達はそんな言葉を交わして握手をした。

 ライムと一緒なら、ある程度は楽に昇っていけそうだな。俺はその時、そんな風に考えていた……

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