021 貧しい国への再訪問
「ふう、疲れた」
儀式が終わってからの信者との挨拶や話の方が疲れる。
あの剣は司祭に渡すつもりだったのだが、信者たちの要望で教会に飾っておくことになった。
何しろ勇者の剣が打たれるのは数十年ぶりだそうで、記念にと言われてしまった。
司祭は初めからそのつもりだったようで自分だけが見るのはもったいないと言った。
試作品でそこまで言われるのは心苦しいが、ありがたいと思っておこう。
信者の祈りも付与に効果的だそうなのだ。
そのうち冒険者や剣士達も見に来るそうでそちらの相手も必要になるだろう。
大勢を相手にするのは苦手だが仕方がないか。
「お疲れ様でした」
シスター・アリシアが紅茶を持ってきてくれた。
「すまないね、そちらこそ疲れているだろう? ずっと祈って踊っていたし」
自分はほとんど見ていただけだ。
それで疲れたと思っているのは申し訳ない。
「私は慣れてますから、子供の時からずっとしていますので」
「私も頑張りました~~ おっ客さんに褒められました~~~」
ルアンが部屋に駆け込んできた。 相変わらず元気で短めの髪を揺らしている。
「こら、お行儀の悪い! 走るんじゃないの!」
「えへへ、は~~い」
「ルアンもお疲れ様、頑張ってくれたな」
「頑張りました~~ 褒めて褒めて~~~」
すり寄って来るので頭を撫でると、じゃれつくので子犬か猫のようだ。
フワフワの髪なのでなおさらそう感じる。
「もう、甘えるんじゃないの! お仕事でしょうが」
他の子達も協力してくれたのだからお礼を言っとかないとな、ろくに名前も覚えていない・・・ これは失礼だな、早く覚えないといかん。
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そして夜、勇者としての続きだ。
寝てからは勇者の時間、馬車には野菜などの作物、種を天使アンジーに用立ててもらったのがある。
天使様に揃えてもらえるとは思わなかったが非常に助かる。
「だって面白そうだからなるべく協力しますよ、任せてくださいな」
いたずらっ子のようだが天使様がそんなことを言っていいのだろうか。
神様に怒られないことを祈ろう。
アンジーと影の道を通ってあの貧しい国へと着いた。
「ところでこの国はなんといったかな」
「ここはヒンスアー公国です、これから向かう街はセントラ で」
この前よりは早い時刻だが、あいつは待っているだろうか?
自分が寝てから活動せねばならないのが少し不便だ・・・何とかならないか。
少しして領主の館に着いた。
館の前には見張りが二人いて、一人はすぐに門に入って連絡に行ったようだ。
もう一人はこちらの姿を見ると門を開けた。
当然自分は全身鎧で兜で顔を隠してある。
「やあ、夜遅くですまないな」
「ああ、旦那様がお待ちだ、 入れ」
馬車をゆっくり進めて門を抜ける間、見張りは機嫌悪そうに見つめている。
遅くまで残業させられているからか?
庭まで行くと領主がコートを羽織って出て来た。
家来たちが6人も付いているが、夜遅くまでご苦労な事だ。
「やあ、約束の作物を持って来たぞ、そちらも用意したか」
「おう、サトウキビを馬車一台分な、 こんな取引は聞いたこともない」
「この作物は今の食用ではなく、育てて増やす為だから間違うなよ、種もあるから畑に撒け、大事に育ててなるべく増やせ」
しかし領主も家来たちも訝し気な様子で見ている。
「だがな、この地は痩せていて作物が育ちにくいから、そういくかどうか」
「わかっている、これは特別製でな・・ やればわかるからまず信じろ! いいな」
まだ疑っているが荷を下ろさせて代わりにサトウキビを積ませる。
「言われた通りにすれば儲かるぞ、騙されたと思ってやってみろ」
「本当に騙されている気がするがな、まあいい、 わかった!」
苦々しい顔の領主を後にして馬車を動かす。
「それでは、しばらくしたらまた来るんでよろしくな」
まだ半信半疑の彼らを残し、門を抜けて遠ざかる。
実はあの作物は特別で、アンジーに頼んで荒れ地でも育つ強い物を選んでもらった。
しかも勇者の力で生命力を上げてあるので普通の数倍の収穫が見込めるはずだ。
これでとりあえずの用は済んだ。
「アンジー、ありがとうな。 当面はこれでいいだろう、あれが育てば成功だ」
「どういたしまして、 作物を育てる勇者なんて初めて見ました」
「貧しい国の問題はまず食料だからな、後は家と仕事かな・・・ 」
そちらをどうするかはまだ考えていないが・・さてどうすべきか。
「毒を盛られかけたあの店の者達はどうします? 会いに行きますか」
「毒を?・・・ああ、あいつらを家来にしたんだったか、では行くか」
彼らにはこの国の事を調べさせるんだったな、取りあえずは近場からだ。
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