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第6章

宇宙船「ハヌシュ」の薄暗い船内。ヤクブは依然として困惑の中にいた。先ほどの謎の声は何だったのか。混信だと管制室は言うが、どうにも腑に落ちない。


「韓国じゃなかった」

管制室からの報告に、ヤクブは眉をひそめた。ますます状況は不可解になるばかりだ。

「調べます」

その言葉は、彼の不安を解消するには至らなかった。


その間にも、地球からのメッセージは届く。

「奥様の件ですが、ご実家に行かれるそうです」

レンカが実家に帰ったという知らせ。それは、離婚の現実を突きつけるかのような、冷徹な事実だった。ヤクブの心臓が、再び重く軋む。


彼は船内をゆっくりと見回した。彼の唯一の居場所。だが、この空間も、今や彼の心を落ち着かせる場所ではなかった。壁一面に広がる計器、無数のコード。すべてが彼を嘲笑っているかのようだ。


彼は船内の内部のすべての部屋を開けてみた。普段は気に留めることもない、貯蔵庫や予備の区画まで。何もない、当たり前の光景が続く。しかし、ヤクブの視線は、ある一点に吸い寄せられた。


薄暗い一角に、何か黒い影が蠢いている。ヤクブは息を呑んだ。

その影は、ゆっくりと、しかし確実に姿を現した。


それは、巨大な蜘蛛のような姿をしていた。

漆黒の体躯には、無数の節足が不気味にうごめき、複数の目が暗闇で不気味に光る。それは、ヤクブが想像しうる、あらゆる悪夢を具現化したような姿だった。


「ウソだろ」

ヤクブの口から、掠れた声が漏れた。信じられない、信じたくない現実が、彼の目の前に突きつけられた。

これは幻覚なのか? 睡眠不足と精神的疲労がもたらした妄想なのか? あるいは、チョプラ雲がもたらした、未知の生命体なのか?


彼は恐怖と混乱の中で、後ずさりした。広大な宇宙空間でたった一人、精神の均衡を失いつつある中で、この未知の存在は、ヤクブの最後の理性を破壊しようとしているかのようだった。彼の心は、宇宙の深淵へと、ゆっくりと沈んでいく。



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