第十八話 パーフェクト・インヴィジブル
執筆途中に間違えてページ閉じてしまった…
短い&中途半端な所で申し訳ないですが、とりあえず更新しておきます。
場合によっては、後で次回とくっつけるかもしれません。
肝心なワルツ連合の拠点を聞くのを忘れた俺は、塔に戻ってホーンに聞くのが恥ずかしくて一度ラック商会に寄った。
残念ながらラックはいなかったが、俺の事を聞いていると言う男性社員がいたのでそいつからワルツ連合の拠点を聞く事が出来た。
運が良い事に、ラック商会と同じ通りにあると言う。俺は男に礼を言ってラック商会を後にし、教わった通り(と言うか通りを真っ直ぐに進んだだけだが)にワルツ連合の拠点まで足を運んだ。正確に言えば目の前にいる訳じゃなく、建物を視界に納められる位置にまでだが。
ワルツ連合の拠点は、ラック商会同様にレンガ造りの建物だ。但し、その規模は全然違う。3階建てなのは同じだが、広さが燕尾荘と同じくらいはありそうだ。農村街とは土地代が違うこの場所でこの規模の建物となると、買ったにせよ借家にしてもかなりの額のはずだ。
それだけ財力を誇示したいってところか……
「しかしまあ、ますます黒いよなぁ」
ワルツ連合が荒稼ぎし始めたのは最近のはずで、そこまでの財源があるとは思えない。商品を安くしている以上、利益だって減ってるはずだからだ。それでも財源に余裕があるのだとすれば、黒い噂の信憑性だって増して来るってもんだ。
「とは言え、どうしたものか……」
それでも噂は噂であり、証拠はない。今敵の本拠地に乗り込んでも何も解決はしない。いや、だからこそ証拠を掴む為に潜入すると言う考えもあるが……
「そうだな。こんな所で悩んでたって仕方ない!」
そもそも、俺は外観を見る為にここまで来た訳じゃない。証拠の一つや二つ、しっかりと探ってやろうじゃないか!
少しでも早く解決して、ミルクちゃんを安心させてやりたいしな!
気合を入れて、潜入方法を考える。
いや待て。まずは中がどうなってるのかを把握するべきだろう。
「オートマッピング」
普通の建物に効果があるかは分からないが、試してみる価値はある。そう思い発動したスキルはオートマッピング。一時的にだがダンジョン内の一度通った道を記録するスキルと、周囲の罠や障害物を探るスキルを合わせたスキルだ。どちらの効果も受け継いでいるが、天地創造によって創られたこのスキルならではの付随効果として、まだ探索を始めていない場合はその全体像を把握する事が出来るのだ。通路や配置物はこの段階では分からないが、部屋数やその位置等は前もって把握出来る。
塔の様なダンジョン内でなくても、きちんと効果は現れた。とりあえず収穫としては、地下があるってのが分かった点だろう。
次は潜入経路かな。正面以外にも入口があるかもしれないし、周囲を探って見ても良いが……
「そんな必要ないよな」
そう呟いて苦笑する。斥候系のスキルには姿を隠すスキルもあるし、他にも色々便利なスキルがある。何よりも、ソロで塔を登るには敵に見つからない様に進むスキルは必要不可欠だった。つまり、俺の得意分野だ。
「パーフェクト・インヴィジブル」
姿隠し、音隠し、匂い隠しは勿論、透過スキルさえも混ぜた俺の傑作スキル。透過スキルとは、攻撃が出来なくなる代わりに相手の攻撃も受けなくなるスキルであり、最高クラスになれば壁・床・天井抜け以外は何でもござれなスキルである。モンスターとの接触自体がなくなり、扉であればすり抜け可能。効果時間は30分。この効果でこの時間はかなりの高性能だ。但し、24時間に一度しか使用出来ない上、同時にその日は透過スキルが使えなくなる。まあ、姿隠し系とかは使えるから、それくらいのデメリットは当然だろう。一応言っておくと、姿隠しと透過スキルは別々のスキルとして同時に発動する事は出来ない。類似スキルもない。つまり、これに関してはクリエイターの専用スキルと言っても過言ではない。
それはともかく。パーフェクト・インヴィジブルを発動した俺は、直ぐにワルツ連合の入口を透過する。ロビーの様な空間があり、正面には受付と受付嬢らしき女性が一人いる。そして先に進む通路には用心棒らしき男が立っている。
ふふん。俺には関係ないけどな。
何となく優越感に浸りながらわざと男の身体を透過して先に進む、一応言っておくと、こっちにも感覚はない。少しでも触れる様な感覚があるならこんなアホな事はしない。
一部屋ずつ覗いて行く時間はない気もするが、一応見るだけは見て行こうと思い、通路にある扉は全て確認して行く。しかし当然、証拠になる様な物はない。しっかり探せばあるのかもしれないが、こんな手前の部屋に大事な物はないだろう。
なんて考えながら進んで行くと、直ぐに端に辿り着いた。そこには壁沿いに階段がある。但し、上に向かうものだけが。
地下室が怪しいとか、普通にも程があるだろう。とは言え、隠されてるとなればそれは探る価値はあるだろう。それに今なら、隠し扉の類には有利だからな。
ぶつかっても音がしないのを良い事に、俺は手当たり次第に壁や床を叩いたりしながら周囲を探る。
パーフェクト・インヴィジブルは、扉ならば透過出来る。それが隠し扉であったとしてもだ。この性能を活用しない手はない。なんて意気込んだものの、実に単純に登る階段の脇に隠し扉があった。
さてさて。それじゃあ拝見させて貰うとしましょうかね。
ワルツ連合の、隠しておきたい部分を。
隠し扉を透過し、俺は地下室への階段を下り始めた。