043 前哨戦
剣の模型はすぐにできたし、自分用の槍とクサリガマも完成となり一段落だ。
ルアンは物足りなそうだが後でまた忙しくなるのだから、その時に張り切ってくれたらと今はこれで切り上げておいて鍛冶場をかたずけた。
「よーし、後はこれを試すぞ、ありがとうなルアン」
「私見てていいですかぁ」
「いいけど退屈じゃないか、単調だと思うぞ」
「そっちの小さなのが気になります~」
あ~、これは珍しいか? 剣士としては邪道かとおもう物だしな、見せない方が良いかと思ったんだが、まあいいか。
「では裏庭へ行くか、それとも少し離れるか」
「投げる物ならもっと広い場所がいいですよ~、近くの林とか」
「そうだな、そうするか」
二人で剣など荷物を持って教会を出ようとするとアリシアに出会った。
「あら、お出かけですか?」
彼女は庭の手入れか、大きな帽子をかぶりエプロン姿でハサミや袋を持って他のシスターと作業中のようだ。
「ああ、武器を試しに林まで、歩いて10分ほどの所だから」
「でも、たまに狼が出ますから、気を付けてください・・ 数年前にケガ人が出てますよ」
「そうか、わかった」
オオカミとは、こちらではまだそんなのがいるのか? その程度なら達人でなくとも何とかなるとは思うが、槍も有るし、狼相手に試したい気もする。
「なんだか嬉しそうです~、狼に出て欲しいんじゃないですか」
教会から出て少し歩くとルアンがにやけながら言った。
「え、そんなことは無いぞ危険だし、ルアンだっているし巻き込んでは悪いよ、な」
「嘘だ~ 絶対試したがってるぅ」
「こらこら人聞きの悪い、むやみに殺生してはいかんだろ・教会関係者だし」
ここでルアンが声を小さくして寄って来た。
「でもお、狼なら人や家畜を襲うので討伐許可が出ますよ」
「え、ホントに?」
「はい、事後承諾もありますのでまず問題なしですぅ」
「そう か・・・・・ う~む」
ちらりとルアンの顔を見るとそれ以上は言わず、ニヤニヤとしている。
こちらも黙って先を急ぐ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結果として・・ 狼は出た。
それも3匹。
二人で剣の模型を試し問題なしとなり、次に鎖鎌を使って木に向かい引っ掛けたり投げつけたりをしていたところでルアンが狼の接近に気付き、二人で仕留めることになった。
ルアンは田舎で男達と共に斧を武器に狼討伐の経験があるそうで、一匹なら一人でやれるというので残り2匹を私がやることにした。
自分でも槍と、この武器があれば問題ない、少しは武道の心得はあるのだ。
「ぬかるなよ、ルアン!」
「了・解!!」
そして5分ほど後には狼3体の肉が手に入った。
解体はルアンが、すぐにやってのけて教会には肉だけを持ち帰ることにした。
夕食の材料ができたし、死体を持ち込まずに済むのでよい。
残りは埋めておいた。
・・・・・
「あらあら、神のご加護ですね・・」
帰るとアリシアが驚いてお土産を見つめ、夕食は肉の多めなシチューとなり、シスター一同と司祭が喜んで食べている。
こちらでは聖職者が肉を食べることに抵抗がないのが不思議な感じがするが、それはお国柄次第なのだろうと納得することにした。
「それにしても、剣の模型を造られたとか、いつも鍛冶の前にそうするのですか?」
アリシアが食事をしながら聞く、尤もな疑問である。
「いつもはしませんが貴族のお客様なので見た目や重心など注文があるではと考え、払いが良いだけに慎重にしようとですね」
「なるほど、模型なら変更が速いですよね」
「何度か直すことになると思いますから」
そして、実際そうなるのだがそれは後の話だ。
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