007 2度目の旅へ
鍛冶場をよく調べると、普通の鉄以外の材料もある。
鉄と少し違う物(混ぜ物か?)、かなり違う物も何種かあるがこれも剣用か?
買って来た剣をよく見ると確かに鉄以外の部分もあるがそれほどでは無い。
ここにあるのは勇者用の特別な材料なのか?
司祭が用意したはずだが聞けばいいのかな?
それとも鍛冶に詳しいルアンの方か、鍛冶士の自分が聞くのは気が引けるが・・・
・・・・・・・・・・
「私もですね~ めったに見られないんですけどこれ高い物だそうですよ~」
ルアンに来てもらったが、彼女もよく知らないそうだ。
「これがオリハルコンとか、これがミスリルとか? それでこれはもっと良い物とか?」
「なるほど、こちらの剣の素材か、そうかそうか強度や耐魔力を上げるのだな」
などと言っとくが内心は冷や汗ものだ。
どうやって使えばいいのかわからん ! 自分に出来るのか?
「それでですね、こちらのは炭と一緒に使う燃料で温度を上げるのが2種類、量を増やしても上がりますからこれでオリハルなどを溶かせます~」
質問などされないので助かった。
参考文献も有るようなので何とかそれで調べるしかないか。
それでもわからないことはアンジーに聞くか?
天使ならそれなりに詳しい・・よな?
神に聞いてもらうか? 最後の手段だが恥を忍んで。
悩んでいるとアリシアがやってきた。
小さなお盆に皿を乗せている。
「砂糖ができましたよ、味見しますか?」
「する~~~っ」
ルアンが喜んで寄っていく。
取りあえず剣のことは忘れて黒砂糖を味わうか? 無事にできてるかな。
「甘ーい、おいしい~~」
「どれ、うん、なかなか良いな、今度もっと採ってこよう」
「これでお菓子を作ってみますね、それと薬草を甘く煮て魔力アップを」
そうだ、元々それが目的だった。
今日の所は鍛冶の道具を一通り確認して、炭の燃え具合も見るか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして寝る時間となった。
これからは勇者としてのお試しだ。
---------------------------------
目が覚めた。
じゃないか、今自分の体は寝ているはずだな。
夢の世界にいるようだな、まあいいか、さて今日はどこへ行くか?
ああそうだ、アンジーに聞きたいことがあったんだが、いるかな。
『呼びましたか?』
あ、いたか、相変わらずいい声だな・・さすがは天使様だ。
「剣の素材の事で聞きたいんだが、ミスリルだのオリハ・ルコン?だとか、どんなふうに使うかわかるかな?」
『強化材ですね、人が考えた技ですが古代からの文献がありますから、わかりますよ、読むのであればお貸ししますが』
「お、そんなのがあるのか、それなら借りたいからお願いする」
資料があるなら何とかなるだろう、明日からそれを読んで試すとしよう。
助かった 神の物なら頼りになるだろう。
では勇者としての活動開始だ。
そう思ったとたん、周りが明るくなってずいぶん立派な部屋にいるのが分かった。
教会で与えられた部屋も十分良いが、ここはその比ではない。
床も壁も磨き抜かれた石で鏡のように平らで輝いていて、明るく広い。
まるで物語に出てくる王宮のようで、そこに寝台やテーブル、絨毯がある。
「ここは神の住まいなのかな?」
『いいえ、神様が用意しました客間ですから、どうぞおくつろぎにご利用ください』
自分にはもったいないほどだな、勇者として歩き回るならさほど使わないのでは?
しかしありがたく受けておこう。
それより今日はどこへ行こうか。
「この国の周辺地図はあるかな? 外国も含めた広域の物は」
『はい、そうおっしゃると思って用意しておきましたよ』
と、目の前に地図の巻物が現れ、ころころとひとりでに転がり開く。
中央に5角形に近い国があり、取り巻く10以上の国がある。
「真ん中が私のいる国かな? 昨日行ったのはどこだろう・・・ それに昔滅びた、サトウキビを特産としていた国とはどの辺かわかるかな?」
『ではご説明の為、そちらに行きますね』
その声とともに細く麗しく、輝くような女性が目の前に現れて驚いた。
「おお、アンジーか? 天使とは人間に見えないのかと思っていたが」
『これは仮の姿ですので本当は見えません、神もですが』
やはりそうなのか、しかし仮の姿でも十分神々しく後光を感じるようだ。
『ここが今いる国で滅びた国とはこのあたりですね、昨日行ったのは反対側の・・』
指さしながら教えてくれるが、しぐさが優雅で見とれてしまう。
「それでは今日は、滅びた国のあたりに案内をしてもらえるかな」
見とれていたのをごまかすように言うとすぐに支度をし、最後に兜をかぶる。
ドアを開けると、洞窟のようなあの影の道が伸びている。
少し歩いただけで以前のように他の国へと着いた。
とうぜんだがそこも夜だ。
少し離れた所に街の明かりが少し見える。
だがやはり思った通り、そこは貧しそうな様子で大きい街のようだが活気はなく家々は全体に粗末な造りの物だった。
滅びたのは昔とはいえ、まだ影響が残っているようだ。