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異界の刀鍛冶 ~1日5分の最強勇者!!~  作者: 前田  裕也


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032  妙な敵

弓兵達の最後の一人を斬って一息ついた。


「まだ終わってないぞ、息を抜くな」


隊長から釘を刺された。

確かにここは敵地で、後ろから刺されようが文句の言えない場所だ。


「そうだな、わかった」

「試験だから口出しはまずいんだが、お前は見込み有るからつい言っちまうな・・・死なれるには惜しいからな」


苦笑して、眉間に皺が寄っている。

この人は厳しいようで甘い面があるのか? 

それはともかく隊長さんの忠告を受け入れ気を引き締めるとしよう。  


開いた壁の向こうには戸が有り、その向こうには何が出るか。

そう思い戸を開けようとすると、それがひとりでにゆっくりと開いた。

剣を構え身構える、が、誰も来ない?

戸口から中を伺うが、暗くてよく見えず静かで気配が無いと感じた。


皆逃げたのか? しかし外には見張りがいるはずで・・  ?

慎重に一歩踏み出そうとしたとき、その状況が一変した。


いきなり気配が現れ上から剣が振り出され咄嗟にかわすと顔を紙一重で通り過ぎ風切り音が耳に響く。


「な・・・」


今のは一体どこから? まるで天井から出たように・・ 姿が見えない。

しかし集中すると気配が僅かだが天井にある。

更に慎重に上を見るとようやく姿が少し見えた。


何と天井に張り付いているのが一人。

ぶら下がっているのか? 姿勢が妙で、どうやっているのか不思議だ。

全身が黒く顔までが黒く見える為、暗くて気付かなかったのだろうがあれは鉄線で固定しているのか?。


それに剣が長く感じたが長刀か? それにしては剣筋が違ったような気がする。

しかし睨み合っていてもらちが明かない。

意を決して部屋に転がり飛び込んだ。


するとまた刃が振られ服をわずかに斬られる。  

今も明らかに剣が長く感じたが、いったいどんな武器なのか身を低くしているのに天井から届くなど普通ではあり得ない。


もう少し明るければ見えるのだかここには明かりが何もない。

しかしそのとき隣の部屋から光が差し込んだ。

隊長が気を利かせてくれたか、おかげで先ほどより見える。


天井に鉄線が張りめぐされそれで体を留めていて、なぎなたのような武器で折れ曲がる仕組みなのか。

それが見えた瞬間また刃が繰り出され、危うくこちらの剣で弾く。

よく見えたのは向こうも同じのようだ。

しかしカラクリがわかれば先ほどとは違う。  


今度はこちらの番と立ち上がろうとすると、足元に何かあるのに気付いた。

よく見ると床に細い線が張ってある。


「なに?」


足を少し動かすとそれに引っかかりつまずきそうになる。

床にもカラクリが有るのか、こちらの動きを阻害するためなのか乱雑な張り方をして有り明かりが無ければすぐに転びそうだ。


剣で切ろうとするとまた攻撃が来る。

下に気を取られると上が危ないとはせわしない事だ、まったくなんて場所だ。

上の刃を弾きながら床の線を少しずつ切る。

すると敵が移動しながらの攻撃を始めた。   


あれで移動までできるとは・・・ 忍者か?! 何て奴だ。

しかも剣がさらに伸びて振るう範囲が広がった。

こちらは床を転がりながら受けるがそれでは防戦一方だ、どうするか。


そう思っていたら敵の刃が床の線を斬った。

転げまわっていたので手元が狂ったらしいが、これは僥倖だ。

更に身を低くして敵に武器を伸ばさせるとしようと転がる頻度を増やす。

こちらが劣勢と思ったのか、向こうは構わず刃を振るのでどんどん線が切れていく。


気付いていない!

自分の勝利を確信するかのように次第に大振りで単調になっていく攻撃で、こちらは転げまわりながらも足元が開放されていくのを確かめられる。  


そして転がりながらも自分で線を斬る、気付かれないようさりげなくだ。

おまけに息を乱して疲労しているかのように思わせる。


みじめな戦いのように見せながら、ついに反撃の機会が訪れた。

足元は充分確保され、敵は油断しきっている。


転がった姿勢から瞬時に立ち上がり、敵の伸びた武器を掴み引っ張る。

力が強いのか体に留めてあるのか、取り上げることはできないが敵の動きが止まった。

勝機とばかりに武器を掴んだまま飛び上がり剣を突き出し胴を狙うと、刺さる。

やはり反撃されるとは思わなかったらしい。


「ぐっ」  


防具を付けているのか手ごたえが堅いが、それを貫く技がこちらにはある。

破砕突!

足が浮いているとはいえ瞬間なら可能。

全身の気を集め剣に込めると防具を貫き体に達する、ずぶりと手ごたえが有った。


剣を抜くと血が噴き出す。

次は武器を斬る、さんざんてこずらされた妙ななぎなたを2か所斬って落とすと敵は茫然と見つめている。

自分が負けたのが信じられないと言った風だ。


「負けたんだよ、お前が」


そう言って今度はそいつの首を撥ねた。  




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