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第11章

宇宙服を脱いだヤクブは、ハヌシュ号の船内で、奇妙な対話を続けていた。目の前に漂う、漆黒の蜘蛛のような生命体。彼の心はまだ混乱していたが、その言葉には、どこか引き込まれるものがあった。


「でもなぜこの船に?」ヤクブは、尋ねた。彼の声は、まだかすかな戸惑いを帯びていた。


怪物は、ヤクブの問いに答えるかのように、その複数の目で彼を見つめた。

「人間に興味ができた」

その言葉は、宇宙の深淵から響くような、静かで荘厳な響きを持っていた。

「そんな時にこの船を見つけた」


ヤクブは、船内の照明に照らされた怪物の姿を見上げた。彼の目には、その異形の姿が、徐々に奇妙な魅力を帯びて映り始めていた。

「お前の孤独に興味が湧いたのだ」

怪物は続けた。その言葉は、ヤクブの心の奥底に深く響いた。確かに、彼はこの孤独な宇宙で、誰よりも孤独を感じていた。


「お前に引きつけられた」

怪物の声は、ヤクブの心の傷に、そっと触れるかのようだった。孤独な魂が、宇宙の広がりの中で、互いに引き寄せられたとでもいうのか。


しかし、どれだけ言葉を交わしても、その姿に慣れることはなかった。黒い節足がうねり、複数の目が闇の中で光る。それは、やはり地球上のどんな生物とも異なる、異質で、恐ろしい姿だった。ヤクブは宙に浮きながら、怪物の姿をまじまじと見つめる。


「人間?」ヤクブは、自らの存在を問いかけるように呟いた。

怪物は彼の問いに直接答えるのではなく、彼自身の内面を映し出すかのような問いを投げかけた。

「痩せた人間?」

その言葉に、ヤクブは反射的に自らの体を見下ろした。長期の宇宙生活と精神的なストレスが、彼の体を蝕んでいたのは事実だった。


「そっとしておこう」

怪物は、ヤクブの心を見透かすかのように、静かにそう告げた。それは、まるで彼に休息を促す言葉のようでもあり、あるいは、彼自身の孤独を認める言葉のようでもあった。


ヤクブは、船内のベッドに横たわった。怪物は、彼の傍らで静かに漂っている。もはや、彼の目の前にいるのは、恐ろしい怪物ではなかった。それは、彼の孤独に寄り添い、彼自身の存在を問いかける、不思議な対話者だった。宇宙の深淵で、人間と異星生命体の、奇妙で深遠な友情が芽生え始めていた。



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