003 剣豪の初体験
更新が遅くなってすみません。
色々疲れることがありまして・・・・・・・。
そこは大きな街で道は広く明かりがともされ、夜なのに十分明るい。
通りには出店もあり、行きかう人で賑わっていて、鎧姿の自分は目立つのか見つめられているようだ。
しかし兜で顔を隠してあるので正体がバレる心配はない。
達人としての力を試すには何が良いだろうか?
質の悪い酔っ払いを叩きのめすか? その程度では弱いか。
では奴隷商人? 盗賊達? 悪徳商人か? 汚職役人か?
ククククク・・ 笑みがこぼれてくる。
実に楽しみだ、真っ二つにしてやろうか? それとも細切れか?
笑っていたらますます注目されているようだ。
しかし見ているだけで誰も寄ってこない・・いっそ絡んでくるといいのに。
酒場にでも行ってみるか?
よそ者に絡んでくるのは定番だな? この際小物でも構わない。
では酒場は・・・どこだ? 日本なら赤提灯だがここは違うようだ。
近くの人に聞こうと思うと離れて行く。
声を掛けようとすると逃げていく、 怯えられているのか?
私は悪人ではないのだが・・・・・・。
捕まえて無理に聞きだすのは気が引けるな、こちらが絡んでるようだし
見回して考えていると剣士らしき二人組が目に留まった。
二人とも兜は無いが甲冑を付けているし、良い剣を持っている。
彼らなら強そうだし、逃げないのではと思いゆっくりと近づいてゆく。
「そなたは旅の者か?」
声を掛けようと思ったら先に掛けられた。
「うむ、武者修行でな、強い者を探しておる所だ」
そう言っておこう、嘘ではないぞ、この二人は同心かな? ワルではなさそうだ。
『彼らは衛士です、この街を守る役目を担っています』
アンジーの声が聞こえた。
そうか、酒場も彼女に聞けばよかったか? 忘れていたな。
「武者? 兵士志望か、どうりでフル装備の甲冑など気合が入っているな」
「全くだ、それなら魔物狩りや闘技場へ行くのが良いのでは?」
「そんなのがあるのか? ここでタチの悪いのを相手にしようと思ったのだが」
彼らは渋い顔になった。
「その手の者を扱うのは我ら衛士の役目、むやみに暴れられるのは困るぞ」
「そうとも、俺達に任せろ」
彼らは仕事でやっているのでは、邪魔するわけにはいかんな。
「そなた等がてこずっている相手はいないか? 我が片付けてやるぞ」
「今の所おらんな、そんなのがもしいたら頼むか」
「そうだな、そんなのがいればだが」
二人とも顔はそう言っていない、早く消えろと言わんばかりで薄笑いだ。
しかし彼らを張り倒すわけにはいかんし、さてどうするか。
「仕方ない、街の外なら魔物とやらがいるのだな?」
外へ向かうのは道を戻ればいいのかな?
「ちょっと待て! 今から行く気か? やめておけ」
「夜に行くなど無茶だ、あんたが強そうなのはわかるが夜はかなり凶暴なのが出る」
凶暴! おお、それはいい。
「問題ない、少しだけだし、街の近くでならいざとなれば逃げこむでな」
神がくれた力だからそんな必要は無いだろうが、そう言っておこう。
構わず外へ向かうと、彼らはそれ以上言わなかった。
呆れているのだろうがそれはまあよい、力を試すのが目的だ。
さーて 魔物というのはどんなのがでるのだろうか? 鬼か、猫又か、九尾の狐か?
門を出るときに兵士から変な目で見られたような? 目立つからかと思ったが・・
来たときは門を通らなかったからか? 怪しまれているかな?
しかし引き止められはしなかった。 神の力のおかげかな?
街の外は暗い。
明かりが無いから当然だが、目が慣れるまで待って歩き出す。
月明かりがあるのでいくらかは見えてくる。
そういえば剣をよく見ていなかったなと、思い立った。
鞘から抜いてみると・・・・ おお! これは・・・・凄い!
月明かりで鈍く光る剣は吸い込まれるような深みの艶と凄みがある。
見事な出来だ!! 名刀ではないか! 自身の最高傑作より上と感じる。
これほどの物を打てるのがいるのか?! これでは自分の出番があるのかと思う。
『その剣が造られたのは200年程前の事、作者はもう居りません』
アンジーの声が聞こえた。
「そ、そうか、 それにしても見事な物だ、これを我が使ってよいのか?」
『それは奉納された剣で神の所有です、ゆえにどうぞお使いください』
「おおう、それは光栄なことだ・・しっかり堪能し、学ばせてもらおう」
いつまでも見ていたいがそれでは試せないので、慎重に鞘に納める。
肩に力が入ってしまって腕がこわばっていた。
準備体操をしてほぐしておこう、手足をよく伸ばし振っておく。
さて、魔物とやらはどこだ?
辺りに目をこらすが、木々以外何も見えんな。
勇者の力を使えば気配でわかるのだろうか? やってみるか?
『その必要は無いようですね、来ましたよ』
アンジーが教えてくれる。
少しして黒い影が近づいて来た、 目が光っている。
小さめの熊か? 大きめの猪だろうか?
藪の向こうから現れたのは・・・・ 何だあれは?!
見た事のない姿の生き物、不気味というかおぞましいというかなんと表現すれば?
『キメラですね、勇者の力を使えば問題ありません』
「あ、あれと戦えと? 何か気が進まないんだが?」
『倒さないと捕食されますよ? 一度狙った獲物は逃がしません、足が速いですし』
逃げようと思ったら釘を刺された。
仕方なく剣を抜いた。