051 店の謎
ずぶ濡れになっているシーズを馬に乗せて落ちないよう鞍に縛り付けて兵舎に運んだが、途中町人達の目を引いて困ったので速足で駆け抜けて行った。
「はあ全く恥さらしだぜ、辺境部隊の名が地に落ちてしまう」
「全くだ、俺達はいくら飲んでも平気と思われてないとな、酒に飲まれるとは情けねえ、ぐでぐでじゃねえか子供かよ!」
確かに酔っているならそうだとしても、これは・・・・・ どうだろうな。
それに他の兵士の事も気になるが。
「他にも酔ったのがいるんだよな、ムザック達か、あいつらはどうなった?」
「何人かで探しに行ったがまだ戻ってないな」
「何やってんだか、あいつら減給だ、減給! 誰かさっさと連れ戻しやがれ」
隊長が呆れて頭を掻きながら叫ぶが、彼さえ不審に思っていないのだろうか、他の兵士はともかく隊長までも? もう少し考える人だと思ったが。
と、その時表に蹄の音が響いた。
何やら慌てているような様子の足音がする。
「おい!、ムザックの奴が事故で怪我したってよ」
ドアを開けるなりそう叫んで飛び込んできたのがいた。
「事故?!」
「どんな事故だ、ひどいケガか」
「馬車とぶつかったとかでよ、重傷だそうでな治癒師の所に運んだってさ、何でもすごい勢いで飛び出して避けられなかったそうで、御者は軽傷らしいがな」
一体いあいつらはどうしてしまったのか、まったく訳が分からない、自分と兵舎に戻ってから何があったというのだろう。
「隊長、どうする」
「しょうがないな、責任者として俺が行かなきゃならねえ。 治療院に案内しろ、後の事は任せるぞ」
「「おう」」
隊長はすぐに兵舎を出て馬で治療院へと向かい、自分達は残されることになった。
皆どうしたらよいのか戸惑い気味で顔を見合わせている。
「他の奴はどうなったんだ」
「ロンド達はわからねえ、飛び出したっきりだな」
「おい新米! お前はどうなんだ」
「ん?」
自分? 自分はなんともないが。
「おかしくなったのはお前と一緒に行った奴等だろ、おまえは大丈夫なのか」
「ああ、別に問題ないが・・」
そう言われるとそうだが、自分に異常はない・な。
自分にはない・・・・・・・ なぜだ?
何が違うのか、自分は彼らと一緒に出掛けて・・・ そして・・・・
「ゲイリーは? ゲイリーはどこだ」
「あいつも飛び出していったきりだ、戻ってねえぞ」
「ゲイリーもなのか」
「最初のチームで残っているのはお前だけだぞ」
自分だけ、他は皆おかしくなってしまったのか。
「おい、お前が何かしたんじゃないだろうな」
「え?!」
皆が一斉に自分を見る、これは疑いの目か? 自分に?
「ちょっと待て、こいつが何かしたんなら一人残って突っ立ってるか? それじゃ怪しさ満点じゃねえか、犯人ですって言ってるようだぞ」
「そりゃそうだけどよ」
疑われているんだか、バカなのかと言われてるようではあるが疑いは晴れたようでもある、複雑な心境なんだが仕方ない。
「新米、心当たりは何かないのか」
「心当たりといえば、あの店の事か・・ 皆が店に入り自分とゲイリーは外で待機して用心棒をシーズ達が仕留めて出てきてだな」
そうだ、最初店の外にいた店員と女達は生け捕りで、用心棒は死んだ。
そしてシーズ達がおかしくなった。
「あの店にもう一度行ってみるか、構わないか」
「店? お前達が入ったところか」
「ああ、あそこに問題があったんではと思う」
「隊長が留守だからな、勝手に動いていいのか・・・・」
この場はどうすべきか・・だな。
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